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2015年12月01日

緊張をほぐすための3つのステップ│名越康文

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テレビでおなじみの精神科医・名越康文(@nakoshiyasufumi)が心の悩みにズバッと答える! この記事は公式メルマガ「生きるための対話」よりお届けします。

どうやって緊張をほぐせばよいか

秋から冬にかけて、受験や就職活動のシーズンがやってくると必ず受ける質問があります。それは「どうやって緊張をほぐせばいいのか」「どうすれば本番に強くなれるのか」というもの。

先にお断りしておきますが、この質問に対する、特効薬的な方法はありません。そんなものがあれば、僕が知りたいぐらいです。僕がいまやらせていただいている仕事の中で、もっとも緊張するもののひとつに『有吉反省会』の収録があります。司会の有吉弘行さんはもちろんのこと、僕と席を並べているのは博多大吉さんやバカリズムさん、友近さん、大久保さんといった、油の乗りきったプロ中のプロの芸人さんばかり。その中で僕一人がど素人ですから、考えてみれば「緊張するな」というほうが無理な話なんです。

最初の頃は、「とにかく足を引っ張らないようにしよう」という思いから、ものすごく緊張しました。それこそ、出演する前の日はちゃんと眠れないくらいだったんです。でも、何度か出演するなかで、自分なりにその緊張への対処法を工夫するようになった。最近はようやく、ぐっすり眠れる日も増えてきました。

そんな僕の経験も交えて、いくつか、緊張をほぐして、本番に強くなる方法、というのをご紹介したいと思います。

まずは、周囲との壁を崩していく

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僕自身の経験、それから、僕がカウンセラーとしていろいろな方にアドバイスをさせていただいてきた経験からいって「緊張をほぐす」といっても、だいたい3段階ぐらいのステップがあると考えています。

まず1つ目。これは「敵対」の段階です。周囲がすべて敵に見えて、自分が常に孤立しているように感じる。そのことによって生じる緊張です。例えば、中学生が試験で緊張するのはなぜか? それはもしかすると、親や先生に叱られる恐怖心からかもしれませんよね。あるいは、クラスメイトからバカにされるのは嫌だ、という不安かもしれない。

これは突き詰めれば、自分以外の他人、ひいては世界と「敵対」していることによる緊張です。

これは大学受験でも、就職活動でも、あるいは社会人になってからの大事なプレゼンや商談での緊張感でも、同じことが言えます。周囲の人間が「敵」として感じられているうちは、緊張感がほぐれることはありません。それは結局、無意識のうちに「他者恐怖」に陥っているからです。

このタイプの緊張をほぐすには、「周囲の人やモノを、少しずつ味方に変えていく」ことしかありません。ではどうやれば、周囲の人やモノと仲良くできるか。手っ取り早い方法としては、「朝、明るくあいさつをする」ということがあります。家族や友人と会ったときに「おはようございます」「おはよう!」と明るい気持ちで挨拶をする。これを3か月ぐらい続けていれば、ずいぶん、ここ一番の場面で緊張することが減ってくるはずです。

もし、対人関係が苦手で、挨拶だけでもちょっとハードルが高い、ということであれば、「モノ」からアプローチしてもかまいません。例えばあなたがメガネをかけているのなら、毎朝、出かけるまえに3分でも時間をとって、丁寧に自分のメガネを磨いてください。自分が履いていく靴、あるいはコーヒーを飲むコーヒーカップでもいいでしょう。身近なモノと大切に接する。そういう時間を作っておくことで、だんだんと世界と敵対する無意識が、ほぐれてくるのです。

次は、周囲と「仲間」になっていく

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挨拶や、身近なモノを大切にすることで、世界との敵対度が少し緩和されてきたら、次のステップです。今度は、もう少し積極的に「仲間づくり」に取り組む。周囲の人が敵じゃないということがわかってきたら、今度は仲間にしていく。「仲間にする」というと大変なことのようですが、やるべきことは簡単です。それは「他人と分け合う」ということです。

例えば、学校や職場にお菓子を持っていって、それを仲間と分け合う。あるいは、何か困っている人がいたら助けてあげる。電車で席を譲ってあげる、というのでもかまいません。

このとき重要なことは「この人にこれをしてあげた」ということを、やった直後にすぐさま忘れてしまう、ということです。「してあげた」ということに執着していると、どうしても相手からの返礼を求めてしまいますよね。でも、そのことに執着しているうちには、相手と「仲間」になることができないんです。

