古民家をカフェに改造し、地域の人とシェアできる空間に/ギャラリー&ブックカフェ「松庵文庫」 岡崎友美さん
古民家をカフェに改造し、地域の人とシェアできる空間に/ギャラリー&ブックカフェ「松庵文庫」 岡崎友美さん【私の仕事Lifeの転機】

岡崎友美(おかざきともみ)/大学卒業後、銀行員、海外旅行添乗員を経て、専業主婦に。その後、司法書士の事務所でパート勤めをし、2年前にギャラリー&ブックカフェ「松庵文庫」をオープン。夫と子ども(中1・小5)の4人家族。
近所の古民家が壊されると聞き、「もったいない!」と一念発起
昔から古いものに興味があり、近所にある築80年の古民家が気になっていたという岡崎さん。
「そのお宅は2年前にご主人が亡くなり、まもなく手放す予定だと奥様からうかがいました。お部屋を見せていただいたところ、古きよきものが残る空間で、『壊してしまうなんてもったいなすぎる』と強い気持ちがわいてきました。昭和の時代から80年もの間、人々の暮らしとともにあった建物だし、『地域の人とシェアできる空間として残せないものか』と、住宅関係の仕事をしている夫にも相談。すると、『資金を援助するから、何かやってみれば』と背中を押してくれ、私が引き継ぐことにしたんです」
当初はカフェではなく、シェアハウスというスタイルも考えたそう。
「リノベーションの会社に相談したところ、細かく区切るシェアハウスにするのはもったいないと言われ、カフェを作ることに。庭の木や縁側、梁、柱など、残せるものはできるだけ残し、家具も祖母の家から古いステレオをもらってきたり。懐かしさを感じる空間にしたいと思いました」
得意な人が得意なことを。みんなで作るからおもしろい

現在は4人のスタッフが勤務。カフェでは、おいしいコーヒーやランチの「お米農家やまざきさんのお米御膳」(\1,080)も人気。
「オープンの1カ月前まで、司法書士の事務所のパート勤めも続け、のんびり構えていたら、友人に『絶対間に合わないよ』とあきれられて…。ここでやっと自分ひとりで動いてたらオープンは無理だと気付き、デザインや飲食に詳しい友人たちに声をかけて、カフェ作りを手伝ってもらうことに。こうして身近な人たちの協力があってオープンできました。今思うと、経験がなかったから、怖いもの知らずで挑戦できたのかもしれません」
また、岡崎さんは調理から接客まで何もかもするのではなく、マネージャー的な役割でカフェを運営することに。
「私の個性を打ち出すのではなく、いろんな人に協力を仰ぎながら、みんなでカフェを作っていくのが面白い。最初は、西荻でカフェをオープンしていた方にキッチンをお貸しして、お客様に料理を提供してもらっていました。おいしいコーヒーの淹れ方を教えてくれるバリスタの方、お米を仕入れる無農薬の農家の方など、必要な人をどんどん紹介してもらい、人の輪が広がっていくのもこの仕事の楽しみです。ご縁も財産だと考えるようになりました」
さまざまなイベントを通して地域の人が交流できる場でありたい

仕事もプライベートの予定も一冊の手帳で管理。スケジュールの変更があったときにすぐ消せるフリクションのボールペンを愛用。お店の防犯カメラをスマホからチェックでき、遠方にいてもお店の様子がわかる。
「たくさんのお客様に来ていただけるのがうれしい一方で、ゆっくりしていただくのがカフェのコンセプトなのに、お待ちいただくのは心苦しいという思いもあります。また、寝る暇もないほど忙しいときもあれば、暑い時期や寒い時期は極端にお客様が減ったりして、忙しさが読めない仕事であることをやってみて実感しました。不安もありますが、緊張感があるからこそ、やりがいを持って続けられるという面もあります。また、お客様として来てくださった方が、この空間を気に入って、ヨガや料理教室などのイベントに使ってくださるのもうれしいですね。今後もお客様に喜んでいただくためにはどうすればいいのか、常に考えながら、皆さんに長く愛されるカフェを目指していきます」
取材・文:垣内 栄/撮影:刑部友康
※文中の社名・所属等は、取材時または更新時のものです。