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2017年01月05日

高橋優インタビュー 〜コンプレックスの塊だった若者がミュージシャンになれたワケ〜

高橋優 タウンワークマガジン

撮影:八木虎造


心に刺さる歌詞をギターで綴るシンガーソングライターの高橋優さん。CMやドラマで楽曲が使用されるなど多くの人に愛されるミュージシャンとして活躍していますが、これまでの人生、コンプレックスと共に生きてきたと言います。最近では自分の人生を包み隠さず書いた自伝『Mr.Complex Man』を上梓。そこで高橋さん本人にコンプレックスを抱えながらもミュージシャンとして成功した理由をうかがってみました。
 

「全人類自分以上」。コンプレックスは今でも尽きない

――『Mr.Complex Man』ってストレートなタイトルですよね。ミュージシャンとして活躍している今でもコンプレックスはあるんでしょうか?

もちろんありますよ。いくらステージで歌っていようがCDを出そうが、もっと大きなステージで歌っているシンガーがいますし、CDチャートが上位のミュージシャンがいる。どこまでいってもコンプレックスは尽きないです。僕の中では「全人類自分以上」みたいな考え方があるので。

――「全人類自分以上」とはスゴイ言葉ですね。そんなコンプレックスを抱えながらもミュージシャンになる夢を叶えられたのはなぜですか?

僕の場合、コンプレックスの種類が「なにくそ精神」なんですよ。高校生で歌い始めて、大学生で路上ライブを始めたんですけど、その間、学校の先生からは「歌より勉強しろ」と言われたし、路上ライブでは僕より客を集めているミュージシャンやその客に「お前の歌声、うるせーよ」という目で見られるし、警察から止められたこともあった。でも、そういう人たちのおかげで、歌い続けられている気がします。

「やめろ」と言う人たちがいればいるほど「なにくそ、今に見てろよ」精神が沸き起こるというか。

――それはすごくポジティブなマインドですよね。

ポジティブというか怖いんですよ。何かにしがみついていないと。僕はしがみつくものは歌だと思っていたから、それをとられそうになると必死で喰らいつく。だから、とられないためにあらゆる工夫をしました。「これをやってもまだ僕に歌うなと言いますか?」と言えるぐらい。

――高橋さんはどんな工夫をしたのですか?

路上ライブに出るからにはひとりでも多くの人に聞いてもらいたいし、「こいつの歌いいな」と認めてほしい。でも、ただ大声を張り上げて歌っていてもなかなか認めてもらえない。ならば、どうすれば足を止めてもらえるのか、「こいつスゲーな」と思ってもらえるのか、アプローチ方法を工夫して考えるんです。これが案外、一晩真剣に考えるだけで浮かんだりするんですけど、意外とみんなやらないんですよ。だから、少し工夫するだけで、足を止めてもらえるようになりました。

恋愛にたとえるなら「恋愛ってこういうものだよね」ということだけ考えて、目の前にいる好きな人を喜ばせる工夫ができていない、みたいな。大枠で「恋愛たるや」と考えるよりも、相手の性格を考えて工夫するほうが、うまくいくものなんですよ…って恋愛マスターみたいなこと言っていますけど、まったく違います(笑)。
 

「夢を叶える」より「目標がある」ほうがいい

高橋優 タウンワークマガジン
――やりたいことに工夫をしたから夢が叶えられたんですね!

自分の中では夢を叶えたとは思っていません。まだ工夫をしている途中という感じです。僕は「夢を叶える」よりも「目標がある」ほうがいいと思っていて。ちなみに僕の目標は常に一歩先に進むこと。以前の目標は「武道館に立つ」でしたけど、いざ立ったら周りから「武道館なんて結構立てるよ」と言われて、いつものなにくそ精神に火がついて「次はあそこに立ってやる」というのが目標になる。

「どこに立てば高橋優を認めてもらえますか」という思いが常にあって、認めてもらうための目標を日々更新しているんです。もし、この記事を読んでいる人の中で「夢は見つけるべきなのか」と悩んでいるのなら、僕は見つけなくていいと思う。見つけなくて今が幸せならそれでいいんですから。

ただ“歌が歌いたい”とか“絵を描きたい”とかやりたいことがあるけれど、周りを気にして言えなかったり、家族や友人に理解されなかったりとマイノリティの中で孤独を感じている人がいるなら、僕はその人の背中を全力で押してあげたい。
 

やりたいことを口に出すと笑うヤツ以上に応援してくれる人ができる

高橋優 タウンワークマガジン
――それは高橋さん自身がマイノリティの中で戦ってきたからでしょうか。

戦うなんてカッコいいものじゃないですけど、シンガーソングライターになりたいと言う僕を笑っていたヤツがいたのは事実。大学が北海道だったので、札幌で路上ライブを始めたんですけど、大学へはほとんど行かずに歌ばっかり歌っていたんです。当然、成績もガタ落ちで先生にも呆れられるし、周りからも「お前、何やってんだよ」という目で見られるし。大学3年生になって周りが当たり前のように就職活動をする中で、「オレは歌いたいから就活はやらない」と決めたときも「高橋、大丈夫?」という感じでしたしね。

大学卒業後は映画館でバイトをしていたんですけど、ここでも歌をやっているというと「路上ライブやってるの?何人ぐらい聞いてくれるの?2、3人しかいないの!うわー」みたいなことを言うヤツもいました。北海道で『夢チカ18』という札幌のミュージシャンをフィーチャーするローカル音楽番組があるんですけど「優くんは夢チカ18に出られると思ってんの?」とバカにしたように聞かれたり。

