気象キャスター・駒木結衣インタビュー「視聴者さんとのやりとりのコツは“受け入れる”こと。楽しんでしまえばボケやいじりも心地良く感じます!」
インターネット気象情報番組『ウェザーニュースLiVE・モーニング』のキャスターとして活躍している駒木結衣さん。大学生の頃はアナウンスサークルに入るなど、学生の頃からの夢を実現した駒木さんにお話を伺いしました。
小学生の時に放送委員に入ったというのが、アナウンスを始めた第一歩
――1月にフォトエッセイ『空を結ぶ』が出版されましたが、デートグラビアを撮影したり、エッセイを執筆するというのは、以前から興味のあることだったんですか?
フォトエッセイの出版は、じつは1度お断りしているんです。というのも、初めは本当に私でいいのかな? と思ってしまって、自信が持てなかったんですよね。でも、結果がどうであれ、提案されたことはなるべくやってみよう!というのが私のポリシーなので、やってみることにしました。
――著書によると、長年、書道と剣道に打ち込んでこられたそうですが、その中でどのように将来の夢を見つけていったのでしょうか。
小学生の時に放送委員に入ったというのが、アナウンスを始めた第一歩でしたね。でも当時は、アナウンサーになりたいという夢があったわけではなくて。マイクの前で朝・夕の放送をするのが楽しいなっていう、純粋な気持ちでやっていました。
東日本大震災で必死に情報を伝えようとしているキャスターさの姿に胸を打たれました
――では、キャスターという仕事を認識したのは?
中学2年生の冬、東日本大震災で被災した時です。震災後は1週間ほど電気が止まっていたので、初めはラジオで情報を得ていたのですが、ようやくTVが復旧した時に流れてきた津波の映像に衝撃を受けて…。それほどまでに凄惨な状況でも、必死に情報を伝えようとしているキャスターさん、記者の方々の姿に胸を打たれました。
あの頃は自分たちのことでいっぱいっぱいでしたし、被災地で孤独を感じていましたけど、今冷静に振り返ってみると、全国規模で見たら、大多数の方は普通の生活を送っているんですよね。そんな中で、被災地とそれ以外の地域を必死に結びつけようとしているキャスターさんの存在は、被災者の救いになっていたと思いますし。
それを見てすぐさま「私もキャスターになりたい!」と思ったわけではないのですが、みなさんの「届けたい」という熱い想いに勇気づけられたことが、自分の進路を決める1つのキッカケになりました。
やりたい事は他人に言っていったほうが自信がつくかもしれない
――具体的にキャスターを目指し始めたのはいつ頃ですか?
志望大学を決める段階から徐々に考えていたんですけど、キャスターやアナウンサーになりたいという夢を堂々と他人に言ったことはなくて。自分の中だけで温めていましたね。
――それはなぜ?
恥ずかしかったのと、バカにされたくなかったのと、自信がなかったからでしょうね。実際にキャスターになるための努力をしたわけでもないのに、私なんかが目指していい夢なのかな? ってずっと思っていたんです。ただ、表向きには言わないけど、メディアについて学べる学科がある大学をちゃっかり選んでいて(笑)。入学後に放送研究会というサークルに入って、アナウンス練習や発声練習をしたり、サークル仲間と話すうちに「キャスターを目指すことは恥ずかしいことではなくて、他人に言っていったほうが自信がつくかもしれない」と前向きに考えるようになりました。
もう1年就活浪人をしてアナウンサーを目指そうかなと思っていました
――就活はどのように進めていったんでしょうか。
私の就活はもう、“ご縁”の一言でしたね。当時はアナウンススクールに通っていて、アナウンサーになるための試験や面接もたくさん受けたんですけれど、なかなかご縁が結びつかなくて。自分の準備不足を反省しながらも、落ちてしまったところはキッパリ諦めて、「はい次! はい次!」といった感じで面接を受けていたんです(笑)。その結果、周りの友達は大学4年の5~6月には内定が決まっていたんですが、私はまだ1社も内定がもらえていなくて。他の業界も何社か受けたのですが、それも受からず、もう1年就活浪人をしてアナウンサーを目指そうかなと思っていました。
――そこから、どういう経緯でウェザーニューズ社に入ることになったんですか?
アナウンススクールに紹介された求人の中に、ウェザーニュースのお天気キャスターの募集を見つけて、勢いで応募してみたんです。一か八かやってみるか、みたいな(笑)。その勢いが人事の方にウケたのか、大学4年の夏に運良く内定がもらえました。
趣味の旅行が、自分の興味や視野を広げるために役に立ちました
――キャスターになるという夢を叶えた今、サークル活動以外で学生時代にやっておいてよかったと思うことはありますか?
大学生の頃は家庭教師のバイトをやっていました。通信制の家庭教師なので、文字だけのやりとりだったんですけれど、高校生の生徒さんから届く答案用紙に対して、答え合わせをしたり、アドバイスをしたりしていて。文字だけでどうやったら伝わるかを考えたり、やる気をアップさせる文章を考えた経験が、もしかしたらキャスターとしての仕事に活きているのかなって思います。あとは旅行。学生時代は国内外問わず、頻繁に旅行に行っていたのですが、言葉も文化も違う海外での経験は、自分の興味や視野を広げるために役に立ちました。国内に関しても、北海道の寒さや沖縄の蒸し暑さなど、実際に足を運んで体験したからこそわかることがたくさんありますし、それは気象キャスターとして経験しておいてよかったなと思います。
――読者の中には夢が見つからないという人や、夢を実現する方法がわからない方もいると思いますが、何がどう仕事に活きるかって、後になってみないとわからないですよね。
そうですね。ただ、自分の好きなこと・興味のあることを突き詰めてみると、その先に夢が見つかったりもするし。私も一度、キャスターになる夢を諦めようと思ったことがあったんですが、アナウンサーの方の講演会に伺った時に「自分も何度も夢を諦めそうになったけど、今はやりたいことをやれてるし、みんなも頑張ろう」っておっしゃったのが胸に刺さって、ボロボロ泣いたんですよ。でも、そのお陰でまた頑張る力をもらえたので、自ら行動して、自分の視野を広げることが大事なんじゃないかなと思います。
自分から発信する時は、みなさんの役立つモノをお伝えしたいと思っています
――実際に入社してみて驚いたことや発見したことはありますか?