「分かち合い、そのこと自体を忘れる」。これが「仲間作り」のステップです。
ここまでくると、かなりの程度、世界との和解が進んできます。かなりの大場面でも、上がらなくなってきます。

ただ、僕の場合、ここまできても、冒頭に述べた有吉反省会レベルの緊張はなかなかクリアできなかった(笑)。どんな人にもそれくらい緊張する舞台というのはあるはずです。

それでもクリアできなければ、「別の自分」の力を借りる

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というわけで次の3つ目のステップなのですが、ここから先は、「仏教」の力を借りてみましょう。それは「自分の知らない自分を舞台に立たせる」というステップです。

仏教というのはある種、「解離」の宗教だと僕は考えているのですが、その象徴となるのがこの「自分の知らない自分が、自分の中にいる」という考え方です。例えばキリスト教などの一神教の場合、偉大な神様というのは、私たち人間とは別のところにいて、神様と私たち人間の間には越えがたい一線が引かれている、と考えると思うのですが(これはあくまで、宗教学的にはまったく素人の見解ですので、話半分に聞いてください)、仏教では、その「解離」が、一人ひとりの人間の中にある、と考えます。

つまり、愚かで、緊張したり、ミスをしたりする「私」とは別の「すばらしい私」が、私の中にいる、というのが仏教の考え方なんですね。

僕が、有吉反省会の前の晩でも眠れるようになったのは、仏教のこの考え方が、曲がりなりにも理解でき始めたからです。実際問題、日常生活を送っているときの「名越A」は粗忽な人間で、とてもじゃないけれど、百戦錬磨の芸人さんの間で丁々発止を繰り広げられるような才覚は持ち合わせていないんです。

でも、お釈迦様の教えによると、僕の中には、その名越Aとは一見まったく別の「名越B」という人間がいるらしい。そして名越Bと名越Aは、記憶とか知識なんかはある程度共有しているけれど、舞台に立った時の立ち居振る舞いはまったく別人といっていいぐらい違うわけです。

それはいわば「ハレの日用の人格」といってもいいかもしれません。そういう名越Bが、自分の中にいる。そう思えるようになったとき、僕は有吉反省会に限らず、「舞台」に立つことが以前ほどは、怖くはなくなったんです。

あまりにぶっ飛びすぎている、と思われるかもしれませんね。もちろん基本的には、1つ目、2つ目のステップでご紹介した対応法だけでも、ずいぶんプレッシャーには強くなると思います。でも、3つ目のステップについても、ぜひ心の片隅に覚えておいてください。少しでもそういう「舞台モードの自分」に切り替える、ということを覚えておいていただくと、ずいぶん感覚が変わってくると思います。

身体からアプローチする

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それから、こうした準備をしていても、実際にその場に立つと上がってしまう、ということもありますよね。そういうときは、「身体からアプローチする」ということを心がけてください。

例えば緊張したときには横隔膜がせり上がってきて、呼吸を圧迫します。横隔膜を下げる方法というのも、さまざまな人が紹介されていますので、ぜひそういうものも取り入れてみる(私のオススメは、武術家の甲野善紀先生がご紹介されている方法です。詳しくは甲野先生のメルマガやDVDなどをご覧ください)。

甲野善紀氏のメールマガジン「風の先、風の跡~ある武術研究者の日々の気づき」
http://yakan-hiko.com/kono.html

甲野善紀氏のDVD 技と術理シリーズ
http://kono.yakan-hiko.com

いずれにしても、一度上がってしまって心を平常心に戻すのは大変です。でも、身体をコントロールできれば、必ず心も落ち着かせることができるんです。

例えば、人前に立つときであれば「背中側を意識する」というのも、身体からのアプローチとしては有効です。人間というのは、両目が身体の前についている生き物ですから、どうしても緊張すると前のめりになりがちです。ちょっと緊張してきたな、と思ったら、「背中側」を意識してみる。それだけでもずいぶん、緊張が緩和されるはずです。

企画:プレタポルテby夜間飛行

<関連書籍情報>
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精神科医・名越康文名越康文(なこしやすふみ)
1960年、奈良県生まれ。精神科医。臨床に携わる一方で、テレビ・ラジオでコメンテーター、映画評論、漫画分析など様々な分野で活躍中。著書に『毎日トクしている人の秘密』(PHP、2012)、『自分を支える心の技法 対人関係を変える9つのレッスン』(医学書院、2012)、『驚く力 さえない毎日から抜け出す64のヒント』(夜間飛行、2013)などがある。