「迷っても、遠回りしても、無駄な経験なんてない」Kevin’s English Room・かけさんに聞く、今自分の武器になっている社会人経験
英語を題材とした動画を配信している人気YouTubeチャンネル「Kevin’s English Room / 掛山ケビ志郎」のかけさん。出演はもとより、企画立案、編集などチャンネルの全てを担当するクリエイターとして活躍していますが、大学卒業後はマーケターとして一般企業に就職した経歴を持ちます。そんなかけさんに、現在の活動にも役立っている会社員時代の経験についてお話を伺いました。
ずっと“自分にしかできないことをしたい”という気持ちがあった
――かけさんはどんな学生時代をすごし、どんな夢を抱いていたのでしょうか。
「医者になりたい」とか「弁護士になりたい」とか、親や教師が安心するような夢を表面上は言ってましたね。ごく普通の学生時代を送っていましたが、クリエイターとかアーティストになりたい、自分にしかできないことをしたい、という気持ちはずっと心の中にあったんですよ。
――転機は、大学でのケビンさん、やまさんとの出会いなのでしょうか。
そうですね。大学在学中に2人に出会ってニコニコ動画で動画投稿をするようになり、うまくいけばそれで食べていけるかも、という期待を抱いていました。でも、現実はそんなに甘いわけもなく。3人とも就職活動はしつつも諦めきれずに卒業ギリギリまで動画投稿はしていたたんですけど、鳴かず飛ばずでした(苦笑)。結局、それぞれ内定をいただいた会社に就職することにしたんです。
――動画クリエイターではないとしたらこんな道を歩みたい、こんな企業に就職したい、というヴィジョンも明確だったのでしょうか。
クリエイターになりたい自分がいる一方で、そうじゃない方向性で幸せな人生があるかもしれない、一般的に成功とされる人生を歩むのも悪くはないんじゃないかと思う自分もいました。なので、就職するならこの企業に行きたいという目標は持てていました。
“売れる仕組み”を作るマーケターの道へ
――就職活動におけるいくつもの難しい関門を突破するためには、どんな準備をされましたか?
集中的に対策をしたのは面接で、自分なりに作戦を立てたんですよ。たとえば、自分が話したい話題にもっていけるような展開になるように、受け答えも想定していました。15分くらいの短時間でアピールしたいことを全部伝えるにはどうすればいいか、かなり練っていきました。しっかり準備しておいたことであまり緊張することなく面接に臨めたのも、よかったんでしょうね。
――何事においても、やはり準備は大切ですね。ちなみに、かけさんが就職したのはどんな業界・業種なのでしょうか。
業種としてはマーケティングですね。企画職かマーケター、どちらかに決められないまま就活していたんですけど、2つの職種を選んだのは、企画は自分にとって得意だし向いていること、マーケターは商品やサービスが売れる仕組みをつくる未知の世界だったことが理由です。特にマーケターは専門の能力を身につけることができたらきっとそれも武器になるんじゃないかな、と思ったんです。
新たな役職を当たえられるタイミングで一大決心
――マーケターとして働いて、どんな学びがあったのでしょうか?
入社して最初に担当したのは、自社の商品をより多くの顧客に届けるための販売促進案や、商品のセールスポイントがわかりやすく伝わるようなPOP広告の制作をしました。そのあとに配属されたのは需給予測を計算してそれに合わせて時期ごとの施策を練る部署だったんですね。在庫を抱えすぎると株価などにも影響があるので、完璧で正確な需要予測を立てる能力が求められる仕事でした。
――一方で、クリエイターになりたい!という情熱は失われていなかったわけですか。
そうですね。入社から約3年、マーケターとしての頑張りがある程度上司にも認められたのか、新たな役職を与えられてより責任のある仕事を任せてもらえることになって、それはすごく嬉しかったんですけどね。いざ発令日が迫ってきたら、もうクリエイターの道に戻ることはできないんじゃないか、という恐怖心みたいなものが急に芽生えてしまって、「やっぱりちょっと待ってください。会社を辞めたいです」って上司に打ち明けました。
――内示を断るだけでなく、退職も決意してしまったのですか。
そこは敢えて退路を断とうと。慰留されたこともあり、その後何ヵ月かは会社にいたんですけど、頭を冷やしてみてもやっぱり今しかない!と思って、退職しました。そして、ちょうど同時期に会社を辞めたケビンとやまと、「また一緒になにかやらない?」っていう話になったんです。
楽しいものを、どう見せれば支持されるか客観視できるようになった
――なにかやるならこの3人だ、とお互いに想い続けていてタイミングもちょうど合ったわけですね。Kevin’s English Roomの動画は幅広い世代の支持を得ていますが、動画制作や配信において大事にしているのはどんなことなのでしょうか?
今も気をつけているのは、自分たちを評価してくれている人だけを見たらだめだ、ということですね。たとえば10万人のフォロワーがいたら、その10万人に向けた動画を作りたくなっちゃうけど、そうすると5万人くらいにしか受け入れてもらえなくて、その5万人に向けて動画を作ると、また半分くらいにしか受け入れてもらなくて…というふうに、どんどん受入れてもらえる人が減ってしまう傾向があるので。その時点でのフォロワーを置き去りにしないということは大前提で、常に1000万人を狙っていくべきだ、ということは思っています。
――きっと、マーケティング職を通して得たものが生かされていたりもするのでしょうね。
マーケター的な視点を持っていなかった大学生のころは、自分が思う面白さが誰にも伝わらなかったり、ついつい暴走しがちになっていたりしたと思うんですよ(苦笑)。でも、マーケティングの仕事をしてみたら、自分たちが楽しいだけでなく、それをどう見せたらたくさんの人に見てもらって支持してもらえるか、という客観視ができるようになりました。
――その他、会社員としての経験で今役立っていると感じることはありますか?
物流やお金の流れなど、会社員を経験していなければ、わからなかったと思うんです。とかくクリエーターは浮世離れした発想になってしまうこともあるかと思うんですが、会社で働いている人たちのリアルを実体験として持っているのはYouTubeの企画を立てる上で役に立っていると思います。
鮮度の高いマーケティングの感性を失わないように
――そんなかけさんが、この先挑戦したいこと、実現したいことは?
これやったら面白そうだな、こういうのってみんなに楽しんでもらえるよね、っていう鮮度の高いマーケティングの感性を失わないようにしないといけないな、ということはすごく思いますね。この先も欠かせないのは、どんどん新しいものに触れて、下の世代から学ぶこと。常に吸収や学びを忘れない一生でありたいです。
――今、自分のやりたいことを探そうとしている人、夢を叶えるために模索している人に伝えたいこともお聞かせください。
僕自身、クリエイターになるか会社員になるか迷って、一度は会社員を選んだわけですけど、それはそれでよかった、と思っているんですよ。迷っても遠回りしても、無駄な経験なんてないですから。若者ならではの鋭い感性は何にも勝る武器なわけだし、自分を信じてまずは一歩を踏み出してみてください。
かけ
YouTuber。大学時代に知り合ったケビン、やまと3人で英語を使ったエンタメ系YouTubeチャンネル「Kevin’s English Room」を配信スタート。出演・企画全般・ディレクション・編集を担当する。特技は歌うこと。幼少の頃から歌っており、某有名アーティストのバックでのコーラス経験もあり
◆Kevin’s English Room YouTube:https://www.youtube.com/channel/UCFbp2XdRpKfk7mYt_uT8dxw
◆かけ Twitter:@kake_ker
◆かけ Instagram:@kake_ker
企画・編集:ぽっくんワールド企画 撮影:河井彩美 取材・文:杉江優花