宮瀬玲奈(22/7)インタビュー「夢だけでなく視野になかったことも全力でやって、人生の力になりました」
デジタル声優アイドルプロジェクトとして、リアルとキャラクターで独自の活動をしている22/7(ナナブンノニジュウニ)。2016年の結成時からのメンバーで、個人でも舞台などで活躍中の宮瀬玲奈さん。新メンバー8名が加入した14名体制での初シングル発売を前に、語ってもらいました。変わらぬ素朴さで穏やかな口調ながら、話の内容は力強いものでした。
自分も誰かの生きる力になれたらと思って
――学生時代はどう過ごしてましたか?
ずっと女子校で温かく育てられました。目立つタイプではなく、教室の隅でひっそりしていましたけど、友だちとごはんを食べるのは楽しくて、勉強も頑張っていました。
――人前に出るタイプではなかったと。
でも、小学生のとき、運動会で白組の応援団長をやりました(笑)。推薦形式でなぜか選ばれて、それなら頑張らなきゃいけないと、責任感が生まれました。
――ナナニジのオーディションは、映画やドラマで心を動かされて「発信する側なりたい」と受けたそうですね。
堺雅人さんと山田孝之さんの『その夜の侍』という映画が大好きでした。ひき逃げ事件を巡るお話で、派手な作品ではないですけど、自分の中に生まれた大きな感情は何だろうと考えたら、役者さんの力だと思ったんです。
堺雅人さんの他の作品も観たら、放送当時は観てなかった『半沢直樹』もすごく面白くて。演技のうまい方がたくさん出演されて、主人公と周りの人たちの絆に感動しました。それで、私も誰かにそう感じてもらえる人になりたいと、思うようになりました。
――最近で影響を受けた作品もありますか?
洋画を観るようになりました。レオナルド・ディカプリオさんの『シャッターアイランド』がすごく好きです。以前は洋画は近寄りがたいイメージでしたけど、スケールが大きいし、邦画とはまた違う感覚があって視野が広がりました。
現実には辛いことや悲しいこともありますけど、私自身、作品やアイドルさんを見て、前向きになれたことは多くて。自分も誰かの生きる力になれたらと思って頑張っています。
初ライブで「無理だ」と思っても応援が力になりました
――ナナニジに入る前は歌やダンスの経験はなかったんですよね?
全然なかったです。アイドルになろうとは思っていなかったので。でも、運動神経は悪くないほうで、ダンスはレッスンで感覚が掴めました。自分の成長を発見できるのが嬉しかったです。
演技レッスンでは、まず声優のお芝居を教わりました。私は映画でナチュラルな演技を観てきたせいか、先生に「もっと大げさに」と何度も言われたのを覚えています。声優は声だけで大きく演じないといけないので。
それが難しくて苦しい思いもして、家でずっと泣いていたり、レッスンに行くのがイヤになったりもしました。だけど、振り返ればすべてがプラスになっています。
――活動が始まってから感動したことはありますか?
私は演技を中心に考えていましたけど、声優やアイドルとして歌ったり踊ったり、多方面でやらせていただいているのがすごくいいなと。特に初ライブ、初握手会、初舞台と、人生で初めての経験は鮮明に覚えています。緊張して「もう無理だ」と思っていても、皆さんの前に立つとできてしまう。応援が私の力になるんだと実感しました。
ディファ有明でライブをしたときは、新曲だった「シャンプーの匂いがした」で会場の皆さんがペンライトをパーッとピンクにしてくれて、すごくきれいでした。両親も福岡から来てくれて、応援してくださる方々も見てもらえて嬉しかったです。1人で東京に来たから、安心してもらいたかったので。
ハードスケジュールで1曲の振りを10分で覚えました
――活動が多岐に渡るだけに、2年前、宮瀬さんが出演した舞台の千秋楽の1週間後に、ナナニジのライブがあったりもしました。
めちゃめちゃ大変でした。初舞台で右も左もわからない中、毎日が全力投球で何とか千秋楽まで終わったら、次の日から休む間もなくライブのリハ。その時点で、もう通しリハに入っていて、みんなは振りが全部入った状態だったのに、「私だけができないんだ…」とすごく落ち込みました。
でも、メンバーもスタッフさんも「それで当たり前だから」と言ってくれて。休憩時間に振付師さんに教わりに行って、1曲を10分で覚えました。そのあと、みんなに入って踊れたので良かったなと。
――その曲に掛かったのは10分でも、それまで積み重ねてきたものがあってこそでしょうね。
そうしたことを経て、「苦しいスケジュールでも頑張ればできる」と思ったら、少し気が楽になりました。この7月も6日が舞台の千秋楽、15日がツアー初日でしたけど、ファンの皆さんの期待に応えるためにも、全力でやり遂げたいと思いました。
答えの出ない悩みを考えてしまうのは歌詞と同じです
――そうしたお話を伺うと、新体制で初のシングル「曇り空の向こうは晴れている」は共感どころが多そうですね。
多いです。サビが心に来て、<何だか苦しく感じて来たら 瞼閉じて そっと深呼吸するんだ>と自分に言われている感覚になりました。私は歌詞に入り込むタイプで、涙が出そうになりましたけど、声が変わってしまうからダメだと、気持ちを奮い立たせました。
――ナナニジの歌詞はシリアスなフレーズも出てきますが、今回の<死にたかった>や<もうすべてを終わりにしたいと願った>はかなりのものですね。
衝撃的でした。曲調はさわやかですけど、歌詞はビックリするくらい深く重くて。聴いたら一瞬、空を見上げたくなるかなと思います。
――宮瀬さんもこの歌詞のように心と身体が重たい日はありますか?
