石田亜佑美(モーニング娘。’21)インタビュー「何ごとも楽しまないと続けられないから、苦手なことも見方を変えて楽しむようにしています」
圧倒的なダンス力を持ち、モーニング娘。’21のサブリーダーを務める石田亜佑美さん。10期メンバーとして加入してから今年で10年。負けず嫌いだったのが、グループ全体のことを考えて後押しに回ったりと人間的な成長も含めた足跡、3 年4ヵ月ぶりのアルバムのこと、そして今後の展望まで聴きました。
「上手くないと目立てない」と闘争心が生まれて
――石田さんは中3でモーニング娘。に入る前に地元で活動していた頃から、「ダンスが上手い」と評判だったと聞きます。最初はチアダンスをやっていたんですよね?
小学1年生でチアダンスと出会いました。友だちがやっていたので「私も」というのがきかっけで、最初は「上手くなりたい」という意識はなくて。チアダンスは笑顔で楽しく踊る競技なので、その楽しさを大事にしていました。
でも、6年生で楽天ゴールデンイーグルスのジュニアチアに入ったら、フォーメーションを組むようになって、誰が真ん中になるとか選抜もあったんです。そのオーディションを経験していくうちに、「上手くないと目立てないんだ」と闘争心を掻き立てられました。
――モーニング娘。に10期メンバーとして入って、ハロー!プロジェクト独特の16ビートを細かく刻むダンスも、すぐ習得できました?
ずっとダンスはやってきましたけど、当時はまだ中3で特別なクセは付いてなかったので、ハロプロのダンスにもすぐ馴染めました。
チアではVの字に腕を伸ばしたりするとき、最短距離で直線上に持って行くように言われていたんですね。そういう素早い動きやキレは、私の個性として残っています。
ダンスは最初から「負けねえ」と思ってました(笑)
――先輩たちのレベルの高さに驚愕したりもしませんでしたか?
先輩方の表現力は素晴らしくて勉強になりましたけど、ダンスに関しては加入したときから「負けねえ!」と思っていました(笑)。最初の頃は若かったし、元気いっぱい踊っていれば「上手いね」と言ってもらえて。でも、4年くらい経って、「ただ踊るだけでは人を感動させられない」と気づいてからは、結構悩みました。
――「基礎から抜け出せない時期があった」と話してましたね。
教えてもらった振付は正確に踊りたい。でも、それだけだとただの振り写しで、個性がない。自分の表現を加えないといけないけど、どうしたらいいのかわからなくて。その頃はかなり焦ってました。
でも、年齢を重ねるごとに、女性らしさや大人っぽさがちゃんと身に付いてくれたので、悩むことがなくなりました。ダンスで自分をどう見せたいか、わかってきて。だから、当時の自分に「焦ることはないよ」と言ってあげたいです。
「私がやる」からメンバーをどう活かすか考えるように
――石田さんは当初から負けず嫌いだと、自分で言って周りからも言われてました。それも小さい頃からだったんですか?
小5くらいになって、目立ちたいから学級委員をやったり、体力測定の20mシャトルランで一番になろうとしてました(笑)。私は動かずに練習することには向いてなくて、ピアノも習っていたけどやめてしまったり、勉強に集中するのも苦手でした。でも、ダンスのように体を動かして、ガッツで乗り越えられるものは頑張ってきました。
モーニング娘。のリハーサルでも、レッスン室は鏡張りで、みんなのことが見えるんです。私は自分より、他のメンバーがどう踊っているのかを見ていて。ちょっとした角度の違いなどから、「自分のほうがカッコ良く踊るには、こうすればいいかな」と探っています。
――それだけ負けず嫌いだと、「負けた」と思ったときはかなり落ち込んだり?
