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2019年06月19日

【名越康文×しいたけ. 《対談》】君たちはなぜ「やりたいこと」が見つからないのか~vol.3~

名越康文 しいたけ 対談 占い タウンワーク townwork

将来どんな仕事をしたいのか。どんな働き方が幸せなのか。今、自分の「やりたいこと」がわからない若者が増えていると言われています。今なぜ、若者は「やりたいこと」が見つからないのか。精神科医・名越康文先生と人気占い師、しいたけ.さんが、自分のやりたいことが見つからない人たちに向けて、仕事、人生について全4回の対談形式でお送りします。第3回のテーマは、「”やりたいこと”に導いてくれるのは”偏愛”の力」

 
vol.3
「やりたいこと」に導いてくれるのは「偏愛」の力

「偏愛」とは物事への深い理解

名越康文 しいたけ 対談 占い タウンワーク townwork

しいたけ.:いま、ちょっと「やりたいこと」が見つかりにくくなっていることの背景に、読書とか、ラジオを聴く時間が少なくなっていることがあるような気もするんです。というのも、占いの相談にくる人で、「どんな人が好きなのかわからない」っていう人って、あんまりラジオとか聞かない人が多いことに気がついて。

名越:ああ。なんだか、わかる気がしますね。ラジオを聞いているうちに、自分の中で「やりたいこと」の種が芽を吹いて、育っていく時ってありますよね。

しいたけ.:なんでラジオがいいかっていうと、好きなアーティストのラジオを聞いていると、「僕はこんな人に影響を受けたんだ」「このお店の内装が大好きなんだ」みたいな話をしている。そういうのを聞いているうちに、自然と自分の興味の方向がわかってくる、みたいなことがあると思うんです。

これって、たとえばツイッターやインスタだけ眺めていても、あんまり起きないことで、たぶん情報って、「広く浅く」知るのもいいんだけど、やっぱりどこかで、偏った「偏愛」みたいなものが大事なのかなって。

名越:ツイッターやSNSは便利なんだけど、そういう自己拡張につながるような偏愛を育むことはできないですよね。

SNSは、情報の総量としてはすごいと思うんですけど、情報のつなぎ方のおもしろさを表現するのにはあまり向いていないと思うんです。

人にはそれぞれ、その人独自の偏りがあって、それに触れた瞬間、人は確かに変わる。だから、一人の人間の、一見くだらない話をだらだら聞いているほうが、かえって自分の世界を広げていくのに近道なんですよね。

しいたけ.:ラジオって、「この店しかいかない」「この人の書いたものは全部読む」みたいな、ちょっと排他的な感覚を育んでくれるところがあって、それが、本当に「やりたいこと」に出くわす確率を上げてくれる気がするんです。

名越:偏愛っていうと、世界が狭くなるとか、興味の幅が狭まる印象があると思うんですけど、実は偏愛もあるレベルを越えると、逆にすごく世界が広がるんですよね。度を超えた偏愛には、世界を広げる力が宿る。

たとえば、僕は立川志らく師匠の話が好きなんですけど、志らく師匠って、まさに「偏愛」の人なんです。故・談志師匠を、あそこまで深く愛している人はいない。自分のオリジナリティとかアイデンティティなんかどうでもいいというぐらいに、談志師匠を敬愛している。

そうすると何が起きるか。志らく師匠って、談志師匠が生前にぽろっと話したB級活劇映画のことまでチェックしているんですね。つまり、志らく師匠の興味関心というのは、談志師匠という存在を通して、びっくりするぐらい、外側に、広く開かれていってるわけです。

――別に自分の仕事にすぐにつながらなくても、何か大好きなものを「偏愛」することが、いろんな世界との出会いにつながっていく、ということでしょうか。

名越:そうですね。たとえば「自分の大好きな○○さんが大好きな映画」だと思うと、普通にその映画を観るのとは、見方が違ってくるでしょう? ただ情報を集めるだけでは、そういう深い理解は生まれない。そういう偏愛から出発した、物事への深い理解が、本当に自分のやりたい仕事に導いてくれるっていうのはあると思いますね。

 

自分の中に眠る「偏愛」の種を大切にしよう

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しいたけ.:その人の一番コアなところって、ツイッターみたいにオープンな場所には書きにくいというか、出てこない部分ですよね。先に話したように、本当にすごい人って、心のなかにツイッターには書けない部分を持っていて。

