真空ジェシカ・インタビュー「お笑いとバイト、全く関連性のない2つの環境が、僕らにはプラスになった」
2021年、2022年と2年連続でM-1グランプリ決勝に進出した真空ジェシカ。ガクさんはファーストフードや清掃のバイト経験、そして川北さんは塾講師と派遣バイトと、二人のアルバイト経験から得たことや、少し変わった人間関係などを伺いしました。
バイト先では自分のことを「俺」ということで、自分に自信があるように見せた
――お二人の最初のアルバイト経験についてお聞かせください。
ガク 僕の最初のバイトは、高校生のときの近所のファーストフードです。中・高と全く女の子と付き合うことがなかったんですけど、ファーストフードはバイト内で恋愛ができるらしいという噂を聞きつけて(笑)、すぐに応募しました。それまで学校では自分のことを「僕」って呼んでいたんですけど、バイト先だけは自分のことを「俺」って言って自信があるように見せてたら、そのバイト先の女の子に告白されて、彼女を作ることに成功しました。
――ご自分を演出して。
ガク そうですね。必要なのは一人称だけだったんだな、とわかりました(笑)。
川北 それは、同じ顔の彼女?
ガク 僕とほとんど同じ顔をした彼女で…。
川北 彼女が同じ顔してて、「どっちが自分かわからない」って(笑)。
ガク そんなわけない。兄弟と間違えられるぐらいの顔だったのは事実ですけど。
川北 僕は大学生のときに、個人指導塾の教師をやってました。教職課程を取っていたので、教育実習の練習にもなるかなというのと、時給が良かったので始めました。ただ、ちょっとバイトだからって軽いノリで数学ができないのに見てたら、親御さんから「川北先生、もう限界ですか?」って電話があって。
ガク 「限界です」って嫌な言葉(笑)。
川北 やっぱり、あんまりわからないことが多すぎると、できないみたいで。
ガク めちゃくちゃ当たり前のことだよ。
川北 1年ぐらいでフェードアウトしました。
カラオケバイトでは、個性的な店長に翻弄された
――お笑いを始めた後もいろいろな体験をされたと思いますが、印象的なアルバイトはありますか?
川北 派遣バイトで道路工事や草むしり、いろんなところを回ってたんですけど、一度下水処理場の清掃の仕事があって、汚水や汚物が入っているタンクの清掃をしてました。タンクの中を一旦乾燥させて、そのあと高圧の水で掃除するんですけど、水で戻るんですよ。元の姿になって跳ねてこっちにかかってくる。しかも着替えを持ってなくて、本当に最悪でした。
ガク 最悪すぎるよ(笑)。僕の印象深いバイトは個人経営のカラオケ屋さんですね。そこは店長が50歳近くの人なんですけど、肌が日焼けで真っ黒で茶髪で髪をツンツンさせてるギャル男みたいな感じで。
川北 よくそこで働こうと思ったな…。
ガク すごく自由っぽかったから(笑)。お客さんも結構来るお店だったんですけど、来ないときは比較的自由に過ごせる環境だったし、まかないも店長が料理してカラオケの部屋にバイトみんなで入って、全員でご飯食べるみたいな感じで。
バイトしてて楽しかったんですけど、暇だとその店長が「散歩してくる」って言って、なかなかお店に戻ってこないことがよくありました。ある時、店長が知り合いのキャバ嬢と一緒に戻ってきて、2人で空いていた部屋で飲み食いしてたんですけど、閉店時間が過ぎても帰ってくれなくて、閉め作業ができず大変な思いをしましたね。
コールセンターでクレームを聞き終えた瞬間に光に包まれる感覚があった(笑)
――バイトはいろいろな人間模様を見られますね(笑)。現在は芸人の仕事一本で活動されているかと思いますが、最後にやっていたバイトな何でしょうか?
川北 ガクに関しては、一番バイトやってたイメージがあるのはコールセンター。
ガク コールセンターは最後のバイトで、3年ぐらいやってた。
川北 あれは、俺にはできない、と思ったわ。
ガク 1日中怒られ続けるクレーム対応のバイトなんです。ネット通販のクレーム係みたいなところで、家電を買ったら不良品だった、みたいなクレームが1日中かかってくるので、それにひたすら謝罪し続けるんです。でも自分がそれを作ってるわけじゃないので、人のことだからいいやと思って耐えてましたね。保留にしてる間に、お菓子食べたり、コーヒー飲んだりして、溜まったものを発散させながらやってました(笑)。
川北 よくそれで発散できるよね。
ガク それでも自分の中でストレスは溜まってたみたいで、ある日、お客さんの1時間ぐらいの長いクレームを終えて、受話器を置いた瞬間に目の前が真っ白になって、何も見えなくなっちゃって、光に包まれる感覚があったんです。これはやばいと思ってトイレに駆け込んで、落ち着いてスマホでその症状を調べたら、強いストレスから解放されたときになる「閃輝暗点」という症状らしくて。必殺技みたいなめっちゃかっこいい名前の症状だったんですけど、その時はさすがに自分でも怖かったですね(笑)。
神様は、チャンス大城さんが泥だらけで働く姿を見ていた
――そんな様々なバイトを経験されたお二人ですが、アルバイト経験の中で特に印象に残っている言葉はありますか?