でも、笑うヤツがいれば応援してくれるヤツも必ずいるんです。バイトの休憩中にお金がなくてティッシュを食べていたら、バイト仲間が“優さんに恵んであげようボックス”を作ってくれて、そこにみんながお菓子を入れてくれたり(笑)。「ミュージシャンなの!すごいね!ライブ行くよ」と言ってくれる人もいたし。

笑われるにしても、応援されるにしても、自分がやりたいことを隠さずに言うことが大切だと僕は思うんです。誰にも言わず黙々とやるより、声に出して言うほうが目標に近づくのが早くなるから。

――やりたいことを主張することが大事なんですね。

絶対にそう。言うことでバカにされたり、なれるわけないと笑われたりと心無いことを言う人は必ずいる。でも、言わないと誰も助けてはくれないんです。例えば、土地勘がない人が渋谷から新宿まで歩いていきたいと思ったときに、誰にも聞かず歩いてもなかなか到着できないし、できてもすごく遠回りしちゃったりする。でも「新宿まで歩いていきたいです!」と主張したら「遠いよ、歩けるわけないよ」と言う人もいるけれど、「ここから行くと近道だよ」と教えてくれる人もいるわけで。そんな思いを『明日はきっといい日になる』という曲に書いたんですけど。

主張することは物理的にいいと思うんです。それで返ってきたネガティブな意見は耳を貸さずにできるだけポジティブなことを言ってくれる人の意見を参考にする。ただ、その意見の中でもすべて鵜呑みにするのではなく、自分にとって今、何が必要な意見かを吟味していくことが重要なんですけどね。

やっぱり、ひとりだけではやりたいことってできないものです。誰かと出会って意見をもらって、助けられながら形にしていけると思うので。僕自身も特別な才能に恵まれたわけではなくて、いろいろな人と出会いながら、周りの人が作ってくれたきっかけを自分なりに咀嚼してアウトプットした結果、音楽や歌になったと思っています。
 

中学時代、閉まりぎみだった心の扉を心優しい友人がノックしてくれた

高橋優 タウンワークマガジン
――高橋さんは小学生の頃にいじめられていて、その後もコミュニケーションをとることが得意ではないと著書に書いていましたけど、コミュニケーションが苦手でも出会いをつくることはできるのでしょうか。

コミュニケーションが下手でも、コミュニケーションをとろうとすることが大切なんですよ。僕の場合は小学校の頃にいじめられていて心の扉が閉まりぎみだったんですけど、中学時代に心優しい友人たちが扉をノックしてくれて、扉が開いた。コミュニケーションをとるのが苦手でも、少しのきっかけを逃さずに自分から動くことが良い出会いに繋がると思います。

――高橋さんが書いた歌詞の中に『閉ざされた心のドアは 内側からしか開けらんない』という言葉がありますよね。まさに、その通りだったんですね。

生きていると意外と周りがノックしてくれるんですよ。「部屋から出てきな」って。ただ、その部屋から本当に出られるかは自分次第。ノックを無視することは簡単なんです。「はいはいありがとう」「みんなそういうこというよね」と思って無視すれば自分は傷つかないから。でも、ドラマみたいに扉をぶち破ってまで入ってきてくれる人なんてほとんどいませんから、無視していれば、ずっとコミュニケーションはとれないままです。

だから、一歩だけでも自分のフィジカルを動かして行動すると、驚くほど好転して良い出会いが生まれたりするんですよ。

――やりたいことを形にするのも、コミュニケーションも行動あるのみなんですね。

僕、BRAHMANのTOSHI-LOWさんが言っている「行動だけが現実」という言葉が大好きで。心の中だけで思っていても現実にはならないんです。たとえば自分が死んだときに、「高橋優って歌いたいと思っていたらしいよ」と言われても「そうだったの!?」ってなるだけ。でも、やりたいことを行動にうつせば自分がいなくなった後に爪痕が残せる。「高橋優はよく歌う人だったね」って。

僕は歌が好きで、歌で何かを伝えたいと思ったときに、行動しなくてモヤモヤしているよりも、笑われたり呆れられたりしながらもやり続けたほうが自分の自己紹介になるし、生まれた意味がわかると思ったから行動したんです。
 

遊び倒せば、その先に才能が見えてくることがある

高橋優 タウンワークマガジン
――高橋さんが学生の頃は路上ライブをするなどの行動をしていましたけど、学生時代に動いておいたほうがいいことがあれば教えてください。

飲み会やゲームや恋愛以外の遊びをやってほしいですね。スポーツとか旅や映画は身になるような気がする。実際、僕は歌と同じぐらい映画が好きで観まくっていたから、今、ラジオで映画の話ができたりするし。

今、ハマっているものを徹底的に遊び倒していけば、意外とその延長線上に才能とかプロフェッショナルにつながる道がある気がします。ポイントは義務感じゃなくて「やってみたい!」という好奇心や遊びの気持ちで動くこと。僕、生まれ持った才能ってあまり信じていなくて、徹底的に遊んでいたら才能が出てきたということが多いと思うんですよ。だから、時間がある学生時代のうちに自分発信で遊び倒してみてください。

■Profile
高橋優
(たかはしゆう)

1983年生まれ、秋田県出身。2007年札幌のライブハウスでスカウトされ、2010年『素晴らしき日常』でメジャーデビュー。現在、5thアルバム『来し方行く末』が発売中。昨年12月26日にこれまでの人生を包み隠さず綴った初の自伝『Mr.Complex Man』を発売した。

【HP】
https://www.takahashiyu.com/

【著書】
高橋 優自伝 Mr.Complex Man

http://www.asmart.jp/
http://www.amazon.co.jp/dp/4401643739

取材・文:中屋麻依子 撮影:八木虎造