俳優・東啓介さんインタビュー 「周りの人とコミュニケーションを取ることによって成長できると思う」
ミュージカル俳優として活躍中の東啓介さん。今年1月からスタートしたテレビドラマ『ウチの娘は、彼氏が出来ない!!』では渉周一役を好演し話題になっています。現在3月27日からスタートするBroadway Musical『IN THE HEIGHTS イン・ザ・ハイツ』の稽古が忙しい中、今回の舞台に向かう意気込み、仕事観について話を伺いました。
ベニーという役を通して、作品をご覧になっている方の前に進む力になれたら、と思っています
――現在稽古真っ最中の『IN THE HEIGHTS イン・ザ・ハイツ』、こんなメッセージを届けられたら、と思ってることはどんなことでしょうか?
この作品は、家族との関係や友達、恋人との関係など、そういう日常を大事にしているので、そこにある人と人の関係性を感じていただき、人との身体的な距離を取らなくてはいけなかったこの1年だからこそ、人との触れ合いや関わりを思い出していただけたらいいな、と思っています。
――今回のベニーという役に関して、ここを大事に演じたいと思っていることは?
ベニーは主要なメンバーの中で一人だけ人種が違うので、そこをどう表現していくか、強く意識しないとな、と思ってます。人種や異文化はこの作品で大事な意味を持つので、そこはしっかり伝えないと、と思います。
――今回はラップへの挑戦もあるそうですね。
ラップは初めて挑戦するんですけど、なかなか口が回らなくて、大変だなと実感してます(笑)。前回に引き続きウスナビを演じる(Def Techの)Microさんのラップを見本に頑張って練習中です。
――東さんというと、オンエア中のドラマ『ウチの娘は、彼氏が出来ない!!』で注目を集められていますが、映像の世界を経験されて、またホームグラウンドでもある舞台に戻ってこられて、感じ方が変わった部分はありますか?
ありますね。以前は、体を使って表現するということに重きを置いていたんですけど、映像を経験して、あえて動かないやりとりも意味があるな、と感じてます。よりリアルな雰囲気や表現を意識するようになりました。まだそれが正解なのかどうかはわからないですけど、いろいろな発想を具体的に持てるようになったのは良かったなと思います。
――ドラマという場を経て、さらに東さんの舞台が楽しみになります。
こうやって、連続ドラマの作品に出演できたというのはとてもありがたく、僕にとっては大きな宝物になったんですが、大きな壁というのは当然あるので、そこは自分をしっかり見つめて進んで行きたいと思っています。舞台に関してももっともっとチャレンジして、いろいろな方とめぐり合って、作品の中で一つの役として存在できるようになりたいです。今回の『IN THE HEIGHTS ~』では、ベニーという役を通して、作品を通して、ご覧になった方の前に進む力になれたら、と思っています。
壁に当たったときは、周りの人に相談に乗ってもらって、乗り越えていく
――先ほどのラップも、そしてドラマもそうですが、新しい世界に挑んでいく時、どんな準備、心構えをされますか。
新しいものに挑む時は、怖かったり、不安というのはありますけど、初めてのことはできないのが当たり前だし、失敗して気づくこともありますから、まずは空っぽな状態で、自分ができることをとにかくやってみる。で、失敗したら、そこを課題にして進んで行く。そうすると、複雑な道が1本の道になっていくのかな、って思ってます。
――失敗も経験。
初めから完璧はないし、そこがないと進めないと思うので。
――ちなみに、壁にぶち当たった時はどうやって乗り越えますか?
一番わかりやすく自信を持てるのは「人に聞く」ということだと思います。舞台の稽古中だったら、演出家さんに素直に聞く。で、言われたことをヒントに自分の中で考えて、一個一個乗り越えていく。シンプルだけど自分にとってはそれが一番納得のいく乗り越え方だなと思っています。絶対壁にはぶち当たるんですよね、毎回。でも、周りには先輩、後輩、同期がいるので、そこに頼ったり、相談に乗ってもらったりして、一緒に乗り越えていく。やっぱり、一人じゃどうにもできないと思います。
――俳優を始めたばかりの頃から人に尋ねる、というのはできました?
最初の頃はすべて自分で考えて、頑張ろうと思っていました。でも、周りの人にアドバイスをもらって、選択肢を増やして、そこから自分なりの答えを出したほうがいいということに気がついたんです。
落ち込んだら、とことん引きずればいい。それがバネになるときもある
――人に聞いた時、考えていたことと、全く違う答えがくる場合もあると思うのですが、そういう時は?