最近は落ち込むことはそんなにありません。ハロプロのツアーで「失敗した」と思ったときも、つばきファクトリーの秋山眞緒ちゃんが隣りに来て、「みんながいるから大丈夫ですよ」と言ってくれたのが、すーごくかわいくて(笑)! 後輩の子たちと話すのは好きで、嫌な気持ちも忘れられます。
負けず嫌いの方向性も変わってきたかもしれません。昔は本当に何もかも負けたくなくて。「これもあれも私がやりたい!」と思っていたんですけど、後輩が増えて、みんなの魅力もわかってきたので、たとえば森戸知沙希ちゃんの顔の良さをどんどん出してほしいとか思います。
同期の佐藤優樹ちゃんの自由な感じも、昔は「もっとしっかりやろうよ!」と思ってケンカばかりしてましたけど(笑)、グループの1人のメンバーとしてはめちゃくちゃ面白いと、やっと気づいたんです。じゃあ、そういうメンバーを活かすためにどう回すかで、自分は目立とうとするようになりました。
先輩たちがしてくれたことのありがたさが今はわかります
――自分が前に出ることより、グループとしてのバランスを考えるようになったんですね。
本当にそうです。先輩方もたぶん、子どもだった私たちをうまく回してくれていたのが、今の自分の立場になるとわかるんです。私も今は先輩として、後輩たちにそういうことをしてあげないといけないと感じています。
――2018年にサブリーダーになったことも大きかったですか?
大きいかもしれません。昔から仕切りたがりではあったんですけど、最年長でも期が一番上なわけでもないので、いろいろ指図したらウザいかと思っていて。それがサブリーダーになったことで「言っても大丈夫」と自分に言い聞かせて、いろいろ回せるようになりました。
――同期でバチバチしていた石田さんたちと比べると、若い15期メンバーに気質の違いを感じたりもします?
それは12期から感じてました。10期が特殊だったのかもしれませんけど、バチバチしていたのを表に出して、それをファンの方が面白がって応援してくださったのは、モーニング娘。らしいと思ってました。
後輩たちは「みんなで『せーの』で行こうね」というふうに見えます。そういう時代なのかもしれないし、切磋琢磨してもらえたらいいですけど、無理強いして競い合わせようとは思っていません。
ファンの皆さんがかわいくて仕方ないです(笑)
――握手会とかでのファンとの接し方について、意識していることはありますか?
昔はファンの方も、私のことをキツい子と思っていたみたいです(笑)。いわゆるアイドル的な対応と違って、「『好き』と言って」と言われたりすると、一番困るんですよね。そういうのは面白くかわしますけど、最近は「友だちになりたい」みたいな女の子もよく来てくれます。
テレビに出させていただいたりすると、ファンの方は距離を感じるらしいです。でも、私はもっと近い存在でありたいと思っていて。いつも「気兼ねなく遊びに来てほしい」という気持ちでいます。今はファンの皆さんがかわいくて仕方ないんです(笑)。私がちょっと、流行りの「キュンです」をやったら、すごく喜んでくれたりするのがかわいいなと。
――お父さんに近いくらいの年齢のファンの方もかわいいと(笑)?
はい(笑)。せっかく私と出会ってくださった方たちなので、皆さんに幸せになってほしいと思って活動しています。ライブも最近はMCでゆっくり喋れる時間がないので、パフォーマンス中の目線やアクションで伝えるしかなくて。楽しそうにしてくださってるファンの方がいると嬉しくて、笑顔を向けたくなります。
――アイドル活動全般でのポリシーもありますか?
自分がアイドルを応援する側だったら、どんな子に惹かれるかを想像します。それで辿り着くのは、ガムシャラな人がいいなと。失敗しても一生懸命頑張ったところを見せてくれたら、失敗すら愛おしい。「自分も頑張ろう」と思わせてくれる。そういう存在が、私にとってのアイドル像です。
世間の方がイメージするような、フリフリ衣装でかわいくステップをするアイドルというより、1人の人間として尊敬されないと飽きられてしまう。かわいいことはもちろん大事ですけど、他にかわいい子が出てきて、そっちに行かれてしまったら寂しいじゃないですか。そうではなくて、深いところまで知ってもらって好きになっていただけるように、人間力を上げていきたいです。
現状打破のメッセージに泣きそうになります
――アルバム『16th~That’s J-POP~』の中で、今の石田さんの心情と重なる曲はどれですか?
