スマートフォン用サイトを表示

アルバイトや転職に役立つ情報が満載!最新のお仕事ニュースなら【タウンワークマガジン】

2016年11月09日

「生理的に無理」な人とどう付き合うか│名越康文

名越康文 生理的に無理

特にはっきりとした理由がなくても、苦手な人や、嫌悪感を抱いてしまう相手がいます。「生理的に無理」という言い方もありますが、人を「嫌い!」と感じてしまうのは、相手に原因があるのでしょうか、それとも自分の心に原因があるのでしょうか。テレビでもおなじみの精神科医・名越康文先生(@nakoshiyasufumi)にお話しを伺いました。

「好き嫌い」は生き延びるための大切な力

好き嫌いというのは、人間にとってもっとも大切な「身体感覚」です。たとえば私たちは普通「腐った臭い」のする食べ物を口にしようとはしませんよね。生命を脅かす危険のある腐敗や菌の増殖が起きているかどうかを、私たちの身体は「嫌な臭い」として認識する。これは生物としての人間が生き延びていく上での、かなり基底にある能力といえるでしょう。

もちろん人間はチーズや納豆といった発酵食品の、限りなく「腐った臭い」に近い香りを「美味しそう」と認識することもありますが、それは明らかに後天的な学習によるものです。

対人関係でも同じです。私たちが「嫌い」と感じることには、何らかの理由があります。あなたが「なんだか嫌だな」「この人嫌いだな」と無意識のうちに感じているのだとすれば、もしかすると、あなたの身体が何らかの「危険」を、その人から感じているということかもしれないわけです。

とりわけ、「言葉にならない嫌悪感」というのは、あまり無視しないほうが無難です。僕たちの身体に備わったセンサーは優秀です。一見問題がなさそうな相手であっても、どういうわけか嫌悪感を覚えてしまうということがあります。それは相手が話しているときの、言葉にならないような微妙な緊張感や攻撃性、焦り、欲求といったものを敏感にキャッチして、嫌悪感という形であなたに教えてくれているんです。

もちろん、「嫌い」と感じることすべてに、今述べたような感覚的な合理性があるとは限りません。たとえば、人間関係に何らかのトラウマを抱えている人の場合には、自分にとって利益のある人を遠ざけ、自分に危害を加える人をわざわざ懐に呼び込む、ということをやってしまう人だっています。

そういう意味では「嫌い」という感覚を信じたほうが良いかどうかは、ケースバイケース、という側面があるでしょう。ただ、少なくとも「好き嫌い」とか「嫌悪感」というのは、単なる趣味嗜好というよりは、人間という種がここまで生き延びてくる歴史の中で培われた、必要不可欠の身体感覚だということは認識しておいたほうが良いでしょう。
 

嫌悪感を抱く原因を相手ではなく自分に求める

Man stood up in a date by his girlfriend
現実には、僕らは「どうしても馬が合わない」「顔を見ているだけで腹が立つ」相手と付き合わなければいけない状況に追い込まれることがしばしばあります。その相手は家族かもしれないし、同僚かもしれないし、恋人や友人かもしれない。「嫌だからちょっと距離を置く」という手段を取れない状況というのはしばしばあります。

では、そういう相手とどう付き合っていけばいいのか。とにかく「やってはいけない」のは、「なぜ嫌いなのか」「どこが嫌なのか」という原因探しです。

僕たちはつい、嫌悪感の原因を相手に求めます。「なぜこの人はこれほど融通が利かないのか。もうちょっと融通が利けば好感がもてるのに」というふうに。でも、相手に原因を求めているうちは、問題は決して解決しません。なぜなら、そうやって原因探しをしているうちに、僕たちは「相手を変える」ことを求め、ちっとも変わってくれない相手に怒りを覚えてしまうのです。

では、「相手の悪いところ」ではなく「自分の悪いところ」に目を向けるという方法はどうでしょうか。嫌悪感を抱いてしまう原因を、相手の至らないところではなく、それに嫌悪感を覚えてしまう自分自身に求める。

もし真摯に取り組むことができるのであれば、これは素晴らしいことです。ただ、気を付けないと、これも袋小路にはまりこむ危険性があります。

というのも、嫌悪感というのはそもそも、ある特定の相手に対する持続的な「怒り」だからです。「あの人はどうせこういう態度をとるに決まっている」「こいつはいつもこうなんだ」という思い込みこそが、嫌悪感の奥底に根を張っている感情です。いくら「反省しよう」と思っても、それだけではなかなか深いところに根を張った思い込みを払うところまでには至らないのです。
 

嫌悪感を抱いたら、その気持ちから距離をとる

Couple silhouette breaking up a relation
はじめに述べたように、「好き嫌い」というのは、人間にとって大切な身体感覚であり、それ自体は捨てる必要はありません。ただ、「この人は嫌な奴だ」という固定観念や、持続する嫌悪感にこだわると、人間関係がどんどん狭く、固定化していってしまうことになります。

僕が重要だと考えているのは、「瞬間」の対処です。誰かと会ったときに「嫌だ」と感じた時に、決して原因探しを始めずに、その感覚から手を離す。そうすれば、持続的な嫌悪感というのはだんだんと和らいできます。

その際、重要なのは身体感覚です。コミュニケーションの瞬間ごとに、自分の身体感覚がどう変化するかをモニターしておく。肩がこわばったり、胸の辺りに不快感が広がってきたり、呼吸が浅くなったりしないかを観察しておく。

そうやって、持続的な嫌悪感から手を離しさえすれば、瞬間的な「ちょっと嫌だな」というぐらいの相手と普通にお付き合いをしていくことが随分楽になるはずです。それは、様々なタイプの相手とうまく付き合っていく上での、ベースの力を作っていくことにつながるでしょう。

 
※この記事は公式メルマガ「生きるための対話」よりお届けします。

企画:プレタポルテby夜間飛行

<関連書籍情報>
『驚く力 さえない毎日から抜け出す64のヒント』名越康文 著/1500円+税

驚く力書影 - コピー毎日が退屈で、何をやってもワクワクしない。テレビを見ても、友達と話していても、どこかさびしさがぬぐえない。自分の人生はどうせこんなものなのだろう――。そんなさえない毎日を送るあなたに足りないのは「驚く力」。
現代人が失ってきた「驚く力」を取り戻すことによって、私たちは、自分の中に秘められた力、さらには世界の可能性に気づくことができる。それは一瞬で人生を変えてしまうかもしれない。自分と世界との関係を根底からとらえ直し、さえない毎日から抜け出すヒントを与えてくれる、精神科医・名越康文の実践心理学! amazonで購入する

精神科医・名越康文名越康文(なこしやすふみ)
1960年、奈良県生まれ。精神科医。臨床に携わる一方で、テレビ・ラジオでコメンテーター、映画評論、漫画分析など様々な分野で活躍中。著書に『毎日トクしている人の秘密』(PHP、2012)、『自分を支える心の技法 対人関係を変える9つのレッスン』(医学書院、2012)、『驚く力 さえない毎日から抜け出す64のヒント』(夜間飛行、2013)などがある。