西村歩乃果(ラストアイドル)インタビュー「社会経験があるから甘えてたらやっていけないのはわかります」
オーディション番組から生まれたラストアイドルに「かわいすぎるヘアメイク」として挑み、今やグループ屈指の人気メンバーの西村歩乃果さん。7thシングル「青春トレイン」発売を前に、裏方からアイドルになり現在に至るまでの経験や心境の変化などを語ってもらいました。
美容室ではずっと指名1位を獲ってました
――高校時代に美容師を志したそうですが、その時点では芸能界に興味なかったんですか?
昔から音楽は好きで、音楽がないと生きていけないくらいだったので、憧れはありましたけど、現実的でなさすぎました。手先が器用で、文化祭で友だちのヘアアレンジをして喜んでもらった快感が凄かったので、「美容を仕事にしよう」と思いました。
――人に喜んでもらえるのを喜べるのは、アイドルにも通じる資質ですね。専門学校を卒業して美容室で働くようになって、やり甲斐は感じました?
はい。六本木の本当に忙しいお店で、朝は早くて夜は遅い。お休みも少なかったんですけど、お仕事はやり甲斐があって、スキルアップしていくのも楽しかったです。
お客さんが「誰に付いてほしい」とアシスタントを指名できる制度があって、指名の多さで1位がいくら、2位は……と報酬をもらえたんですね。その1位をいつも狙ってました。3ヵ月研修してフロアに出たら、すぐランクインして、最後のほうはずっと1位でした。
よく「なぜ裏方をやっているの?」と聞かれました
――2年後にバンドのツアーのヘアメイクをやる誘いがあって、転職したとか。
私、服とか遊びとか「お金がないから無理」というのは絶対イヤなんです。それで、美容室に入る前はバイトで貯めたお金が100万円あったのに、1年半経ったら7万円(笑)。「ヤバイな……」と思っていた頃、お誘いをいただいて、お店には速攻で退職届を出しました。
――給料が決め手?
ではなくて、お給料も誰のヘアメイクをするかも聞かないうちに、直感で決めました。もともとアーティストさんのヘアメイクをしたいと思っていて、実際にツアーに付いたら好きな音楽も聴けて、幸せでした。
――そのうち自分も表舞台に立ちたい気持ちに?
ヘアメイクの現場で、いろいろな方から「何で裏方をやっているの?」と言われたんです。最初は自分が表に出る人間と思ってなかったけど、2年も言われ続けると「イケるのかな?」という気になってくるんです(笑)。
その頃、家族旅行中にテレビで『ラストアイドル』がやっていて。自分がどこまで通用するか、試してみたくなりました。アイドルのことは全然知らなかったんですけど。
負けたことより3分しか映らないのがショックで
――メンバー入れ替えバトルで歌ったのは、乃木坂46の「ガールズルール」でした。
本当はバンド系の曲を歌いたかったんです。スタッフさんとカラオケに行って、阿部真央さんや当時あまり知られてなかったあいみょんさんの曲も歌ったんですけど、「やっぱりアイドルの曲で」と言われました。
――「絶対勝つ!」という意欲は?
なかったです(笑)。「オーディションは受けるけどヘアメイクはやめたくない」という気持ちでした。当時22歳で「今さらアイドルなんて無理」と思ってましたから。「負けてもいいや」というスタンスでした。
でも、私のバトルの放送はダイジェストだったんです。紹介からトータルで3分くらいで、傷つきました(笑)。周りに「テレビに出る」と話してたんですね。私が挑戦した吉崎綾ちゃんも初バトルだったし、ダイジェストにはならないと思っていたから、「マジか!?」ってショックやら恥ずかしいやら……。
――負けたことより、そっちがショックでしたか(笑)。
そう。やる気がないのが見透かされていたのかな? アピールでも「勝ちたい」ではなく、ドライに「頑張ります」しか言わなかったんですけど、放送でカットされたのが悔しくて、自分で「芸能界でやりたいのかな?」と思いました。あと、3分だったのに反響が凄かったんです。
――「かわいすぎるヘアメイク」は絶大なインパクトでした。
まとめサイトが作られて、ツイッターのフォロワーがめちゃくちゃ増えて、DMもたくさん来ました。「セカンドユニットに入ってほしい」という声が多くて、こんな私でも求められていると知って、初めて「こっちの道もいいかも」と思いました。
ずっとヘアメイクに付きたかったアーティストさんにも「俺たちのバンドは40代のメイクさんにもやってもらってる。今できることをしたほうがいい」と背中を押されて、ヘアメイクの師匠には「もう来なくていい」と突き放してもらいました。後戻りはできなくなって、「アイドルをやる」と決めました。
ステージではいつも吐きそうになってました
――ダンス経験もないままアイドルを始めて、大変さもあったのでは?
大変でしたね。私は運動神経は良いほうだし、音楽も好きだから、もう少しうまくこなせると思ってました。でも、もともと引っ込み思案で、小さい頃は運動会で走ることもできず、お父さんにおんぶされてゴールしたほどだったんですね。その気質が根っこにあるので、ステージではいつも吐きそうになってました。「音を外したらどうしよう。ダンスを間違えたら……」ということばかり考えて、緊張してました。
――その分、人の何倍も練習したとか?