名越:そういう意味では、ラジオっていうのは「オープンなんだけど、クローズ感がある」ちょっと不思議なメディアで、僕も好きですね。こういうと失礼かもしれないけど、「もの好きしか聞いてない」という感覚がすごくある。だから、つい本音が出やすいんだけど、ラジオはツイッターみたいに炎上しないからいいですよね(笑)。

あと、本も、別にベストセラーじゃないけれど、意外な本が影響力を持っていたりするんですよね。単純に部数では比較できない。僕が書いた本でいうと、著者として「ああ、多くの人にメッセージが届いたな」という感じがあるのは、実は『どうせ死ぬのになぜ生きるのか』という本なんです。

タイトルからして、そんなにたくさんの人に読んでもらうようなものじゃないと思うじゃないですか。でも、結果的にはある程度売れたし、読んでくれた人からの反響も多かった。

しいたけ.:それはすごくよくわかります。「え? それが?」というのが、人によっては深く届いている、ということがありますよね。

名越:だからね、今ぐらいSNSで世界が浅くつながっている時代では、逆にある種、閉鎖的な感じがある場所に入り浸ることが必要なんですよ。

「この場にいる自分たちだけが知っている」という「秘密クラブ」感なんですよ。

しいたけ.:偏愛って「昼」じゃなくて「夜」の世界なんですよね。こっそり話さなきゃいけない感じで。

名越:そう、「それまでの自分だったらありえないような扉を一回くぐってみる」って大事なんですよ。

もうちょっとわかりやすい例でいうと、たとえば将棋とか囲碁って、ルールを知らなかったらチンプンカンプンでしょう? でも、ある程度やり込んでいる人からすると、あれほどおもしろいものはないわけです。

たぶん、強い人が将棋を指している時って、ボクシングとかサッカーとかをやっている人と同じように、脳内ではドーパミンがいっぱい出ているんだと思う。物理的には、木の駒を木の盤の上に並べているだけなのに、脳内物質がいっぱい出てる。これって、冷静に考えれば「変」じゃないですか。

しいたけ.:(笑)

名越:でも、それくらい「何を好きになるか」ということは、人によって違うんです。「将棋が大好き」っていうのは、将棋を知らない人からしたらよくわからないことなんですけど、それは別に、ボクシングでも、サッカーでも同じなんです。

そういう自分の中に眠る「偏愛」の種みたいなものをしっかりと認めて、愛することができるかどうか。それができると初めて、心って解放されるんですよ。

 

 

—Profile—

名越康文 しいたけ 対談 占い タウンワーク  townwork
名越康文(なこし・やすふみ)
1960年、奈良県生まれ。精神科医。相愛大学、高野山大学客員教授。
専門は思春期精神医学、精神療法。近畿大学医学部卒業後、大阪府立中宮病院(現:大阪府立精神医療センター)にて、精神科救急病棟の設立、責任者を経て、1999年に同病院を退職。引き続き臨床に携わる一方で、テレビ・ラジオでコメンテーター、映画評論、漫画分析など様々な分野で活躍中。
夜間飛行よりメールマガジン「生きるための対話」通信講座「名越式性格分類ゼミ(通信講座版)」配信中。取材・依頼は株式会社夜間飛行(担当:板倉)まで。
担当:板倉
mail: itakura@yakan-hiko.com

 
 
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しいたけ. 
占い師、作家。早稲田大学大学院政治学研究科修了。哲学を研究するかたわら占いを学問として研究。2014年からウェブマガジン『VOGUE GIRL』で連載開始し、毎週更新の「WEEKLY! しいたけ占い」で注目を集める。現在は「note」で月間占いやコラムを発表し、作家として活動の幅を広げている。名前の由来は、唯一苦手な食べ物が「しいたけ」であり、それを克服したかったから。近著に『しいたけ占い 12星座の蜜と毒』『しいたけ.の部屋 ドアの外から幸せな予感を呼び込もう』(KADOKAWA)、『anan特別編集 しいたけ.カラー心理学 2019 春・夏編』(マガジンハウス)などがある。

しいたけ.note:https://shiitakeofficial.com/
しいたけ.のブログ:https://ameblo.jp/shiitake-uranai-desuyo/
しいたけ.Twitter:@shiitake7919

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