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2015年12月09日

思考能力を高めたいなら、言語能力を磨け│岩崎夏海

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『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』作者の岩崎夏海さんが、混沌とした現代をどうとらえればいいのか? を書き綴っていく社会評論コラム。この記事は岩崎夏海メールマガジン『ハックルベリーに会いに行く』よりお届けします。

教養を身につけるためには知識が必要である。
教養の定義の一つを「面白がる力」として、「映画を面白がる力こそが教養」とすると、それには「知識」を必要とする。知識がなければ、映画を面白がることはもちろん、それ以前に理解することも不可能だからだ。つまり、知識がなければ映画を面白がることもできず、映画を面白がることができなければ教養も身につかない──というわけである。そこでここでは、教養を身につけるための知識について、どのように養っていけばいいのか、考えてみたい。

言葉はコミュニケーションだけではなく、思考の道具である

「教養を身につけるための知識」といって、まず思いつくのはなんといっても「言語」である。例えば上記の映画にしても、言葉を理解していなければ、ほとんどの作品を理解することができない。外国語の映画も、もちろん見ているだけで面白いものもないわけではないが、言葉を理解できた方がもっと面白くなるのは自明の理である。だから、教養を身につけるためには、まずは言語能力を養っていかなければならない。

ところで、言語能力を身につける上で、多くの人にとって大きな「阻害要因」となっているものがある。それは「自信」である。ほとんどの人が、「自分は言葉を知っている」という自信を持っている。だから、なかなか言語能力を身につけようというモチベーションが高まらない。

なぜ多くの人が言語能力に自信を持っているかというと、ほとんどの人が普通に「話せる」からである。普通に他者とコミュニケーションできる。そして、それで十分だと思ってしまっている。なぜなら、多くの人は言語を「コミュニケーションの道具」だと思っているからだ。

しかしながら、言語にはもう一つの重要な役割がある。それは「思考の道具」ということだ。人は、言語を用いて思考する。言語を用いなければ、それほど深く思考することができない。

思考能力のレベルは、外見では判断できない

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ただ、多くの人はそのことを知らない。なぜなら、「思考の深さ」というのは、「話の上手さ」ほど、パッと見て判断がつかないからだ。人は、他者の話し方を見て、「あ、この人は話が上手いな(あるいは下手だな)」というのはすぐ分かる。しかし、他者が考えているところをみて、「あ、この人は考え方が深いな(あるいは浅いな)」というのは分からない。思考は、基本的にその人の頭の中で行われているので、外見では判断がつかないからだ。

そうして、多くの人が、自分でもそうしているにもかかわらず、「言語が思考に大きな役割を果たしている」とは気づかないのである。それによって、「自分の言語能力が、思考するためにはもの足りない」ということにもなかなか気づかない。おかげで、言語能力を高めようというモチベーションが上がらず、教養も身につかないのである。

まとめると、言語能力を身につけるためには、最初に「言語は思考の道具である」というのを知る。その上で、「自分の言語能力は、思考をするためにはもの足りない」ということを知る。そうすれば、自ずと言語能力を身につけようというモチベーションが高まって、勉強し、身につけられるようになるのだ。

曖昧な思考を言語化することで思考がクリアーになる

ところで、言語は思考にどう役立つのか?それは、「曖昧なものに姿や形を与えてくれる」ということである。概念を明確にしてくれる。それで、思考がクリアーになるのだ。

例えば、「抽象的」という言葉がある。「抽象的」とは、言い換えれば「骨組み的」ということもできよう。その物事を成り立たせている「骨組み」のところだけを抽出しているので、それはそれでだいじなことではあるかもしれないが、表層が抜けている。それを「抽象的」という。

これを理解すると、世の中にある「骨組み的ではあるけれど、表層的ではない」という事象が、ぐっと明確になる。その概念を明確にとらえられるようになる。そうして、それを他のものに置き換えて考えられるようになる。

例えばそれを、「恐竜の化石」にたとえられるようになる。恐竜の化石というのは、文字通り骨組みだ。そして、そこには表層がない。つまり、表層的ではない。

すると、「抽象的というのは、恐竜の化石のようなものだ」という理解の仕方ができるようになる。「恐竜の化石は、ぱっと見ただけでは表層の姿は分からないが、丹念に肉付きを想像していくとそれを想像することもできる」そういう副次的、多層的な理解も、そこから得られるのである。

そういうふうに、言葉を身につけると、それを媒介にして他の物事にたとえられるようになる。そして、他のものにたとえることができると、「理解」というものが一足飛びに進むのである。これを「アナロジー」ともいうのだが、言葉は、アナロジーのための強力な道具なのだ。

企画:プレタポルテby夜間飛行

◆岩崎夏海メールマガジン「ハックルベリーに会いに行く」
毎朝6時、スマホに2000字の「未来予測」が届きます。このメルマガは、『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』(通称『もしドラ』)作者の岩崎夏海が、長年コンテンツ業界で仕事をする中で培った「価値の読み解き方」を駆使し、混沌とした現代をどうとらえればいいのか?――また未来はどうなるのか?――を書き綴っていく社会評論コラムです。ご購読・詳細はこちら

岩崎夏海岩崎夏海(いわさきなつみ)
1968年生。東京都日野市出身。 東京芸術大学建築科卒業後、作詞家の秋元康氏に師事。放送作家として『とんねるずのみなさんのおかげです』『ダウンタウンのごっつええ感じ』など、主にバラエティ番組の制作に参加。その後AKB48のプロデュースなどにも携わる。 2009年12月、初めての出版作品となる『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』(累計273万部)を著す。近著に自身が代表を務める「部屋を考える会」著「部屋を活かせば人生が変わる」(累計3万部)などがある。