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2016年04月25日

男には「モテたい」願望がある? モテたいという心理とは│名越康文

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男性のほうが「モテたい」願望が強い? テレビでおなじみの精神科医・名越康文先生(@nakoshiyasufumi)に、そんな質問をぶつけてみました。

「視線を集めたい」という欲求は男女共もっている

「不特定多数の異性から関心を持たれたい」という意味に限定するなら、確かに「モテたい」気持ちに男女差はあるかもしれませんね。しかし、その「モテたい」という欲求の奥にある、もっと深い欲求に目を向けるのであれば、僕はあまり「男女差」は感じません。

では「モテたい」の奥にある欲求とはなんなのか。それは簡単にいえば「他人の視線を集めたい」という欲求です。もちろん、次々と浮名を流すプレイボーイがこの世にいることは否定しません。ただ、多くの人がいうところの「モテたい」という欲求は、性的なものというよりは、その瞬間ごとの「視線」あるいは「他人からの関心」を求める欲求の表れなのだと思うのです。

一般的な心理学用語ではありませんが、この「他人の視線を集めたい」という欲求を、僕は「集注欲求」と呼んでいます。この集注欲求には、基本的に男女の区別はありません。わかりやすくイメージするなら、「泣いている赤ちゃん」を思い浮かべるとよいでしょう。赤ちゃんは、泣くことによって、お母さんの視線と関心を独り占めしようとする。これは、赤ちゃんにとっては文字通り「生きるための手段」です。

これは人間に限ったものではなく、ある程度以上の知性を持つ哺乳類には、必ず備わった、本能に近い欲求といえます。(巣の中で、母親から餌を求めるツバメの赤ちゃんの姿を思い浮かべてみてください。あれは単なる「食欲」ではなく、やはり「母親からの視線」を求めているようにも見えますよね)

では、泣き叫ぶことで満たされていた集注欲求は、大人になってからはどうやって満たされるのでしょうか? 集注欲求をどのように表出し、解消していくかについては、年齢や文化的背景、男女、個人による差が非常に大きく出る場面です。また、同じ一人の人間でも、場面やタイミングによって、集注欲求がむき出しで出てしまうこともあれば、うまくオブラートに包んで出すのに成功することもある。

ともあれ、「モテたい」という感情を理解するのは、それが「集注欲求」の表出の仕方の、ひとつのバリエーションにすぎないということを理解する必要があるのです。

「モテ」というフィルターではなく「エネルギーの発散」として見てみる

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男性の多くは「モテたい」と思っている。これは半分本当で、半分ウソです。誰でも、「視線を集めたい」という集注欲求を持っている。でもそれは「たくさんの異性から性的に関心を寄せられること」とイコールではありません。

例えば、会社に出勤したときに、男女問わず多くの人からにこやかに、さわやかで挨拶されること。たったそれだけのことでも、集注欲求は満たされることがあります。あなたが関わった商品を、町の人が笑顔で買っている場面を目にして満たされた気持ちになる。これも集注欲求が満たされるという点では、「モテる」ということと同じなのです。

集注欲求が恋愛に結びつけば、確かに「モテたい」という行動として現れる場合もある。でも、「そうじゃない場面のほうがはるかに多い」と捉えたほうが、人間理解としては正確ではないでしょうか。というのも、集注欲求というのはうまく生かせば、人を前に進める、大きな力となりうるものだからです。世の中で大きな仕事をなしとげる人、きらりと光る何かを残す人というのは集注欲求をうまく昇華させることに成功した人だと思います。

「モテたい」「モテたくない」というゼロかイチかという見方をしていると、どうしても「あの人はナンパな人だ(あるいは「堅物だ」)」というような、二項対立的、あるいは平面的な理解からしか、相手を捉えることができません。でも、一見「モテたい」だけに見える人でも、実はさまざまな場面で、さまざまな形で集注欲求を発散させるべく、工夫を重ねていることがあるんです。

自分はどう集注欲求を解消しているのか、あの人はどう、集注欲求をエネルギーに変えているのか。

いまあなたが「モテ」というフィルターで観察している現象を、そういう視点から捉え直してみてください。そうすればきっと、人間というのが単に「異性にモテる」という心理だけで動いているわけではないということが、よりよく理解できるはずですし、異性の言動に振り回されることも、少なくなるんじゃないか、と思います。


※この記事は公式メルマガ「生きるための対話」よりお届けします。

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精神科医・名越康文名越康文(なこしやすふみ)
1960年、奈良県生まれ。精神科医。臨床に携わる一方で、テレビ・ラジオでコメンテーター、映画評論、漫画分析など様々な分野で活躍中。著書に『毎日トクしている人の秘密』(PHP、2012)、『自分を支える心の技法 対人関係を変える9つのレッスン』(医学書院、2012)、『Solo Time 「ひとりぼっち」こそが最強の生存戦略である』(夜間飛行、2017)などがある。 2019年より会員制ネットTV「シークレットトーク」を配信中。

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