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2018年10月04日

【アノ人の学生時代】カメントツさんインタビュー「僕もケーキ屋さんが効率的にケーキを作るように漫画を描いていけたらいいな」

カメントツ こぐまのケーキ屋さん 漫画 漫画家 タウンワークマガジン

あらゆる視点から“今”を読み解き、新たなムーブメントを生み出していく、Web界隈のクリエイター達。その中でも、SNSを中心に活躍し、今の大学生にとって“気になる先輩世代”となる著名人にインタビュー。好きなことを仕事にするために、彼らはどのような道を歩んできたのか? この連載では、彼らの学生時代の話を通して夢を叶えるヒントを探っていきます。

第8回目の“気になるアノ人”は、カメントツさん。27歳で漫画を描き始めたという異色の経歴ながらも、体を張ったルポ漫画などでコアなファンに支持される中、2017年11月、Twitterに投稿した漫画『こぐまのケーキ屋さん』が大ヒット! その可愛らしくて癒やされる作風で、今では大人から子供まで幅広い層に愛されている漫画家です。また、ライターという顔に加えて、現在は大学講師としても活躍中。そんなカメントツさんに、学生時代の話から自身の仕事論まで、じっくり語ってもらいました。

幼少期から、絵で人を喜ばせることが好きだった

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――美術系の大学出身だと伺いましたが、昔から絵を描くのがお好きだったんですか?

そうですね。幼少の頃から、親があんまりおもちゃを買ってくれなかったので、自分のほしいものは自分で絵にして、絵の中で遊ぶっていう子でした。絵で人を喜ばせることも好きだったから、学校でも、隣の席の子に「こういう絵を描いて」って言われて描いたりしていましたね。だから、進路を考えた時に“デザイナーになれば、絵をたくさん描けるんじゃない?”って思って、デザイナーになるためにその大学に入りました。

でも、その発想がめちゃくちゃ見当違いで……(笑)。もちろん、絵を描くタイミングがあったり、絵を描けると有利なこともあるんですけど、デザイナーって絵を描くことがメインのお仕事じゃなかったんですよ。

――じゃあ、“自分がやりたいことと違うな”って思いながら勉強していたんですか?

まあ、それはそれで結構楽しかったんですけど、授業にはあんまり出てなかったですね(笑)。課題も、やってはいたんですけど、出さないような学生でした。

――謎の行動ですね、それは(笑)。

今思えば、そうですね。でも、その時は中二病的なところがあって、「大人にわかってたまるか!」みたいな気持ちがあったので(一同笑)。勉強よりも、大学祭の実行委員をやったり、オカルト研究部に入ったり、好きなことをやって遊び回っていました。

――そういうお話を伺うと社交的な印象を持ちますが、当時はどういう性格だったんでしょうか?

中学や高校の頃は、自分の話がなかなか他人に伝わらない子でしたね。自分が面白いと思ったものをみんなに話しても、みんながその面白さをいまいちわかってくれないというか、天然とか電波系のように扱われていた気がします。その流れで、大学時代も“喋らないのが吉”だと思っていました。

でも、僕は27歳の時に漫画を描き始めたんですけど、漫画家になってからは面白いように伝わるんですよ。要は、頭の中に思い描いているものを言葉だけでは伝えられない人間だったんです。とはいえ、だから漫画家になったわけではなくて。大学を出てすぐの頃はデザインの仕事をしたこともあったし、いろいろな経験を詰んだ結果、辿り着いたのが漫画家でした。

派遣としてさまざまなバイトを体験していた大学時代

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――バイトも1つの場所に留まらず、いろんなところでやっていたんですか?

そうですね。僕、飽き性なので(笑)。大学時代は、派遣会社に登録して、いろいろな場所で働いていました。パワーが有り余っている時期だったので、解体業者や引っ越し屋さん、溶鉱炉で働くようなバイトもやりましたし、ビルの窓を拭く仕事なんかも楽しかったですね。1日中、砥石(といし)みたいなものでよくわからない鉄の部品を磨くっていうバイトもありました。

――多彩なラインナップですね。

高校時代は、コンビニ店員とか、会席料理屋でひたすら卵を割るバイトとか、固定のバイトをしたこともあるんですけどね。大学生になると、急に予定が入ってバイトを休みたいっていう時もあるじゃないですか? なので、“こういう仕事内容がいい”というよりも、前日に言ってパッと入れるみたいな仕事が自分は好きでした。

――派遣以外のバイトで、とくに印象に残っているバイトはありますか?