そうですね。シングル表題曲を賭けたユニットバトルでは、Love Cocchiでリーダーの私だけ、芸能経験がなかったんです。他のメンバーより圧倒的に踊れなくて、足を引っ張りたくなかったから、自分のダンスを撮った動画を毎日観て研究しました。
――アイドルになって、自分が変わった部分はありますか?
22年間ずっと自由に生きてきてきたのが、急に縛られることが多くなりました。それがイヤなわけでなくて、「こういう生活もあるんだな」という感じ。私はファンの前でも何も気にせず話すタイプだったので、「これは言ったらダメなんだ」と気づくようにもなりました。
私は中・高6年間、ソフトテニス部でしたけど、アイドルは部活動みたいな感覚もあります。終わったはずの青春がまた始まって、今でも青春できるんだ……と思います。
絶対に一番忙しいメンバーになりたくて
――大人になってからアイドルを始めて、良かったこともありますか?
裏方で社会人経験をしたからこそ、若いメンバーを見て「そんなことだとやっていけない」と感じるときはあります。ステージに出るためには練習しないといけない。なのに夏で暑くて、難しいダンスをやっていたから、体調を崩して休む子も多くて。それで本番は出るなんて、甘ったれてると思っちゃうんです。
体調管理も仕事のうち。そんな当たり前のことを、若い子は当たり前と思ってない。守られて「疲れた」と言えば休める環境で育ってきたように見えて、その感覚の違いにモヤモヤしちゃいます。私は表に立つ大変さもわかりますけど、間違ってると思えば「ダメだよ」と言います。でも、言い過ぎると「やめたい」とか言われるから、難しいですね(笑)。
――水着グラビアの仕事にはどんなスタンスですか?
最初は抵抗ありました。でも、ラストアイドルに入ってデビューしてからは、みんな一斉にスタートして、誰が仕事が多くて誰が暇とか、目に見えてわかるんです。私は「絶対この中で一番忙しい人間になってやる!」と思っていたので、どんなお仕事でも嬉しいです。
――ツイッターやインスタなどSNSではフォロワーがどれも10万人を越えて、83万人にフォローされているTikTokでは国内1位になったこともありました。
LINEライブとかよくやっていて、フォロワー数が増えれば仕事も増えるし、良いことしかなくて「これだ!」と、自分の中でSNSに火がつきました。それも人生経験があったからで、みんなも同じ年だったらできると思うし、私はズル賢いだけです(笑)。
――YouTubeのゲーム実況も好評です。
ゲームはまだ忙しくなかった頃、朝から遮光カーテンを閉めた真っ暗な部屋で、夜も寝ないでずっとやっていたのが活きてます(笑)。
口に出した夢は全部叶ってます
――ラストアイドルの7thシングル「青春トレイン」では、グループ史上最高難度のダンスに挑戦。バブリーダンスのakane先生の振付に、番組内で歩乃果さんは最初、「3回全力で踊ってバテた」と話してました。
でも負けない、みたいな(笑)。踊り終わって「ハーッ。バタン」とかやりたくないんです。床に這いつくばる子も多かったけど、私はそういうの、みっともないと思っちゃう。負けてるというか、弱いというか。私も疲れますけど、「疲れた~」というのを見せたくなくて立ってる。そういうストイックさはあります。
――“死ぬまで夢を見てなきゃ”とか“死んでも絶対大人にならない”といった詞に響くところはありますか?
そう言われると、私はもう大人なので共感しにくいところはありますけど(笑)、夢は語るタイプです。
――今はどんな夢があるんですか?
ずっとバンドをやるのが夢で、いろいろなところで言ってましたけど、最近は言わなくなりました。現実的でなさすぎるし、裏方からアイドルになって急に「バンドをやりたい」なんて、バンドマンの方にしたら「なめんなよ」って話じゃないですか。自分で曲を書ける自信もまだないし、今の夢は明確ではないですね。ただ、高校のときに現実的でなかった芸能を今やっているので、いつかはバンドもやるんだと思います。
――夢を叶えるために、大事だと思うことは何ですか?
口に出すこと。好きなアーティストさんが「口に出せない夢は叶わない」と話していたのに感化されたんですけど、今まで口に出して叶わなかったことはないんです。だから、それは一番大事だと思います。
あと、失敗を恐れることはありません。思い立ったら行動。それで失敗しても、行動しないで後悔するよりは、ずっといいですからね。
西村歩乃果(にしむら ほのか)
1995年1月28日生まれ。神奈川県出身。
美容室勤務、アーティストのヘアメイク担当を経て、2017年に『ラストアイドル』(テレビ朝日系)のメンバー入れ替えバトルに挑戦。敗れたものの、セカンドユニットLove Cocchiのリーダーとなってデビュー。TikTok、twitter、Instagramなど各種SNSでも高い人気を持つ。『ラスアイ、よろしく!』(テレビ朝日系/土曜24:10~)に出演中。
OFFICIAL Twitter:@hoooonoka0128
OFFICIAL Instagram:@honoka.n28
LoveCocchi 公式Twitter:@LoveCocchi_pr
ラストアイドルOFFICIAL SITE:https://www.universal-music.co.jp/last-idol/
企画・編集:ぽっくんワールド企画 撮影:草刈雅之 取材・文:斉藤貴志