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2015年08月24日

多重キャラの使い分けは良い?悪い?

多重キャラ

テレビでおなじみの精神科医・名越康文(@nakoshiyasufumi)が心の悩みにズバッと答える! この記事は公式メルマガ「生きるための対話」よりお届けします。

キャラは「他人の求め」に応えてできあがるもの

学校でも職場でも友人関係でも、自分の「居場所」を確保するということは大切なことで、「キャラ」というのはそのための有力な「ツール」だと言えるでしょう。リーダー的なポジション、参謀的なポジション、ボケ、ツッコミなど、キャラクター設定はさまざまですが、わかりやすい「キャラ」を作って演じることは、仲間の間で、自分の居場所を確保するうえである程度有効です。

ただし、「ある程度」ということは、そこには限界や、デメリットもある、ということです。その大きな理由は、そもそも自分の「キャラ」というのは、ほとんどの場合、自分だけで選び取ったものではないことにあります。多くの場合、その人のキャラというのは、周囲の他人の求めに応じて自然にでき上がるものです。つまり、ある人が「ムードメーカー」のキャラに落ち着くのは、グループ内でそういうキャラが求められたから、ということですね。

もちろん、最初はそれでいいんです。ただ、これって意地悪な見方をすれば、周囲の人にとって「扱いやすい」キャラに、その人を押し込んでいる、という人間関係の力学の結果だということもできるわけです。

キャラを作ることで、自分の居場所を見つける。それは、ある程度までは非常に有効な方法ですが、必ずどこかで、息苦しさが出てくる。それは結局のところ、そのキャラが自分が選びとったものというよりは、誰かから押し付けられたものだからです。

オーディエンス(観客)の力が強すぎる

僕が今の若い人たちを見ていてちょっと気になるのは、「オーディエンス」(観客)の位置にある人たちの影響力が強すぎる、ということです。「◯◯さんはボケキャラだよね」ということがいったん定まると、なかなかそこから抜け出すことができない。それは、グループ内はもちろん、そのグループからちょっと距離のあるような人たちが、いわばミュージシャンのライブを眺めるみたいに、「ボケキャラとしての◯◯さん」を常に見ていて、その空気づくりに加担しているからです。

そういう「観客」の空気に呼応するようにキャラを演じるようになると、もうそのキャラから抜け出せなくなる。「自分のキャラに息苦しさを覚える」というのは、そういうことなんだと思います。

これは、どんな世界でも起こりうることです。たとえば、芸能やお笑いの世界でも、あまりにも熱心なファンがついてしまうと、それまでの枠組みを超えた成長が難しくなってしまう、ということが起きます。熱心なファンが期待するネタなり、曲なりを、同じように繰り返すということしかできなくなってしまう。いわば「期待に引っ張られる」わけです。

そういうファンからの無言の圧力にアクターが引きずられてしまうと、その人の成長が止まってしまう。これは別に芸能界に限ったことではありません。学校や会社など、メンバーがある程度以上に固定化されたコミュニティにおいては、ほとんど避け難く起こってしまうことなんです。

ただ、繰り返しますが、そうやって固定化したキャラの枠組みの中で生きるのは、悪いことばかりではありません。しっかりした「居場所」があったほうが、人は安心して生きることができる。ただ、人生のどこかで、そういうしがらみから脱していかないと、人は成長することはできない、というのもまた事実である、ということです。

僕らはみんな、他人から嫌われ、居場所を失うことに、心のどこかで恐怖心を抱いています。だからなかなか、いったん演じるようになったキャラを変えられなくなってしまう。そこには、現代社会における「観客」からのプレッシャーの強さ、という問題が影を落としているのだと思います。

キャラの変化に歴史性を取り戻す

一度演じるようになったキャラからいかに抜け出していくか。これは、現代社会において、人がいかに成長していくか、という問題とほとんどイコールといってもいいぐらいです。

逆にいえば、少し時代を遡れば、そういう「固定化したキャラの問題」を回避する社会の仕組みがあったんですね。その象徴が、徒弟制度です。お店に入った当初は「丁稚」だった人が、手代、番頭とだんだんと出世の階段を上る中で、いやおうなくキャラクターが変わっていく。「丁稚」と「番頭」では、ファッションも、話し方も、表情も、歩き方も、すべてが違う。つまり、社会システムとして「キャラが変わる」ステップがきちんと作り込まれていたわけです。

僕は「キャラクターを使い分ける」ということ自体には肯定的です。ただ、友達グループによってキャラクターを使い分ける、というだけでは、そこには成長の時間軸、すなわち「歴史」がありません。人間関係の「横軸」での変化ばかりで、人が成長していく「縦軸」のベクトルがないのです。。

これは長期的に見ると、しんどい状況だと思います。人間的成長をともなわずに、対人関係の中でキャラを変え続けるだけというのは、あまりに不毛です。

観客(オーディエンス)の力が強く、自分のキャラから脱皮できずに苦しんでいる人に、僕がオススメしている方法があります。それは「旅に出る」ということ。それも、あまり目的を定めない旅がいい。テレビ番組で、「ダーツの旅」というのがありますね。ダーツの刺さったところにロケに行く、というあの企画です。ああいうふうに、時には自分の運命をサイコロに任せてみる、というのがいいんです。

一人で旅に出て、周囲に自分を知る人がいないところでは、僕らは自然と、自分が知らなかった自分を演じ始めます。できれば5泊、短くても3泊以上の一人旅に出る。帰ってきた頃には、あなたはそれまでの「キャラ」から脱却しつつあるのではないかと思います。

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精神科医・名越康文名越康文(なこしやすふみ)
1960年、奈良県生まれ。精神科医。臨床に携わる一方で、テレビ・ラジオでコメンテーター、映画評論、漫画分析など様々な分野で活躍中。著書に『毎日トクしている人の秘密』(PHP、2012)、『自分を支える心の技法 対人関係を変える9つのレッスン』(医学書院、2012)、『驚く力 さえない毎日から抜け出す64のヒント』(夜間飛行、2013)などがある。