積読してても大丈夫。積読本を気楽に読み進められる解消法とは?
買ったけど読むタイミングをなくして、未読の本が積まれていく「積読」。「読まなきゃ…」と少し罪悪感をもってしまいがちですよね。でも、積読は悪くないと提唱するのが、脳科学や心理学の観点から新しい読書法を提案する渡邊康弘さん。積読の良さや積読になってしまった本を気楽に読み進められる読書術を教えてもらいました。
積読に罪悪感があるのは「最初から最後まで読まないといけない」と思っているから
――そもそも積読の定義とは何でしょうか?
そのとき、読みたいと思って買った本が、試験期間やバイトで忙しくて読むタイミングを逃してしまい、未読の本が溜まっていってしまう状態です。机の上や床などに読んでない本がどんどん積まれているようなイメージですね。
――積読を見ると、「あの本、読まないと…」って、ちょっと憂鬱な気分になるんですよね。
そういう方、多いと思いますけど、積読は決して悪くないんですよ! 本を買うことはとてもいいことですし、積んでいる本の背表紙を見るだけで、自分に必要なテーマが目に入っているわけですから。憂鬱になったり罪悪感があったりするのは、読書を最初の1Pから最後の1Pまでしっかり読まないといけない、と考えているからなんですよ。
――でも、読書って最初から最後まで本を読むことですよね?
それもひとつの読書法ですが、僕はもっと自由に本を読んでいいと思うんです。パラパラめくって、気になる文章があればそこだけを読んだり、読んでいるうちにつまらない、役に立たないと思ったら、そこで読むのをやめたりしてもいいですし。学校教育の影響で、読書は感想文を書く為に最後まで読まないといけないとか、著者の考えを正しく理解しないといけないと思い込んでいるかもしれません。
でも、決してそんなことはありません。脳科学的には正しいことよりも、自分にとって役に立つことのほうが記憶に残るので。読書は自分が役に立つと思った一文に出合うだけでいいんですよ。
積読した本は「パラパラ読み」がおすすめ
――では、積読になってしまった本を自由に読み進めるための方法を教えていただけますか?
コツを3つ紹介しますね。
① 本を読む環境を整える
意外と大事なのは本を読む環境です。きちんとリラックスした空間で読むほうが読書効率はあがります。まず、窓を開けて空気を通し、水を一口飲んで、ゆったりとした呼吸を1分間する。自分と空間をリラックスさせることで集中力が高まります。
② パラパラ、パカっと開いて読みたいところから読む
本は1P目から読まなくてもいいです。パラパラ、パカっと開いて、目についた言葉や、気になる文章や太文字部分などから読んでもOK。もちろん、それで読みはじめて役に立たない、つまらないと思ったら、そこでやめてもいいし、またパラパラ、パカッと開いて…興味の惹かれるところを探していきましょう。
③ 自分の悩みや聞きたいことを思い浮かべて本を開く
本を開く前に、自分が今悩んでいることや、聞きたいことを頭に浮かべて本を適当に開いてみてください。そうすると、そこに書いてある言葉が自分の答えにつながることがあります。悩みと本の内容のつながりがまったくなかったとしても、今、必要な言葉がそこにあるかもしれません。
今の時代だからこそ、読書から得られるものが大きい
――そもそも、ネットで情報が得られる今、読書をする大切さとは何だと思いますか?
社会で必要とされることは必ず本になっています。社会が変化するとき、人はどう生きればいいかわからなくなって戸惑いますが、読書をしている人はいろいろな価値観や物の見方ができるようになります。何百年も前に生きた人の考えや知恵を得られたり、最先端の考えを知ることができたりしますから。特に先人の知恵や知見を読書によって疑似体験できるのはすごいことだと感じます。
コロナ禍になり、答えがない時代に到達しました。日常生活でもビジネスの現場でも、これまでは「以前、うまくいった方法」を実践すれば成果をあげられました。しかし、いまは誰も経験したことのない問題が次々と起こり、以前の答えが通用しない時代です。読書をするのも「この本に正解が書かれている」と思って読むのではなく「ここは確かに役に立つ」「自分だったら、こう思う」「ここに社会的な痛みがある」など、自分の意見とのズレを見つけるのも読書の重要な役割です。そのズレに対して、自分なりに答えが出せれば、それが問題解決に繋がったり、社会に出て新しいサービスを生み出したりするきっかけになるかもしれません。つまり読書によって、自分なりの考えや問い、今後やりたいことが生まれることがあるのです。
――答えを探すのではなく自分の意見とのズレを見つけるように読めばいいんですね。
はい。そして読書はコミュニケーションの一環にもなります。私自身が会社に入りたての頃、多くの先輩たちに「どんな本を読めばいいですか?」と聞いてコミュニケーションをとりました。実際に教えてもらった本が自分の役に立ち、かつ「読んでどうだった?」と聞かれるので、その後の会話も盛り上がります。難しかったのであれば、正直に「難しかった」と言えばいいんです。そうすると、いろいろ教えてくれて、ますます会話が弾むでしょう。もし、今、憧れの先輩やバイトの仲間がいるのなら、「おすすめの本ありますか?」と会話のフックにするのがおすすめです。
渡邊康弘(わたなべ・やすひろ)
レゾナンスリーディング開発者。経営/人生経営コンサルタント青山学院大学経済学部卒業後、ベンチャー企業の立ち上げに関わりその後、独立。脳科学、行動経済学、認知心理学をベースにした独自の読書法「レゾナンスリーディング」を開発。読書というスキルを通して研修や企業コンサルタントを務める。
最新著書に『ものの見方が変わるシン・読書術』がある。