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2021年10月08日

友達がいないあなたへ。ひとりであることは悪くない。齋藤孝さんに聞く”友達”という存在について

齋藤さんインタビュー今、友達がいないと悩んでいる人はいませんか? いないことで焦ったり、自分っておかしいのでは…と考えたり。でも、本当に友達って必要なの? そもそも友達って何? そんな素朴な疑問と、実際に友達をつくる方法を教育学者の齋藤孝先生が答えてくれました。

「友達」とは一緒にいて楽しい存在。数よりも関係性が大切

――そもそも友達とは、どんな存在なのでしょうか?

友達とは「一緒にいて楽しくて、笑顔になれる、元気になれる存在」と私は定義づけています。だからこそ「みんな友達」ではなくていいんです。一緒にいて楽しい人だけ友達になればいいんです。でも、最近は「友達」という言葉が重みをもちすぎて、「友達は良いもの」ということがもてはやされ過ぎていると思います。

例えば「友達は多いほうがいい」というようなムードがありますよね。インターネットやSNSの影響で友達の数が可視化されやすくなったのが原因だと思いますが、この風潮は危険だなと思っています。

大事なのは友達の多さではなく、どれだけいい関係が結べているかです。友達がいなかったり、うまく関係が結べないと世の中から否定され、「自分は誰からも好かれない人間だ」というような気がしてしまう。しかし、決してそのようなことはなく、人生を脅かすような問題にはなりません。

――とはいえ、やっぱり友達はいたほうがいいと思いますか?

友達が必要かどうかは人生の時期や年齢によっても違いますし、人によっても違います。大人になると、友達よりも仕事や恋人、家族のほうがより大切に思える時期が来て、「自分には友達はいらない」と考える人も増えます。

けれど、社会に出るまでの時期には友達は必要です。「友達が必要」というよりも、「友達をつくろうとする行為、行動」が必要なのです。友達づきあいは、面倒くさいこともありますし、嫌なことも起きます。その中で、自分以外の他の人とどのように関係を結び、どうやって共存していくかを考え、工夫や努力をする。この行動スタイルを学習することが必要です。つまり、友達付き合いを通じて、社会に出てから困らないように、人間関係の練習をしているのです。

友達をつくるには「好きなものが同じ」がポイント

――学生時代は友達をつくる過程が大切なのですね。友達をつくるためには、具体的にどのような行動を起こせばいいのか教えてほしいです。

「友達ができない」「友達づくりが苦手」という人に特におすすめしたいのが、「好きなもの」つながりで友達をつくる方法です。趣味といえるものがなくても、日常生活のなかで「これ、いいな!」と思うものがいろいろありますよね。好きな動物でも、好きなお菓子でも、よく見ているYouTubeチャンネルでも、なんでもいいんです。自分が好きなものなら楽しく話ができますし、好きなものの話題で盛り上がれる相手は、それだけで「一緒にいて楽しい」という友達の定義に当てはまります。

具体的な行動として、リュックについているマスコット人形を見て、「○○好きなの? わたしも」と声をかけてみたり。「好きなものが同じ」というのは、友達づくりのいいきっかけです。友達づくりに悩んだら、まずは、自分の「好き」を大事にしてみてください。

コロナ禍でも友達をつくる3つの方法

――自分の「好き」を考えることから始めるのがいいのですね! でも、コロナ禍の今、友達をつくるのがより難しい状況になっています。今だからこそできる友達作りのコツはありますか?

ソーシャルディスタンスで接近できなかったり、オンライン授業が多いからこそ、「心の距離」は縮めたいですよね。親しくなりたい人と「心の距離」を縮めて友達をつくる3つの方法を教えます。

1.声は大きくはっきりと

どんなに良いことを言っていても、小声でぼそぼそ話したのでは伝わりません。声に勢いのある人は存在感が出ます。特別なことをしなくても、呼吸を深くして、はっきり話すことを意識して習慣づければ、はっきり話せるようになります。

2.動きを大きく「テンション1.5倍増し」を意識しよう

マスクごしの会話や、オンラインなどは表情が見えにくいです。だからこそ、いつもより少しオーバーアクションに見えるくらいの動作をしたほうが伝わりやすいです。例えば、しっかり頭を動かして、大きくうなずく動作をするだけでも印象が変わります。

3.「目を見る」「ほほえむ」「うなずく」「相づちを打つ」で好感度を上げよう

気持ちの良い会話の基本姿勢です。まず、話す相手の目をきちんと見る。笑顔の加減は時と場合によりますが、対話の場合は、軽くほほえんで柔らかな表情をキープしましょう。そして、話を聞きながら、ときどきうなずいたり、相づちを打ったりする。いい間合いで相づちを打ってもらえると、話し手は話しやすくなり、会話がはずみます。

自分の意思でひとりになる「能動的ひとりぼっち」になれば寂しくない

――それでもなかなか友達ができなくて、ひとりでいるときに辛さや怖さを感じてしまうときはどうすればいいでしょうか?

ひとりが辛かったり、怖いのは「受動的なひとりぼっち」だからです。例えば、おもしろい本や動画を見ているときは何時間もひとりっきりでいても、寂しいとは思わないでしょう。それは自分が「ひとりでいる」ことを選んでいるから。しかし、仲の良い友達が他の子たちと楽しそうに話している姿を見たときは、無性に寂しく感じます。自分の意思ではなくて、自分をとりまく関係性のなかで、「ひとりにさせられている」と感じる状況は、「受動的ひとりぼっち」です。
ひとりになることを怖がらないようにするには「受動的」ではなく、「能動的ひとりぼっち」になればいいのです。自分の意思で「ひとりになる」ことを選択するのであれば、寂しくないし、恥ずかしくもありません。

――「能動的ひとりぼっち」になるには、具体的に何をしたらいいのですか?

「能動的」というのは、自分で主体的に行動することです。まずはひとりで過ごす時間を充実させることから始めてみましょう。本を読む、絵を描く、文章を書くのもいいですね。音楽が好きなのであれば、聴くだけでなく、歌ったり、楽器を演奏したり、詞を書いたり曲をつくったりするのもいいです。また、散歩やランニング、植物を育てる、動物の世話をするなどひとりでも楽しめるものを探してみましょう。気軽な気持ちでいろいろ挑戦してみてください。

まとめ

友達をつくることも大切ですが、これからの時代を生きていくうえで今後、重要になるのは「主体性をもつ」ことだと齋藤先生はいいます。主体性とは「ひとりになる勇気」。ひとりになることを怖れない心、ひとりを楽しめる心は、人とうまくつながるための大切な要素であると同時に、主体的な生き方の軸だと考えれば、気持ちも楽になるはずですよ。

■Profile
齋藤孝(さいとう・たかし)
明治大学文学部教授。東京大学法学部卒。専門は教育学、身体論、コミュニケーション技法。テレビをはじめ様々なメディアで活躍。
現在、書籍『友だちってなんだろう?ひとりになる勇気、人とつながる力』が絶賛発売中。

齋藤さんインタビュー

文 中屋麻依子

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