27歳の時に愛知から上京したんですけど、その頃はまだ“漫画家志望”だったので、1年間は貯金を切り崩しながらバイト生活をしていて。その時にやっていた警備員のバイトは、すごく楽しかったですね。

警備員の仕事って見回りをする時間が決まっているんですけど、それ以外の時間はずっと監視カメラを見ているんですよね。その時間は考え事をするのにピッタリだったので、監視カメラをチェックしながら、よく次の漫画のネタを考えたりしていました。だから、バイト仲間も、僕と同じようなクリエイティブな仕事の人が多かったですね。僕の他にも2人くらい漫画家志望の人がいたし、駆けだしの役者さんとか小説家志望の人がバイトしていました。

上京したてのクリエイター志望者には、警備員のバイトはオススメ!

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――警備員は、クリエイター志望の人にオススメのバイトなんですね。

そうですね。深夜で、なおかつ長時間の仕事だからお給料もいいですし、同じような夢を持った友達も増えるので、とくに上京したばかりの人にオススメしたいです。僕が働いていた時は、俳優志望の子が「ヤバイ、全然稽古が足りない!」って言っていたら「じゃあ、僕がその日代わりに出勤するよ」ってフォローしたりとか、バイト仲間でその子の舞台を観に行ったりしていましたね。

――温かい職場ですね。でも、中には大変な業務もあったのでは?

基本的には、住民の方のニーズに応えながら、イレギュラーなものに対応していくっていう感じだったんですけど。僕の場合は、セキュリティーを強化しているマンションの警備員だったので、たとえば、マンションの建物内に入るための鍵を忘れた住民の方がいた時にどうするのか?とか、現場にいる警備員の判断に委ねられることが結構多かったですね。

あと、酔っ払って帰ってくる人の対応も大変でしたね。勤務中に「●●●号室の●●ですけど~!」ってベロベロになって帰ってきた方がいて、その部屋に連れて行ったら、ドアが開いていたみたいで普通に入っていったんですよ。その直後、中からギャーッて聞こえて! ドアが開けっ放しになっていただけで、じつは酔っ払いの方の部屋はそこじゃなかったっていうことがありました(苦笑)。

――その部屋の人からしたらトラウマものですね。

うん、本当に。その部屋の方も、警備員がいるという安心感からドアの鍵を開けっ放しにしていたと思うので、警備員の責任は重大だなって思いましたし、もちろん叱られました。

でも、優しい住民の方も多かったですね。住民の方から差し入れをもらうことがよくあって、それは嬉しかったです。若い警備員が多かったので、年配の住民の方は自分の子供や孫のように接してくれていたのかなって思います。

今の時代、無理に続けるよりも自分にピッタリくるバイトを探すほうがいいと思う

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――これまでのバイト経験を振り返って、今の仕事に活きていると思うことはありますか?

“活きている”とはちょっと違うんですけど……派遣のバイトをしていた時、名古屋の吹上ホールっていうところに毎週通って、設営をしていたんですよ。で、僕は今年、『日本ど真ん中書店大賞2018』という賞をいただいたんですけど、なんと、8月に行われた授賞式の会場がそこで! 「わぁ!昔、ここで設営のバイトしてた!」と思いながら周りを見たら、設営のバイトの子達がたくさんいたので、その子達と昔の自分を重ね合わせてすごく感動しましたね。

あとは、いろんなバイトを経験したからこそ、飽き性でいいんだ!っていうのがわかりました。世間的には、飽き性=悪いイメージとか、長く続けることが良しとされることが多いじゃないですか? でも今って、やってみてダメだと思ったら次にいくとか、自分にピッタリくるところを探すほうがいいと思うんですよね。そういう意味では、アルバイトは自分の居場所探しにピッタリだし、合わないなって思ったら無理に続ける必要はないんじゃないかなって思います。“戦略的撤退”、僕は好きですね。

――“撤退”と言うとネガティブに聞こえるかもしれませんが、“挑戦し続ける”ということですものね。カメントツさんご自身、今もなおさまざまな仕事に挑戦されているので、とても説得力があります。

ふふっ、そうですね。漫画家という基盤がある上で、いろいろやらせてもらっています。でも僕、自分の天職は漫画家じゃなくて、工場のライン作業(※)だと思ってるんですよ。同じガンプラを何体も作るとか、黙々とやることが大好きだから、内職も向いてると思います。だけど、一番得意なことが一番お金を稼げることではないから、そこに囚われないほうがいいと思いますね。“自分はこういう人間だから、こういう仕事をするべき”って妄信的に夢を追いすぎると、不幸になる気がします。