「恋愛Destiny~本音を論じたい~」が大好きです! 私の涙腺のスイッチを押してきます。聴いていてウッと泣きそうになるメロディなんですよね。歌詞もいただいた瞬間から好きでした。“現状を打破しないのか? やりたいことをやらないのか?”みたいなメッセージをすごく感じて。
――恋愛ソングに見えて、そういう色合いが強い曲ですね。
すぐ、つんく♂さんに「めちゃくちゃ好きです!」と連絡させていただきました。そしたら、つんく♂さんも「この曲は特に9・10・11期に理解して歌ってほしい」と。その言葉も重なって、泣きそうになるんです。別に泣かせにきている曲ではないですけど。
サビのキーの高いところで、<寂しくて涙が止まんない こんな好きなのになんだろう 変だよ>と言葉を押し続けていて、そこも涙腺にきます。熱い想いをすごく感じて、歌っていると泣けてくるので、本当に危ないんです(笑)。この想いを伝えられるように歌いたいと思っています。
――ユニット曲の「信じるしか!」はいかがですか?
初めて聴いたとき、「何ですか、これは?」と思いました(笑)。ユニットのメンバーを先に見て、カッコイイ曲が来るのかと思っていたら、「砂漠?」みたいな感じだったから、ちょっと戸惑いました
構成も変わっているんです。どこがAメロで、どこがサビなのか。最後もAメロで終っていて。でも今は、聴けば聴くほど味が出て、好きになる曲だと思っています。選ばれたメンバーの声もすごく活きていて。特にオチサビの岡村ほまれちゃんの<わかるでしょ!?>というパートは、歌の使われ方もエフェクトの掛け方も抜群のアクセントになっています。ユニット曲ならではの面白さがありますね。
面白いアイデアをビジネスにできたら
――モーニング娘。’21での活動以外に、石田さんの個人的な夢はありますか?
今回のアルバムでも、こんなに良いものができたから、全国の人に届けたいと思うわけです。じゃあ、どうしたら届くのか? 広め方がすごく大事だと最近考えています。どんな宣伝方法がいいのか? そういうビジネスみたいなことって、すごく面白いと思うんです。経営やお金の勉強をしたことはありませんけど、アイドルの枠に捉われず、面白いアイデアを仕事にしていけたら楽しいだろうなと、特に自粛期間を経て思うようになりました。
――そうした夢を叶えるために、大事なことは何だと思いますか?
楽しむことですかね。ダンスもモーニング娘。の活動も、楽しんでなければここまで続けてこられませんでした。世の中には楽しくないお仕事もあると思います。苦手なことを無理して好きになれなくても、見る方向性を変えたら、意外と面白くなる気がします。
私はずっと「ダンスが好き」と言い続けていた分、「じゃあ、歌は?」となってしまって。歌うと緊張が表情にも出て、たぶん楽しそうに見えていませんでした。でも、逆に顔だけでも楽しそうにして歌っていたら、今は歌も心から好きになりました。
本気でなくても上辺だけでも好きになったら、頑張れることはたくさんあると思います。「とりあえずパパッとやろう」みたいな軽い気持ちでもいいから、何とか楽しんでみる。それがいつか夢に繋がると、私は信じています。
石田亜佑美(いしだ・あゆみ)
1997年1月7日生まれ。宮城県仙台市出身。2011年に「モーニング娘。10期メンバー『元気印』オーディション」に合格。2012年に初参加のシングル「ピョコピョコ ウルトラ」が発売。2018年12月よりサブリーダーに。『あらあらかしこ』(仙台放送)の月1回コーナー「石田亜佑美が行くっ!」に出演中。
石田亜佑美 OFFICIAL Blog:https://ameblo.jp/morningmusume-10ki/theme-10059753284.html
石田亜佑美 OFFICIAL Instagram:@ayumi_ishida.official
モーニング娘。’21 OFFICIAL SITE:http://www.helloproject.com/morningmusume/
企画・編集:ぽっくんワールド企画 撮影:河野英喜 取材・文:斉藤貴志 衣装協力/アナナティシャイム