気象キャスター・檜山沙耶インタビュー「オタ活（趣味）は生きる糧。失敗しても帰れる場所があると頑張れる場面がたくさんあります」

ウェザーニュースLiVEの気象キャスターとして活躍されている檜山沙耶さん。学生の頃から熱烈なアニメ・コミックファンで、コスプレにハマり、現在でも人気キャラクターのコスプレをSNSで発信しています。そんなオタ活がお仕事への活力にもなっているという檜山さんにお話を伺いました。

オタクカルチャーの魅力は、自分の知らない世界を知ることができること

――ウェザーニュースLiVEの気象キャスターとして活躍されている檜山さんですが、その人気の理由の1つとして、ゲームやアニメ、漫画への愛の深さがあると思います。著書『ブルーモーメント』によると、そういったカルチャーにハマったのは中学生の頃だそうですね。

中学2年生くらいの時に深夜アニメを観て、なんて面白い世界だ！って思ったことがきっかけでした。初めは『ローゼンメイデン』や『ヴァンパイア騎士』といった、少女漫画のような綺麗な作風のアニメを観ていたんですが、そこからオタク人気の高い『涼宮ハルヒの憂鬱』にもハマリまして…今に至ります（笑）。オタクカルチャーの魅力は、自分の知らない世界を知ることができることですね。自分の知らない世界を登場人物の視点で味わえるというところが、私がアニメや漫画に惹かれる一番の理由かもしれません。

――最近気になっている作品があれば伺いたいです。

昔も今も好きになる作風は結構バラバラで、少年漫画も少女漫画も読みます。アニメでも放送していた『可愛いだけじゃない式守さん』のようなコメディチックなものも好きですし、メイドさん好きな私としては、森薫さんが描かれた『シャーリー』という漫画も可愛くて気になっています。『永世乙女の戦い方』という女流棋士のお話も、今後の展開が気になりますね。

好きなことに貪欲なタイプなんだと思います

――ご自分の人生を語る上で欠かせない漫画・アニメを挙げるとしたらなんですか？

悩みますね…（熟考）。強いて挙げるなら、『ARIA』と『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』、『3月のライオン』でしょうか。気象キャスターの仕事に就いてからは、天気の描写が綺麗なアニメにも惹かれるようになりました。特に新海誠さんの作品は、『天気の子』や『言の葉の庭』など、天気が美しく描かれているアニメが多いので好きです。

――『ブルーモーメント』にも『言の葉の庭』の舞台である新宿御苑に行かれたエピソードが登場するように、檜山さんは、アニメや漫画の舞台となった場所の聖地巡礼もよくされていますよね。

ちょうど先日も、『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』と「ガーデンミュージアム比叡」のコラボレーションイベントが京都であったので、母と行ってきました。そうやって実際に聖地に足を運んで好きなものに想いを馳せることも、私の生き甲斐になっています。ウェザーニュースLiVEの番組内でも、日本各地にお住まいの方から、その土地の天気についてレポートをいただくので、聖地巡礼でその場所に行った時には「以前レポートをいただいたところだ！」って思ったりします。

――仕事もお忙しいはずなのに、さらに弾丸で聖地巡礼とは、かなりタフですね。

タフになるために、まずは筋肉をつけようと思って、プロテインを毎日飲むようになりました（笑）。家でダラダラすることも好きですが、子どもの頃の活発な性格が残っているみたいで、趣味に関してはフットワークが軽いんですよ。知識欲が旺盛と言いますか、好きなことに貪欲なタイプなんだと思います。

番組出演前にコスプレをしていて、放送前にメイクを落とすのが大変でした

――聖地巡礼をしながら季節の変化も感じて、仕事と趣味が上手く両立できているのがすごいなと思います。両立するために心がけていることはありますか？

仕事と趣味の両立は今でも試行錯誤中ですね。やりたいことの中で取捨選択をして、絶対に行きたいイベントがある時はお休みをいただいたり、翌日が休みの時はできる限りゲームをしたり、自分でなんとか時間を調整して過ごしています。

――どんなゲームがお好きなんですか？

子どもの頃は、祖父母のお家にファミコンがあったので、初期のマリオやカービーをよくやっていました。ポケモンも赤・緑の時代からやっていましたね。今はゼルダの伝説とか、ソフィーのアトリエシリーズが好きです。

――オタ活に熱中するあまり、仕事に影響が出てしまうことはありますか？

実は、多々あります…。最近もTwitterでオタクっぽいツイートばかりしていたので、「もう少し普通の自撮りを上げてください」とマネージャーに言われました（笑）。普段の様子をお見せしようと思うと、ついオタク寄りの内容になってしまうので、誰のTwitterかわからなくならないように、自分の顔もちゃんと載せましょう！と。あと、私は趣味でコスプレもやっていまして…。

――公式TikTokなどで披露されていますよね。

それで以前、番組に出演する前にコスプレをする機会があったんですが、生放送に入る前にメイクを落とすのがすごく大変で、困ったことがありました。こんなエピソードがあるのは、ウェザーニュースLiVEのキャスターの中でも私くらいでしょうね。そういうハプニングがたくさんあります（笑）。

