スマートフォン用サイトを表示

アルバイトや転職に役立つ情報が満載!最新のお仕事ニュースなら【タウンワークマガジン】

2022年01月11日

鞘師里保インタビュー「将来の心配をしたり過去を悔やむより、今この瞬間にできることを考えます」

鞘師里保 インタビュー タウンワークマガジン townworkモーニング娘。の絶対的エースだった17歳のときにグループを卒業し、ニューヨークで2年間のダンス留学をした鞘師里保さん。昨年、ソロアーティストとして5年半ぶりに音楽活動を再開しました。留学中の話から作詞も手掛けた2ndEP『Reflection』のことを聞くと、曲に込めた前向きな意志も浮かび上がりました。

 

ニューヨークで失敗を怖がらなくなりました

――ニューヨーク留学中はアパートに住んでいたんですか?

そうです。向こうに行く前に、自分で(ネットの)掲示板でアパートを探して、Zoomで交渉して契約しました。

――最初は言葉での苦労もありませんでした?

ありました。語学学校で3ヵ月くらいは、英語で意志の疎通がまったくできなくて。その中で、いろいろ作戦を立てました。言葉がわからないときはこう聞き返すとか、道を教えてもらうときはこう聞くとか、辞書で調べてメモしておいたり。そうやって凌いでいるうちに耳が慣れて、勉強の成果もあって話せるようになってきた感じです。

――生活で困ったこともありました?

ぼったくりに巻き込まれそうになったり、クレジットカードをなくしたりしました。でも、そういうハプニングも楽しめるようになったんです。

私はすごく怖がりで、失敗しないように行動するタイプですけど、前に進むためには失敗しないと通れない道もあって。「まあ、いいか」と割り切って、辿り着けた境地もありました。私にはトライアル&エラーが向いていると、ニューヨークでわかりました。

 

自分で導き出した表現はすべて正解

鞘師里保 インタビュー タウンワークマガジン townwork――改めて伺いますが、モーニング娘。を17歳で卒業したのは、どんな心境からだったんですか?

この先の人生を考えると、今の鞘師里保のまま成人していいのかと、漠然と不安だったんです。パフォーマンスは楽しかったけど、趣味ではないので。曲を伝えるために上辺だけの言葉にならないことを、すごく大事にしていて、そのためには自分の中身を詰めていかないといけない。17歳の私はそう思っていました。

――卒業と留学はセットと考えていたんですか?

そうです。違うフェーズに進んで、新しい価値観を得ないといけないと思っていたので。私の中では卒業=留学でした。

――ダンスに関しては、日本のアイドル界のトップパフォーマーだった鞘師さんとしては、ニューヨークでもレベルの高さに驚くほどではなかったですか?

表現の仕方がすごく勉強になりました。テクニックも大事ですけど、マインドの問題が大きくて。ひとつの正解があるわけでなく、みんなが違う表現をしていて、その人が導き出した答えがすべて正解。そういう空間を目の当たりにして、頭が柔らかくなった気がしました。

――先生に言われて響いたような言葉もありました?

私は集団行動が得意なわけでなくて、留学先でも人と壁を作って接していたところがありました。それがレッスン中のパフォーマンスにも出て、先生に「もっとできるのに」とずっと言われていたんです。

それがあるとき、踊っていたらパッと解放されて。先生に「やっとポケットの中から出てきたね」と言われたのが、とても印象的です。「ずっと隠れていたでしょう」と。

――その解放されたときは、自分の中で何か変化があったんですか?

急に「今かも」みたいな瞬間が訪れました。自分でも遠慮の壁を取っ払わなきゃと思っていたら、そのときに「今ならできる」という感覚になったんです。レッスンの映像を見比べると、動きが前と全然違っていて。本当にテクニック以上に心が表れているのがわかりました。

 

苦しくても本質に向き合うところに強さがあって

鞘師里保 インタビュー タウンワークマガジン townwork――2ndEP『Reflection』は1st『DAYBREAK』で昇った太陽からの光の広がりをイメージしたそうですが、最初からそういうテーマがあったんですか?

