声優・内田真礼インタビュー『自分の限界を決めずに挑戦することは大事だと改めて感じています』
2010年に声優デビュー、アーティストとしても2019年に日本武道館公演を成功させるなど多岐に渡り活躍中の内田真礼さん。仕事において、新人気分から徐々に責任感や自信が生まれていった経緯や、自分自身との上手な向き合い方を伺いました。11月25日にリリースする新作の制作エピソードについてもインタビュー!
楽曲の世界観を大切にするためにナチュラルな歌声を意識しました
——両A面シングル「ハートビートシティ/いつか雲が晴れたなら」では、面白い試みをされたそうですね。
今回は、「ハートビートシティ」の作詞作曲がTAKU INOUEさんで、編曲がkzさん。逆に「いつか雲が晴れたなら」の作詞作曲がkzさんで、編曲がTAKU INOUEさんという新しい形態で2人に制作していただきました。
レコーディングのディレクションは、作曲をされた方が担当するという形だったのですが、現場には2人ともいてくださって。お互いの曲を作業している時は、TAKUさんは曲に合わせて踊っていて、kzさんはテンションが上がりすぎて「尊い」しか言葉が出てこないと言っていました(笑)。そんな2人の空気感も相まって、すごく楽しみながらレコーディングに取り組めました。
——歌声にすごく透明感を感じました。
ありがとうございます! 今までの楽曲はあまり裏声は使わず、力強く歌うことが多かったんです。でも、今回は良い意味でそれを壊したくて、敢えて力を抜いて近くにいる相手に歌っているような、天井のない部屋で空に漂っていくような柔らかい感じをイメージして歌いました。
——歌詞には恋心が描かれていますね。
ピュアな感情が描かれていて、すごく共感するポイントが多かったです。歌い方に関しては、そのキュンとする感じを可愛らしくというより、少しフラットに歌うことで、ファンタジックに世界が広がる空気感が伝わればいいなと思ってレコーディングに臨みました。最後の『愛してる!』というフレーズも、敢えてセリフっぽくはせずナチュラルに歌うことを意識しました。
——「いつか雲が晴れたなら」はいかがでしょうか?
タイトルだけを見ると、“いつか”と表現しているので、まだ雲は晴れていない状態なんです。最初は歌詞全体も、今の状況を静観しているような「待ち」の姿勢が強いものだったのですが、私は状況を打破していきたいと考えるタイプなので、kzさんとも話し合いを重ねて、内田真礼の内面要素も織り交ぜてブラッシュアップしていただきました。最終的にはその“いつか”に願いを込めたものに仕上がったと思います。
——MVは2曲をつなげた映像になっていますね。
「ハートビートシティ」はセットに風船や電飾がたくさんあって、きらめきを感じるファンタジックな世界観がお気に入りです。ここで登場する風船が架け橋となって楽曲が移り替わり、映像も繋がっていきます。「いつか雲が晴れたなら」は、雨のシーンから始まって、世界がだんだんと晴れ渡っていくような演出が素敵なんです。2曲を部分ごとに繋いでいるのですが、違和感なく1つの作品として繋がって見えるところも楽しんでいただけると嬉しいです!
——MV撮影の裏話があれば教えて下さい。
大量の風船をスタッフさんが膨らませてくださっていたのですが、控え室からパンパン割れる音が聞こえてきて撮影中も割れるたびにみんなでビクッとなっていました(笑)。風船の準備も含め、たくさんのスタッフさんの労力や愛情が詰まった作品になりました!
デビュー初期は学ぶことばかりだったけれど、頼られることで徐々に責任感が生まれた
——ここからは仕事に対する向き合い方について伺いたいのですが、声優を目指したキッカケは?
もともとゲームが好きで、ゲームの世界を通して人生観が固まったようなところがあるんです。たとえば、キャラクターを通して“こういう女性になりたい”とか、将来住んでみたい部屋のイメージとか、もちろん音楽も含めて多方面で影響を受けました。なので、ゲームに関わる仕事がしたいと考えた時に、制作会社も魅力的でしたが、学生時代に演劇部に入っていたこともあり声優を目指すようになりました。
——憧れていた声優が“仕事”になったと感じた瞬間はありますか?