――他にはどんなハプニングが？

これはオタ活とは関係ありませんが、ウェザーニュースLiVEは3時間の生放送なので、インターバル中にお菓子をちょっとつまむことがあって。その時もクッキーを食べていたんですけれど、カスを口につけたまま出ちゃったことがありました。で、途中で気づくっていう……あれはすごく恥ずかしかったですね。

――そんな素の檜山さんに親近感を抱いて、ファンになる方も多いと思います。

そう思っていただけたら嬉しいですね。キャスターになりたての頃は、番組で自分の素を見せることに抵抗があったんですよ。でも、毎日3時間も生放送をしていると、素にならざるを得ないので、途中で吹っ切れる瞬間があります。

コスプレと同じようにキャラになりきる気持ちになると、キャスター“檜山沙耶”のスイッチが入る

――本企画の撮影中は、むしろスイッチが入っているような印象を受けました。だからこそ、素でお話いただいているインタビューとのギャップが面白いんですけれど（笑）。

実は私、入社当時は、自分の見せ方がすごく下手だと言われていたんです。みなさんにどんなふうに見えるのか、自分をどう見せたいのかが全くわからなくて。でも、今はコスプレをしている時と同じように、キャラになりきる気持ちでやると、良い意味で振り切れて“キャスター檜山沙耶”のスイッチが入るんです。

ウェザーニュースLiVEの放送中も、長時間放送していると、その中でシビアな現象が起きてしまうことがあります。そういった場合はシリアスにお届けしますし、穏やかな日はフリートークの時間があるので、そこではほぼ素の状態でお届けしています。

――また、『ブルーモーメント』を拝読した時に印象的だったのが、檜山さんが綴る天気の描写の美しさでした。

私はもともと文章を読むのは好きだったんですが、自分自身が書けるかどうかはすごく不安があったんです。でも、今回ありがたい機会をいただいたので、自分としても自叙伝のような形で何か残せたらと思いましたし、本を手に取ってくださった方が空を眺めるキッカケになったらいいなと思いながら、書かせていただきました。特に季節を描写する際は、私自身、思い出を振り返る時に季節の描写が頭に残っていることが多いので、読者の方が思い出作りをする際にも、季節の描写をより感じていただけたらいいなという想いで書きました。

――表現力やわかりやすさなどを磨くために、日頃からやっていることはありますか？

日常のささやかな練習と言いますか、できることからやっていこうと思っていまして。Twitterで短い文章を書いたり、本を読んだり、時間がある時は美術館にも行くようにしています。息抜き程度なんですけれども、少しでも吸収できるものがあったらいいなと。

好きなことを続けるのは無駄にならないって思う、今日この頃です

――キャスターになる前は会計事務所に勤めてらして、同時に舞台のお手伝いや、演出助手をしていた時期もあるそうですが、当時の経験で今の仕事に活きていると感じることはなんでしょうか？

全部ですね。もともと声優志望だった自分が、舞台でご一緒したレジェンド声優の田中真弓さんから「ナレーションのほうが向いていると思う」と言っていただいて、気象キャスターという道に進みました。自分のためだと思ってやっていたことも、好きなことを続けていけば意外と活かされるんだなって…。これまでにやってきたことは全て無駄じゃなかったんだなって思います。というのも、ありがたいことに、最近はアニメ関係の番組のMCのお仕事をオファーいただくことが増えまして。やっぱり自分の好きなことが仕事になるのは、すごく幸せなことだなと実感しています。

――好きなもの・ことを発信し続けたことが、新たな仕事に繋がったんですね。

そうですね。好きなことを仕事にしたいのであれば、好きなものを積極的に発信するのが大事だと思います。ただ、私が好きなものを発信したことに対して、それを受け取って、「こういう面白い子がいるよ」って檜山沙耶という存在を広めてくださる方がいるからこそ、新しいお仕事をいただけているので、応援してくださっている方にもとても感謝しています。

夢のまた夢ですけれども、いつかはお天気お姉さん役の声優をやりたい

――今後やってみたいお仕事はありますか？

『ブルーモーメント』の中でも、アニメに取り入れていただきたい天気をご紹介したんですが、そういった天気とアニメを繋げるお仕事はぜひやってみたいですね。それと、夢のまた夢ですけれども、いつかはお天気お姉さん役の声をやりたいです（笑）。それ以外でも声優をやらせていただく機会がありましたら、よろしくお願いいたします。

――では最後に、檜山さんがオタクで良かった～！と思う瞬間を教えてください。

オタクだと、生きる糧があるので大丈夫って思えるんですよね。仕事で何か失敗をしたとしても、自分には生きるホームがある！ 帰るお家がある！って思うことで頑張れる場面がたくさんあります。好きなことを吸収して、それを活力として自分の中に巡らせて仕事をしているので、仕事もオタ活の両輪が常に動いている状態ですね。しかも、私の場合は趣味が直結した仕事も多く、ある意味、それも推し事だと思っているので（笑）。これからも楽しみながら、幸せを噛みしめながら、推し事を続けていきたいなと思います。

■取材協力：ウェザーニューズ
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