楽曲を作り始める前にタイトルを先に決めました。次のアルバムをどうしようかという話になったとき、光が大地に広がって、いろいろなものを照らしているイメージがパッと頭に浮かんだんです。

――そのテーマに合わせて曲を作っていって?

直接“反射”に関わるわけでなかったりもしますけど、導かれるように曲ができていきました。

――曲の作り方は、前作同様に詞先、曲先とかいろいろだったんですか?

今回は基本的に曲先です。でも、作家の皆さんとは最初から打ち合わせをして、「こういうメッセージを伝える曲を作りたいんです」と話させていただきました。

詞は1人で静かに書いた曲もあれば、共作の作詞家さんとスタジオで一緒に考えたりもしました。曲を流しながら、「ここでこんなことを言えるといいね」となって、私がリズムに合う英語を提案したり。

――最初の段階から「こういうものは入れたい」と思っていた曲もありますか?

「Winding Road」はメッセージをまっすぐ伝えたくて出来上がりました。今は誰でも声を上げやすいツールがありますけど、気軽すぎて、人の気持ちを考えずにジャッジすることも増えていると思うんです。

――SNSとか、そうですね。

でも、たぶん昔から、そういうことはあって。口調が強かったり、態度に圧がある人の意見が通って、言いたいことを言えない人もいる。だけど、心の中には自分の意志があって、向き合おうとしていたり。私にもそういう経験はありました。

一方で、強く言うことで自分を保っている人もいる。それで傷つく人が増える連鎖もある中で、パッと見で本当の強さ、弱さがわかるわけでない。苦しくても本質に向き合うところに強さがあるというメッセージを、この曲に乗せています。

――詞に自分の内面を出すのは変わってないようですね。

そこは引き続きですけど、私の感覚では、自分だけのこととか一直線にものを見ていたのが、ちょっと幅を持たすことができたと思ってます。

――全体的に詞はスムーズに書けたんですか?

相変わらずレコーディングギリギリになってしまったり、録り直した曲もありました。ただ、前回は言いたいことをバーッと書くだけでも労力をかなり使ったのが、1曲の中でストーリーを構成するのは多少スムーズになったと思います。

 

「この人なら自分を見せられる」という心の叫びを歌に

鞘師里保 インタビュー タウンワークマガジン townwork――恋愛ソングの「Melt」は新境地ですね。

かなり。表現の幅を広げたくて、ロマンス的な要素を入れたいと思ったんです。だけど、私1人でそれを作り上げるには、いろいろなピースが必要な気がして。作曲のMichael Kanekoさん、共作詞のさらささんと初めてご一緒して作っていきました。

私の経験はさておき、主人公の女の子の性格は私から生まれているんですよね。自分は自分、人は人。自分のテリトリーがあって、人に踏み込まれたくないという。でも、ときめいた相手に対して、「この人になら自分のことを見せられるかも」と思っています。

――<未開の私を見破って>と歌っていますね。

「あなたなら私のことを溶かせるんじゃない?」みたいな想いを、心で叫んでいる感じを表しました。

――歌い方もソウルフルでこれまでの鞘師さんになかった感じです。試行錯誤はありました?

トラックがあって歌詞があって、歌ったら意外と自然にこうなりました。自分でイメージした通りです。最初に曲だけ聴いたときは、一瞬「難しいかも」と思ったんですけど、歌詞を乗せたらしっくりきました。前作のタイミングだったら、この曲には向き合えなかったかもしれません。今だから歌えた曲です。

 

途中を飛び越えず一歩一歩進むのが理想への近道

鞘師里保 インタビュー タウンワークマガジン townwork――1曲目の「Go-by」には<同じことまた繰り返してる>というフレーズがあります。そういう感覚は今もありますか?

