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2016年12月16日

承認欲求との付き合い方│名越康文

名越康文 承認欲求

ほめられたい、認められたい、評価されたいなど、いわゆる「承認欲求」が強い人がいます。端から見ると適切に評価されていると思うのですが、本人は満足していないようです。こういった承認欲求の強い人の心理について、テレビでもおなじみの精神科医・名越康文先生(@nakoshiyasufumi)にお話しを伺いました。

 

誰もが抱える普遍的な欲求

誰かに認めてほしい、ほめられたい、賞賛されたい……こうした欲求を「承認欲求」といいます。承認欲求は、人が仕事や趣味を通して自己実現を果たしていくうえでエネルギーとなってくれることがある一方で、さまざまな問題を引き起こす原因になることがあります。

特に、承認欲求が「認めてほしい」というアピールの形で前面に出てくるとちょっと問題ですよね。自分の実力や、実際に行った行動以上に評価ばかりを求めてくるのは周囲の人にとっても面倒ですし、本人にとっても満たされないという不満ばかりが募ってしまうことになる。

Boy pleading over white background
心理学的な見方をすれば、承認欲求をうまく解消できない人の中には、親との関係性が悪く、幼い頃から受け入れられた感覚を持てなかった人がいるのも事実だろうと思います。そうしたトラウマを抱えた人は、大人になってからも強迫的に、他者からの承認を繰り返し求めるようになってしまう、ということを指摘している人もいます。

ただ、そもそも、承認欲求というのは誰もが持っている、普遍的な欲求であるということは忘れてはいけないというのが、僕の考えです。どれほど成熟した人であっても、心のうちに全く承認欲求を持たない人というのはいません。たとえば結婚式の挨拶を頼まれたとする。結婚する2人を祝福する気持ちはもちろんあるし、そのためにいろいろと準備をして挨拶に臨むわけですが、心のどこかには「いい挨拶だった」「面白かった」と誰かにほめてほしい自分がいる。

この「面白いと思ってもらいたい」という気持ちがあまりに強くなりすぎると、挨拶が長くなったり、肝心の2人への祝福のメッセージがうまく伝わらない、ということになることが起きる。皆さんもたぶん、心当たりがあるんじゃないでしょうか。

こうした日常的な、なんでもない場面に目を向けてみると、人は誰しも、承認欲求のとりこになってしまう可能性があることがわかります。この点においては、誰もが「50歩100歩」なのだということをわきまえる必要があるでしょう。
 

「確認したい」が苦しみの始まり

Hipster young girl pleading
他人からほめられたり、認められたりすることを一切期待しないのは、ちょっとペシミスティック(悲観的)でつまらないと僕は思います。仕事の先輩なり、芸事の師匠なりからほめられたり、認められたりすることは、かけがえのないエネルギーとなります。

自分の中にも承認欲求がある。そのことを認め、受け入れるところから始めるべきだろうと僕は思います。

その一方で、「認められる」ことばかりに気持ちが囚われてしまうのも、また得策ではありません。僕たちにできることは、承認欲求に囚われてしまった瞬間に「手を放す」ということです。

承認欲求はあっても構いません。しかし、「ほめられた」「認められた」ことを確認したり、証明したりしようとするのは地獄の始まりだと覚えておきましょう。ほめられたり、認められたりしたら、その次の瞬間には、そのことを忘れることにする。

認められたいと思うのもいいでしょう。そうした承認欲求を動機に努力すること自体は決して悪いことではありません。しかし、認められたかどうかを確認しようとしてはいけない。金の卵を産むガチョウの腹を割いても、腹の中に金はないのです。

むしろ、あなたが考えるべきことは、承認欲求がよぎった時に、そこから「いかに手を放すか」の方法論です。特に、仕事などで成果を上げ始めると、周囲の人があなたをほめたたえてくれる機会が増えていきます。この時にふと湧いてくる「もっとほめてほしい」という気持ち(これも承認欲求です)をどう手放すか、ということは、人生を大きく左右するほどのテーマだと思います。
 

自分との対話を繰り返す

Christian, faith, christianity.
承認欲求を手放すために必要なことは、普段から自分の心と対話をする習慣を持っておくことです。

目を閉じて、自分の心と対話する時間を作ってください。「対話」といっても、自分の心との対話の場合、言葉を介したものとは限りません。むしろ、身体の感覚との「対話」です。たとえば「自分が今がんばっているようで、どうも胸の辺りが重い。それになんでこんあに怒りがあってびくびくもしているんだろう。あぁ、このごろどうも人の評価ばかり気にしているなぁ」とはっと気づく、するとその瞬間にすーっと気持ちが楽になる。それが僕の考える「自分の心との対話」です。

自分との対話を繰り返す人は、他者からの承認よりも前に、自分自身に正直に振舞おうとするようになります。そして、自分との対話によって心の安定を得た人は、他者と居合わせた時に揺れ動く心も、正確にモニタリングできるようになるのです。

自己と対話をするというのは、小さな自分の殻の中で、ああでもない、こうでもないと思い煩うことではありません。他人から評価されたか、されなかったかではなく、自分自身の中で「満たされた感覚」を得ること。それが何より大切です。一瞬でも満たされた感覚を得ることができれば、それまであれほど心を焼いていた承認欲求から、スゥッと手を離すことができるのです。

 
※この記事は公式メルマガ「生きるための対話」よりお届けします。

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精神科医・名越康文名越康文(なこしやすふみ)
1960年、奈良県生まれ。精神科医。臨床に携わる一方で、テレビ・ラジオでコメンテーター、映画評論、漫画分析など様々な分野で活躍中。著書に『毎日トクしている人の秘密』(PHP、2012)、『自分を支える心の技法 対人関係を変える9つのレッスン』(医学書院、2012)、『Solo Time 「ひとりぼっち」こそが最強の生存戦略である』(夜間飛行、2017)などがある。 2019年より会員制ネットTV「シークレットトーク」を配信中。

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