僕だって、漫画家の仕事は好きですけど、世界で一番漫画が上手いわけではないし、能力のバランスで言ったら、ライン工がレベル50なのに対して漫画家はレベル15程度ですからね!?(笑)でも、レベル15のほうがみんなに求められていることだと思うので。どういう仕事をしていくかを考える時には、社会における自分のベストポジションを探すことが大事なのかなと思っています。

※ライン作業……工場で、ベルトコンベア上に流れてくる製品を加工する作業

エンターテインメントは少なからず毒を持っているものだから、そこはブレたくない

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――そして、現在は漫画『こぐまのケーキ屋さん』が大ヒット中! 個人的には、カメントツさんはマニアックなルポ漫画を描いている人というイメージが強かったので、可愛らしい作風でかなり驚きました。

あははは。じつは、“こぐまのケーキ屋さん”も、もともとは友達と即興コントをやる時に出てくるキャラクターの1人だったんですよ(笑)。

――1人ということは、他にもいるんですか!?

ゴリラの運転手さんとか、いますよ(一同笑)。

その中から、ある時(2017年11月)、こぐまを主人公にした漫画を友達を元気づけるために描いて、ノリでTwitterにも投稿したんです。そしたら、僕がひた隠しにしていた可愛いもの好きな一面がみんなに喜んでもらえたので、ビックリっていう(笑)。今は小さいお子さんからファンレターが届くことも増えました。

――ただ、そうなると、また“求められる仕事”が変わってくるかな?と。

そうなんですよね。でも、子供が読んでも大丈夫なものを描きたい気持ちがある反面、エンターテインメントは少なからず毒を持っているものだと思うので、そこはブレたくないというか。めちゃくちゃ安全な漫画を描くつもりはないんですよね。それに、ルポ漫画を描いていた頃から、自分の中では“生死”や“多様性”というのをメインテーマにしていたんですけど、それは『こぐまのケーキ屋さん』でもそんなにブレていないなと思っています。

一番大事なのは、“自分の個性や能力に囚われずに、自分の願望を客観的に明確にすること”

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――ちなみに、ケーキ屋さんでバイトしてみたい願望はありますか?(笑)

1回ケーキ屋さんを見学させてもらったことがあるんですけど、自分には無理ですね。ケーキ屋さんの厨房って、すごく合理的なんですよ。すべての道具があるべき場所に収まっていて、パーッと見渡すとすべての道具が見えるようになっていて、早朝から効率的にケーキを作っていくんです。それを目の当たりにして、僕にはできないなって。僕もこういう風に効率的に漫画を描いていけたらいいなって思いました(笑)。

――では最後に、やりたい仕事や将来の夢がなかなか見つけられず、モヤモヤしている方に向けて、改めてアドバイスをお願いします。

さっきも言いましたけど、やっぱり一番大事なのは、“自分の個性や能力に囚われずに、自分の願望を客観的に明確にすること”だと思いますね。僕は今、大学の講師もしていて、学生に「カメントツさんみたいになりたい」と言われることがあるんですけど、その子に「僕のどういう部分に憧れたの?」って聞いたら「インタビューをたくさん受けててカッコイイ」って言われたんですよ。でも、“インタビューを受けること”が夢なのだとしたら、漫画家って結構遠いじゃないですか? ものすごく人を助けるとか、ものすごくお金を稼いだほうが近い。そういう風に遠回りをしてしまっている人が多いような気がするので、それを踏まえて、今一度考えてみてもいいんじゃないかなって思います。

 

■Profile
カメントツ

愛知県出身。名古屋造形大学卒。デザイナーなどの仕事を経て、2013年より漫画家の道へ。若手漫画家を支援する「トキワ荘プロジェクト」に参加していた頃、Webメディア「オモコロ」掲載をキッカケに、レポ漫画やエッセイを描き始め、その記事が度々バズるように。その後、2017年にTwitterに投稿された漫画『こぐまのケーキ屋さん』が話題を呼び、投稿から6日後には書籍化が決定。同書が2018年3月に発売された後、2018年8月24日には『こぐまのケーキ屋さん そのに』が発売された。

Twitter:@Computerozi

編集:ぽっくんワールド企画 撮影:河井彩美 取材・文:斉藤碧

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