なくはなくて、気持ちはわかります。今はやることが多くて、常に気を張ってないといけなくて。日常の楽しいことや辛いことも「楽しいってこういう感情なんだ」とか、演技のために無意識に覚えるようになってしまいました。
電車に乗っている時間ももったいなくて、振り付け動画を観たりしています。そういう性格なので、答えが出ない悩みを1人で考えてしまうことも多くて。そこが歌詞と重なりました。
――曲中で宮瀬さんは「あの頃の僕も今の君と同じだったんだ」という台詞を言ってます。
私自身はまだそう言えるまで行けてなくて、言い方をすごく考えました。隣りの人にやさしく言ってあげるイメージで、演じる気持ちで録りました。
――実際に落ち込むと、どう立ち直っていますか?
ライブの映像を観ることが多いです。私の活力は本当にファンの皆さんなので、応援してくれているんだと思うと「下を向いていたらいけない」と気力が湧きます。アイドルは何があっても、人前で辛い顔を見せたり心配させるのは違うとも思っています。
後輩にツッコまれつつも相談には真剣に答えます
――2月に入った新メンバーとは、どう接していますか?
普通に仲良くじゃれ合って、むしろ後輩にツッコまれています(笑)。そんな中で相談されることも多くて。私自身、壁にぶち当たることはよくあって、自分たちには先輩がいなかったけど、初めの頃にアドバイスをもらえていたら嬉しかったと思うんです。だから、後輩のプラスになるように真剣に答えています。
――ツッコまれるのはどんなことで?
私がテレるのを面白がって「玲奈さん、かわいいですね」とか言ってきたり。あと、私はたぶん変なことを言っているんでしょうね。小さなことを1コ1コ、ツッコまれます(笑)。
――そういえば、宮瀬さんは以前、お弁当にキッシュが乗っていたのを「ケーキが入ってる!」と叫んだとか(笑)。
ありましたね。ケーキだと思って喜んでいたら違っていて…。いまだにキッシュが入ったお弁当が出ると「れいにゃん、これは?」とイジられます(笑)。
苦しいことの先に輝くものがあると気づけました
――今後もナナニジを引っ張りつつ、女優の道も目指していく形ですか?
枠にハマらず、番組MCだったり、いろいろなことに挑戦したいです。もともと女優の道1本しか見えてなかったのが、声優やアイドルをやらせていただく中で、ライブが楽しくなったり、やりがいを見つけてきました。苦しいことがあっても、その先に輝くものがあると気づけたんです。今、ナナニジと女優だけにしてしまうと、その輝きと出会えないと思うんです。
――5年間の経験から、そう実感したわけですね。
変わることの大切さも、変わらないことの大切さもあるのかなと。私にとっては、女優の夢は心の中に変わらずありますけど、自分の視野になかった声優やアイドルをやってみて変わったこともありました。どれも全力で手を抜かずにやってきたことが、人生の力になってきたように感じます。
――そういうことが夢を叶える秘訣でしょうか?
私は大きい夢も小さい夢も、常にいっぱい持っているんですね。「今日はケーキを買って帰ろう」というのも(笑)、「明日は苦手な人に話し掛けてみよう」というのも、ひとつの目標。それを1コ1コ頑張ることで視野が広がって、変わっていけるのかなと思います。
宮瀬玲奈(みやせ・れいな)
5月26日生まれ。福岡県出身。2016年12月に秋元康×ソニーミュージック×アニプレックスによる「デジタル声優アイドルオーディション」に合格し、22/7で活動。2017年9月に1stシングル「僕は存在していなかった」をリリース。個人で舞台『アサルトリリィ』、『オールドメイド』、『ヒロイン』などに出演。
◆宮瀬玲奈 OFFICIAL Twitter:@reinyan_0526
◆宮瀬玲奈 OFFICIAL Instagram:@reinyan_0526
◆22/7 OFFICIAL Twitter:@227_staff
◆22/7 OFFICIAL SITE:https://nanabunnonijyuuni.com/s/n129/?ima=1200
企画・編集:ぽっくんワールド企画 撮影:河野英喜 取材・文:斉藤貴志