そもそも、入社するまでは気象の知識がほとんどなかったので、入社してから本格的に勉強を始めて、気象の面白さや奥深さは今も日々感じているところなんですけれど。今でこそウェザーニュースを通して気象に興味を持ってくださる方も増えましたが、日常的にはTVの天気予報を見るだけ、という方も多いと思うんです。正直、私も以前はそうでした。でも、この会社に入ったことで、気象のデータがいろんな人の生活や社会に役立てられているんだなというのを目の当たりにして。その一員になれてよかったなと思いました。
――駒木さんが、お天気キャスターとして特にやり甲斐を感じる瞬間はどんな時ですか?
ウェザーニュースLiVEは視聴者さんからコメントをいただきながら、3時間進めていく番組なので、私の呼びかけに対してリアクションをいただいた時は嬉しいですし、自分が発した言葉やお伝えした気象情報によって「助けられたよ」「元気が出たよ」と言ってもらえた時は、すごくやり甲斐を感じますね。番組内でご紹介するリポート(視聴者から届いたメッセージ)以外にも、今日はどんなリポートが来てるかな? というのを番組前に毎回確認するんですが、その1つ1つが番組をお届けする際の支えになっています。
――また、駒木さんと視聴者さんのコミュニケーションといえば、“武士”口調のリポートなど、ツッコミ所の多いメッセージが届くことが知られていて。ボケ続ける視聴者さんと、ツボの浅い駒木さんとのやりとりが人気ですよね(笑)。
キャスターを始めた当初は、視聴者さんにいじられた時に、どうやって返したらいいんだろうって困ったこともあったんです。でも最近は、“受け入れる”という技を習得しまして。みなさんにいじられている状況をとことん楽しんで、みんなでボケ倒して笑うっていうアットホームな空気感を心地良く感じています。
――ウェザーニュースLiVEだけでなく、SNSも頻繁に更新されていますが、SNSで発信する際にこだわっていることはありますか?
自分から発信する時は、できるだけ、みなさんの役立つモノをお伝えしたいと思っていますね。また、いただいたコメントには全て目を通すようにしていて、余裕がある時には“いいね”をしたり、コメントを返したりして、より身近に感じていただけるように心がけています。ウェザーニュースLiVEではSNSと連動する企画も多いですし、今後もSNSでいただいたコメントを積極的に拾っていけたらと思っているので、一緒に番組を作っていただけたら嬉しいです。
――では最後に、今年の目標と、今後キャスターとして実現したい夢を聞かせてください。
まず2023年は…もう少し温かくなったら、駒木、走ります! 新年早々、凧揚げチャレンジで運動不足を実感したので、体力をつけたいなと(笑)。そして、キャスターとしての大きな夢は、今も考え中なんですけれど。まずは伝えるお仕事を少しでも長く続けたいというのが、一番の目標ですね。自分自身が優しい言葉や温かい方達に支えられてきたので、みなさんにお返しができるように、これからも頑張っていきます。
駒木結衣(こまき ゆい)
1996年6月9日生まれ。気象キャスター・防災士。宮城県仙台市出身。津田塾大学学芸学部に進学。大学在学中はメディアスタディーズ・コースに在籍。2018年にインターネット気象情報番組『ウェザーニュースLiVE』キャスターオーディションに合格。気象キャスターとしてウェザーニュース社に入社。特技は書道、剣道。趣味は映画鑑賞、旅行そして、温泉を愛好している。著書にフォトエッセイ『空を結ぶ』(ワニブックス社)がある。
◆駒木結衣 公式Instagram:@komaki_yui
◆駒木結衣 公式Twitter:@yui_k06
「空を結ぶ」著:駒木結衣
知名度&人気、急上昇『ウェザーニュースLiVE』の人気キャスター・駒木結衣が執筆と撮り下ろしに初挑戦した初フォトエッセイ。特技の書道や剣道、そしてデートのような距離感、シチュエーションでの撮影にも初挑戦。普段のウェザーニュースでは見せたことがない一面を見せています。またエッセイは5年目に入ったウェザーニュースの仕事、空、天気について自身の言葉で書き綴ります。後半には、ウェザーニュースLiVE視聴者からの名物となっている、同期で親友の檜山沙耶との女子会トークもたっぷり収録。ファンならば見逃せないものばかりです。
ワニブックス 刊
定価 :¥2,640(税込)
https://www.wani.co.jp/special/komakiyui/
■取材協力:ウェザーニューズ
HP:https://weathernews.jp/
YouTube:https://www.youtube.com/user/weathernews
Twitter:@wni_jp
企画・編集:ぽっくんワールド企画 撮影:田中伸二 取材・文:斉藤碧
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ウェザーニュースLiVEの気象キャスターとして活躍されている檜山沙耶さん。学生の頃から熱烈なアニメ・コミックファンで、コスプレにハマり、現在でも人気キャラクターのコスプレをSNSで発信しています。そんなオタ活がお仕事への活力にもなっているという檜山さんにお話を伺いました。