川北 僕のやっていた派遣のバイト先は、チャンス大城さんやモグライダー・ともしげさんとも一緒のバイト先で、チャンスさん、そのバイト先で泥だらけになりながらバイトしてたんですけど、その頃チャンスさんが「こういう仕事をしてると、神様見てるからな」って言ってて。だからそのおかげで、いま売れてるとは思ってます。そこの社長にはすごく面倒を見てもらったんですけど、そこで得た経験とかエピソードは話せないことが多過ぎて(笑)。
――さっきの下水処理場は話せるラインの話ですね。
川北 そうですね(笑)。道路工事のとき、いきなり現場の人に耳元で「この現場には×××な人が5人います。誰でしょう」と言われたり。下水のプラントで働いてた人も、普通に生活していたら出会わないような人が何人もいたり。そこはあんまり経験としてお笑いに生きるというのはないんですけど、ちょっとやそっとじゃへこたれない胆力みたいなものは付きました。
――通常では出会わないような人にも出会う。
川北 派遣だと特にそうなんですけど、色んな人に会うので、刺青が入っててもあまり気にならなくなりました。
――ガクさんはいかがですか?
ガク 僕はまずシンプルに叩かれることを気にしなくなりましたね。一日中怒られるみたいな体験をしているので、別にネットで叩かれても全然他人事みたいに捉えられるという能力は身に付きました。
アルバイトは楽しいバイトを選んだほうがいい
――お二人ともお笑いの世界とは全く違う世界でのアルバイトですが、その切り替えはどうされていたんですか?
ガク 切り替えというか、環境が違い過ぎて開放感がありましたね。世界がガラッと変わって楽しかったくらいです。
川北 全然関係なさ過ぎて好きでしたね。どっちかで変なことあっても、どっちかではもう関係ない日常が繰り広げられるので、それが良かったなと思います。
――アルバイトを始めようという方などに、アドバイスをいただければと思います。
川北 バイトを始めてみたものの、周りとうまくコミュニケーションが取れないことを悩む人もいると思うんですけど、色んな人がいるので、最初から、全員にちゃんと話が通じると思わずにやると気が楽に持てると思います。これはお互い様かもしれないですけど。
ガク アルバイトって、別に絶対やらなきゃいけないことでもないと思うので、やってみて、合わないと思ったら辞めるのもありくらいの気持ちで、色んなバイトをする方が楽しいと思います。辛そうにアルバイトしてる人もいますけど、せっかくの体験なので、少しでも楽しいとか、やりやすいとかそういうのを選んだ方がいいかな、って。経験上、辛そうにやってるを人たくさん見たので(笑)、バイトでそんな責任を感じずにやってほしいなと思います。
■Profile
真空ジェシカ(シンクウジェシカ)
プロダクション人力舎所属。ボケ担当・川北茂澄(かわきたしげと)とツッコミ担当・ガクのお笑いコンビ。2012年5月コンビ結成。シュールな展開や奇抜な設定が特徴であり、予測不可能な笑いを提供する。2021年、2022年「M-1グランプリ」決勝進出。
◆真空ジェシカ YouTube:https://www.youtube.com/channel/UCePaZ2UkSfEUarY2HNm52fw
◆真空ジェシカ・川北 Twitter:@kawktk
◆真空ジェシカ・ガク Twitter:@gakegakegake
◆真空ジェシカ・ガク Instagram:@gakumeshi
■情報
【レギュラー番組】
TBS RADIO「真空ジェシカのラジオ父ちゃん」Podcastで配信中
初の冠番組! テレビ朝日「ジェシカ美術部」
【人力舎若手お笑ライブ!】
■バカ爆走
毎月1~6日@新宿Fu-にて開催
■どっきん!
毎月第3金・土曜日@新宿バティオスにて開催
※「ZAIKO」にて、有料配信もしております!
企画・編集:ぽっくんワールド企画 撮影:河井彩美 取材・文:田部井徹