特別なターニングポイントというよりは、仕事を続けていくなかで少しずつ責任感が生まれてきているのだと思います。デビュー当初の自分はずっとチャレンジャーサイドだと思っていて、どの現場に行っても先輩たちがいる中で“まだまだ若造なんで学ばせてください!”という意識でいたんです。でも、徐々に現場で頼られるようになってきた時に、これまでやってきたことが仕事として認められていると感じられるようになりました。そのぶん自分のスキルを問われることも増えてきているので、これまでやってきたことがちゃんと吸収・消化できているかは、すごく大事になってきていると感じています。
——徐々に感じるようになったと。
そうですね。最初の頃は、仕事をしていても“これでお金もらっていいのかな?”と不安でしたし、数年前まではお仕事のオファーを受けても“私で大丈夫かな?”という思いが強くて。でも、今は“呼ばれたからにはそれ以上を見せよう”と考えられるようになってきました。
マネージャーに泣きつくくらいずっとバラエティ番組は苦手だった
——これまで特に大変だったことはありますか?
声優の仕事はアフレコ以外にも、TVでのCMやドラマのお仕事などもあり、そこで戸惑うことは多かったです。特にバラエティ番組は、対応の仕方が分からなくて、マネージャーさんに“自分は向いていない”と泣き言をいったこともあるくらい苦手でした。でも、先日とある番組で“バラエティクィーン”と称していただいて、周囲からイジられつつも自分自身が一番驚きました(笑)。
——自分でも知らなかった魅力が発揮されたと。
途中で諦めずチャンレジし続けて良かったと思います。バラエティだけでなく、歌うことも最初は全く考えていませんでしたが、今年は歌手デビューして6年目になります。スタッフさんたちの後押しもあってのことですが、自分の限界を決めずに挑戦することは大事だなと改めて思いますね。
ずっとこの仕事を好きで居続けるために、納得するまで向き合う
——仕事をする中で、熱量を維持する方法はありますか?
良い仕事ができた時や、ちゃんと自分が頑張ったと思えた時に“やっぱりこの仕事が好きだ!”と感じることが多いので、ずっと好きで居続けるためにも納得するまで向き合うようにしています。たとえば、原作を読み込んだ状態でオーディションを受けられた時は、落ちても悔いが残らないというか。妥協しないことと、やり切ることは大切にしたいと思っています。
——そこまで追い込むと、しんどくなりませんか?
以前は失敗から立ち直るのが大変だった時期もあります。そんな時に「失敗した自分を怒らないで、失敗を認めてもいいんじゃない?」とアドバイスをもらったことで少し楽になりました。ミスをした時、必要以上に自分を追い込むと、そのことだけに縛られて余計に何も出来なくなってしまう。それに気づかされてからは、ただ自分を責めるのではなく、何がいけなかったのかを冷静に振り返って、次に活かすことを考えられるようになりました。
——ストレス発散方法はありますか?
何をやっても上手くいかない時は食べます! お菓子を買い込んで袋も全部あけちゃって、とことんダメな自分を演出するんです(笑)。それで、“ここまでダメなんだもん、もういいや!”って極限まで発散したら、翌日からは“もう前を向くしかないよね”と言い聞かせます。大事なのはその時の爆買いとか爆食を後悔しないこと(笑)。“もうダメな自分は終わったから次に向かおう”とリセットしています(笑)。
背筋を伸ばして笑顔で現場入りすることで弱気な自分と戦える
——では、最後に夢を追いかける読者にメッセージをいただけますか?
新しいことを始めるには勇気がいると思うのですが、とにかく行動を起こすことが大事だと思っています。何かやりたいことがあったらやってみて、ダメだったら次を探せばいいと思うんです。私も上手くいかなかったことは、たくさんありますが、その時は“自分がダメだ”と思うのではなく“向き不向き”や、出会いのタイミングだと捉えるようにしています。
——そう思えば、傷つくことを恐れず飛び込めそうですね。
そうですね。それと、もう1つは笑顔でいること。私自身もですが、不安な表情をしていると弱気な自分が出てしまうので、現場には必ず背筋を伸ばして笑顔で入っていくことを心がけています。それだけで、自分自身の気持ちも、相手に与える印象も違うと思うので試してみてください!
内田真礼(うちだ・まあや)
2010年声優デビュー。2012年に「さんかれあ」、「中二病でも恋がしたい!」と立て続けにヒロイン役を演じブレイク。 2013年“声優アワード新人女優賞”に輝く。 数多くの作品でメインキャラクターを担当。本業である声優業と並行して、2014年TVアニメ「悪魔のリドル」OPテーマ『創傷イノセンス』にてアーティストデビュー。2019年元日には日本武道館での単独公演を実施した。
◆内田真礼 OFFCIAL SITE:http://uchidamaaya.jp
◆内田真礼 Official Twitter:@maaya_taso
企画・編集:ぽっくんワールド企画 撮影・河井彩美 取材・文:原 千夏