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2017年01月17日

何をやっても達成感を感じられないのは危険サイン?│名越康文

名越康文

同じだけの努力や、同じだけの結果を出したとしても、「達成感」を抱く人と、「やり残した感」を抱いてしまう人がいます。すぐに達成感を感じられた方が幸せなような気がするのですが、人はなぜ、同じようなことをしていても、達成感を感じられる人と、そうではない人がいるのか、テレビでもおなじみの精神科医・名越康文先生(@nakoshiyasufumi)にお話しを伺いました。

達成感と日々の充実感はイコールではない

名越康文
達成感というものが、人が生きていく上で自信になったり、活力になったりすることは事実だと思います。ただ、だからと言って、ちょっとしたことで、毎日のように達成感を得ることが、必ずしも望ましいことがどうかというと、それはケースバイケースだろうと僕は思います。

もちろん、小さな達成感によって、毎日を機嫌よく過ごせているのであれば、それはそれで素晴らしいことだと思います。でも、あまりにも低く目標を設定することで小さな達成感を得ているだけだとすれば、その達成感は、本当の意味での自信にはつながらないし、人生を充実させてはくれないかもしれません。

逆にいえば、「ここ数年、達成感なんか感じたことがないよ」「いつもやり残した感じがあるんだよね」と言っている人でも、ものすごく人生が充実している、という人もおられるはずです。

たとえば陶芸や鍛冶といった職人仕事に携わっている方のお話をお聞きすると、本当に心から「よし!」と納得できるような瞬間は滅多にない、とおっしゃる方が多いんです。それでいて、自分の仕事について語っておられるお顔を見ると、揺らぎのない自信が垣間見える。

それは結局、非常に高い美意識や目標をいつも見据えておられるからですよね。そういう人にとっては、「やり足りない」感覚が残るのはむしろ日常です。むしろ、下手に達成感を感じるよりは、「やり残した感覚」があるほうが「もっと高めていきたい」というモチベーションが保たれます。当然、そこには変な焦りやしんどさは生じません。
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過剰適応に陥っていないか確認する

名越康文
「やり残した感じ」と一口に言っても、その人が「やらなきゃ、やらなきゃ……」と追い詰められているのと、「まだまだ、やることがいっぱい残っているなあ」とワクワクしているのでは、まったく話が違う、ということですね。

では、「やらなきゃ、やらなきゃ……」と追い詰められている人は、どういう状態にあるのか。これもいくつかバリエーションがあると思いますが、比較的数が多く、また注意すべきなのは、「過剰適応」の状態にある人たちだと思います。

過剰適応というのは、「ここまでやればいい」とか「こういう成果を出せればいい」というゴール設定がはっきりしていない中で、他人や会社などの組織に合わせすぎて、疲弊してしまうことを言います。長時間作業し続け、なおかつ「何かをやり残している感じ」がある。これは、過剰適応に陥っている可能性が高いといえます。過剰適応は、そのまま放っておくと過労死や、精神的に追い詰められた自殺などにもつながりかねない危険がありますので、こういう追い詰められ方をしている人は、注意が必要です。

自分が過剰適応に陥っているかどうかをチェックするには、以下の2つの問いを自分に投げかけてみてください。

「自分のやっている仕事にゴールはあるのか?」
「そのゴールは、自分でコントロールできるものなのか?」

この場合の「ゴール」というのは「明確」であれば、はるか遠くであってもかまいません。また、後者の「自分でコントロールできるものなのか」という問いは非常に重要です。というのも、僕らはしばしば感情的に「私さえ頑張ればいいんだ」という自己犠牲的な考え方によって、過剰適応に陥ってしまうからです。本当に、ゴールまでの道のりを自分の力で切り開くことが可能なのか。あるいは、自分の意志で、そのゴールを諦めることが許されるのか。それを冷静に、自分自身に問いかけてみる。

この2つの質問に、自分なりにきちんと、誠実に答えてみた結果、もしゴールが明確でなかったり、自分でゴールをコントロールできないにもかかわらず、あなたが「やらなきゃ!」と焦っているとすれば、それは過剰適応の徴候と言えます。少し、自分を追い詰めるばかりの仕事からは、距離を置くようにしてください。場合によっては、仕事を休んだり、転職を考える必要があるかもしれません。ゴールの見えない状態で、主体性のない仕事を長く続けることは、それくらい、人の心身に深いダメージを与えてしまうことがあります。
 

コンディションを整える

Stretching woman in outdoor exercise smiling happy doing yoga
ゴールが明確で、それを自分でコントロールできるにもかかわらず「やり残した感じ」が残っていて辛い。なかには、そういう人もおられるかもしれませんね。そういう人は、もしかすると「自分本来のパフォーマンスを十分に発揮できていないこと」への焦りを覚えているのかもしれません。

自分のエネルギーを十分に燃やし尽くせないことは、人によっては大きなストレスになります。もしあなたの「やり残した感じ」が、心身の不完全燃焼によるものだとすれば、大切なことは、仕事に十分なエネルギーを注ぎ込めるようなコンディション作り、ということになるでしょう。

まず必要なことは、睡眠の時間と質の確保です。少なくとも6時間以上の時間をとって、清潔な寝具でぐっすりと眠ってください。次は、食事です。お酒を飲み過ぎたり、胃に負担のかかるものを食べ過ぎていないか。定期的に運動しているか。そうやってひとつひとつ、生活習慣を整えていけば、身体と心のエネルギーをうまく「燃やし尽くす」ことができるようになります。身体と心のエネルギーを上手に完全燃焼できれば、焦りに囚われることは少なくなるはずです。

 
※この記事は公式メルマガ「生きるための対話」よりお届けします。

企画:プレタポルテby夜間飛行

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精神科医・名越康文名越康文(なこしやすふみ)
1960年、奈良県生まれ。精神科医。臨床に携わる一方で、テレビ・ラジオでコメンテーター、映画評論、漫画分析など様々な分野で活躍中。著書に『毎日トクしている人の秘密』(PHP、2012)、『自分を支える心の技法 対人関係を変える9つのレッスン』(医学書院、2012)、『驚く力 さえない毎日から抜け出す64のヒント』(夜間飛行、2013)などがある。