【悩み相談】デートの時、彼女が本当に楽しんでいるのか心配になります(石田衣良)
Q.デートの時、相手が本当に楽しんでいるか気になります
大学1年の19歳男子です。女性と初デートに行くとき、本当に楽しんでくれているのかすごく気になってしまいます。「楽しんでいる?」とストレートに聞ければいいのですが、勇気がなくて聞くことができません。上手く探りだす方法はありませんか。
A.前提として自分が楽しめているか。楽しめているのならそれはいいデート
これを探り出す方法はひとつしかないんですよ。「今回のデートを自分は楽しんだかな?」っていうことです。自分が緊張していて、相手のことが気になって、気になって、楽しめていない状態は、彼女にはビンビンに伝わるので。自分が気を使い過ぎて、彼女は全く楽しめていないということだと、なかなかいいデートにならないんだよね。
あなたは割と完璧主義者だと思うんですよ。「最初のデートだから、これとこれをやって」というふうに、完璧にプランを決め込んで遂行しようとする。そういうことをやると、本当にしんどくなるので、もうちょっと気を抜いてみたらどうですかね。
デートの達人の何がすごいのかっていうと、まず自分が楽しんでいる姿を見せることによって相手が喜ぶという、理想の関係が出来上がるんですよね。これは、音楽でも小説でも映画でも、エンターテインメント全般がそうなんですけど、作り手が楽しんでいると受け手もおもしろいっていうのがありますから。そこを考えてみたらどうかな。
「汗だくになってデートのプランニングをしましたが、いかがでしょうか?」みたいなことを言われて、「はい、楽しかったです」って言う女の子はあんまりいないよね。頑張ってくれたっていうのは分かるけど、「ちょっとうっとうしいよな」とか、「しんどいな、こいつ」という感じになるので。
男の方に余裕がないと女性は本気で楽しめない
でも逆に言えば、草食系とか絶食系の子たちと違って、19歳でちゃんと女の子と付き合いたいと思っているし、デートして経験を重ねていっているので。「最初のうちはみんなそんなもんだよ。めげずに頑張ってね」とは言いたいよね。最初のデートのときぐらいは、緊張するのは分かるけど、「男の方に余裕がないと女の子は本当に楽しめないんだよ」っていうのは覚えておいてほしいかな。
ちなみにぼくの最初のデートは映画館ですね。その頃は今と違ってネットではなくて、『ぴあ』とか『シティロード』を見て、中野のスカラ座に2本立ての洋画を見に行きました。名画座ですね。懐かしい!
『ジーザス・クライスト・スーパースター』とフランコ・ゼフィレッリの『ブラザー・サン シスター・ムーン』を見たんですけど、どっちも超名作だった。いや、泣いたよ。泣いた。もう超良かったんですよ、『ブラザー・サン シスター・ムーン』が。
アッシジのセントフランチェスコの伝記なんですけど。隣に彼女が座っているのに、すごくいい場面で泣いてしまって。彼女から顔を背けながら涙を拭いていましたね。そのあと喫茶店に入って、映画の話を2人で1時間も2時間もしていたから。いや~、いい思い出です。あなたは将来に期待できるので、このままで全然問題ないと思いますよ。
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企画:夜間飛行
1960年、東京都生まれ。‘84年成蹊大学卒業後、広告制作会社勤務を経て、フリーのコピーライターとして活躍。‘97年「池袋ウエストゲートパーク」で、第36回オール読物推理小説新人賞を受賞し作家デビュー。‘03年「4TEENフォーティーン」で第129回直木賞受賞。 ‘06年「眠れぬ真珠」で第13回島清恋愛文学賞受賞。 ‘13年「北斗 ある殺人者の回心」で第8回中央公論文芸賞受賞。 「アキハバラ@DEEP」「美丘」など著書多数。 最新刊「オネスティ」(集英社) 公式サイト http://ishidaira.com/