そういう時は、なんでそうなのか、を考えますし、聞けるなら、自分はこういう理由でこう思ってたんですけど、どういうことですか?と、ちゃんと聞くようにしています。ただ、いろいろな演出家さんがいらっしゃるので、質問しても「自分で考えろ」というスタンスの方もいるので、そういう時は自分のフィルターを通して、自分だったらどうするかを考えて答えを見つけていく形になりますね。なんとかそれで答えにたどり着く。でもやっぱり人に聞けない時はすごくしんどいですよね。
――そうやって仕事一つ一つ超えていく中で、東さんにとっての仕事の喜びを感じる瞬間は?
やっぱり観てくださった方に「生きる活力になったよ」、「力になった」と言っていただけると、よかったなと感じます。それは言葉じゃなく、舞台上にいる時に感じ取れることもあるんですよね。今の拍手すごいな、とか。(気持ちが)前のめりになってくれてるな、とか。それは共演者とも話しますね。「今日すごいですね」って。それを感じた時は何物にも代えられない喜びがあります。
――うまくいった、良くやったという時の、自分へのご褒美というのはありますか?
ご褒美……意外とないかもしれないです(笑)。良かったというその場の喜びを感じてそのまま次へ、っていう感じで。
――逆に、落ち込んだ時の東さんの切り替え方法は?
落ち込んだら、そのまま落ち込むタイプなんですよね(笑)。でも、引きずったら、とことん引きずればいいかな、という感じですね。それがバネになったりするときもあるので。
――考え込む、ということもあるんですか。
あります。考えすぎて頭の中ぐるぐるまわって、結局何も考えてない、みたいのもあるんですけど(笑)。
――考え抜いて切り替える。
そうですね。ぐるぐる回って、すごい考えて、悩むんですけど、その時考えたことって、意外と次の現場に行ったときに生きることもあるんですよね。失敗しても、無駄になることはないな、って思います。
先輩も後輩も年齢に関係なく、わかり合っていくことが大事
――この世界に入られて、俳優を「仕事」として意識したのはいつ頃ですか?
実は、今もあんまり「仕事」とは考えてないかもしれないですね。人と付き合う、人と何かを作る現場という感覚で。「仕事」って考えると作業的になっちゃいそうなので、それよりも、どんな時でも人とコミュニケーションを取る、先輩でも後輩でも年齢関係なくわかり合っていく、というのがいい作品作りに繋がるんじゃないか、と思ってます。
――この記事はアルバイト、就職活動を控えている人も多くご覧になっているので、ぜひメッセージもいただければと思います。
アルバイトは僕もしたことがあって、「今日はめんどくさいな」「遊びたいな」と思ったりすることもあると思うんですけど、そういうことを考える前に、なんでこのバイトしてるんだろう、その最初の目的みたいなものを思い出すのが大事じゃないかなと思います。そこを考えると、気持ちも変わってくるし、場の雰囲気もよくなると思うんですよね。
――気持ちの持ち方で変わりますよね。ちなみに何のアルバイトをされてたんですか?
コンビニです。人があんまり来ないコンビニで、人が来ないのに焼き鳥を焼き過ぎて怒られたのを覚えてます(笑)。
――それも経験のひとつ。
そうですね(笑)。あとは、やっぱり分からないこと、疑問に思ったことは人に聞くこと。一個一個確認することで、先輩のアドバイスももらえるし、さらにコミュニケーションを取ることによって成長できると思うんです。それを何か面倒くさいな、って切ってしまったら、そこで終わってしまう。経験を積み重ねれば人としての厚みも生まれるんじゃないかな、と今は思っています。
東啓介(ひがし・けいすけ)
1995年7月14日生まれ東京都出身。2013年俳優デビュー。その後『刀剣乱舞』などの人気舞台への出演を経て、近年はミュージカルを中心に活躍。今年1月13日からはテレビドラマ『ウチの娘は、彼氏が出来ない!!』に渉周一役として出演など活動の幅を広げている。3月27日からはBroadway Musical『IN THE HEIGHTSイン・ザ・ハイツ』にベニー役として出演する。
◆公式Twitter: @keisuke_higashi
◆公式Instagram:@keisuke_higashi_official
企画・編集:ぽっくんワールド企画 撮影:河井彩美 取材:鈴木邦昭 文:田部井徹