気をつけてないと、そうなることは本当に多くて。何かをやろうとしたとき、その選択をした将来を先回りして心配したり、逆に過去を後悔したりで、今この瞬間を見られてないことがあるんです。純粋に今が楽しいかは置き去りにして、のちの損得を考えてしまう。

「Go-by」ってハイフンが付いたひと言だと“見て見ぬふりをする”という意味があるんです。周りだけ見て自分の核は見てない、というニュアンスのタイトルにしました。

――この曲には<ぼんやり見える理想の私>というフレーズもありますが、実際に鞘師さんの理想は見えてきていますか?

その<理想の私>にもふたつの意味があって。辿り着きたい自分と、届かない虚像の自分。実直にコツコツ積み重ねていくか、遠いゴールを見て途中を飛び越えていくか。一歩一歩行ったほうが絶対に理想への近道のはずなのに、ただ遠くに行きたがっていると、なかなか進まない。そんなことを2番の歌詞で表しています。

――それは夢を叶えるために、大事な考え方かもしれませんね。

自分に言い聞かせている曲でもありますけど、夢や大きな目標があるのは素敵なことだと思うんです。でも、「あそこに行きたい!」だけでなく、そこに行くためには自分がどういう人間であるべきか、どんな努力をするべきか、計画を立てたり、毎日できることを考えないといけない。先を見すぎることは遠回り。今を見ることが大事だと思います。

 

悩むことより自分を卑下するのが良くなくて

鞘師里保 インタビュー タウンワークマガジン townwork――「Baby Me」は幼い頃の自分に歌っている感じですか?

「私は何もできない」とネガティブになったり、自分を押し殺している人は多いと思うんです。それで苦しくなったり落ち込んだりして、「自分なんか」という言葉を投げ掛けてしまう。

でも、目の前に2歳か3歳の自分がいたら、そんなこと言える? という曲です。未来の自分が卑下しているのを見せるなんて、かわいそうじゃないですか。小さい頃の自分に「こんな大人になりたい」と思われる人生を進みたい。そういう想いを込めました。

悩むことより、自分を卑下することが良くないと思うんです。人に悪口を言われたら傷つきますよね。卑下するのは自分に悪口を言うのと同じ。直接そう言えば理解してもらえるかもしれませんけど、「幼い自分には言えないよね」というのが、「Baby Me」で私が導き出したテーマでした。

――鞘師さん自身は今は落ち込むことはないと?

ありますけど、そういうときに自分をいじめないようにします。たとえば、お仕事でうまく話せなかったら「語彙力がない。勉強してない。私ってダメだ」と、やっぱり思いがちなんです。

でも、それはやめて、「反省できたら次に活かそう」という話を自分自身にする。うまくいかなかった自分にどう対応するかで、未来が分かれると思うんです。常に“今できること”をして、良い道順で考えるクセがつけばいいなと、日ごろから心掛けています。

 

■Profile
鞘師里保
(さやし・りほ)

1998年5月28日生まれ。広島県出身。
2011年にモーニング娘。の9期メンバーオーディションに合格してデビュー。2012年よりセンターを務め、2015年に卒業。2021年にソロアーティストとして1stEP『DAYBREAK』をリリース。女優としてドラマ『モモウメ』(Hulu)などに出演。『1st LIVE TOUR2022 Reflection』を開催。1/15(土)中野サンプラザ、1/16(日)Zepp Osaka Bayside、1/23(日)BLUE LIVE HIROSHIMA

◆OFFICIAL Twitter:@sayashi_staff
◆OFFICIAL Instagram:@riho_sayashi_insta
◆OFFICIAL SITE:https://rihosayashi.jp/
◆OFFICIAL YouTube CHANNEL:https://www.youtube.com/channel/UCz7dJX1Q68hzLaRjCoTEesA

企画・編集:ぽっくんワールド企画 撮影:河野英喜 取材・文:斉藤貴志

早速バイトを探してみよう