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2018年05月17日

【コラム】「好き」は最強の起動力(名越康文)

好き コラム 名越康文 夜間飛行 タウンワークマガジン

人や趣味など、何か特定のものに夢中になったり、没頭することは人生において重要なこと。そんな、何かを「好き」になることの価値について、TVなどでおなじみの精神科医・名越康文先生(@nakoshiyasufumi)にご意見を伺いました。

何かを好きになれば、人生の歯車は動き始める

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誰か、あるいは何かを途方もなく好きになることは、人が生きていくうえで、とても大事なことだと私は考えます。なぜならそれは、人が大きく変わったり、成長したりするきっかけや、原動力になるからです。

逆に言えば、好きな人がいない、好きなことが見つからないっていうのは、けっこう深刻な問題なんです。何が深刻かといえば、この状態っていうのは、どうすれば改善できるのか、なかなか解決策が見つからないから。

好きな人がいるけど、振り向いてもらえない。ほしいものがあるけど、手に入らない。そういう状態は、しんどいし、辛いのも確かです。でも、好きなものが見つからない、好きになることがない、ということよりはずっとマシなんです。

何かを好きになることさえできれば、人は行動を始めます。そんなに簡単にはいかない場合もあります。でもいつか止むに止まれず、かっこ悪くとも動き始めるのです。そして、行動を始めることさえできれば、何かが必ず変わり始める。これは法則的にそうなんです。自分が動けば、この世界がどこかでつながりあっているように、微妙に変わり始めるのです。初めは分かりようもありません。初めはうまくはいかないかもしれないけれど、人生の歯車は「好き」というきっかけで、必ず動き出すのです。

そういう意味では、僕は「人が恋をする」ことには興味があるけれど、「恋が成就するかどうか」にはほとんど興味がありません。好きになることの最大の意味は、好きになることによってもたらされる「起動力」にあるからです。

若い頃に見たゴッホの絵にもう一度会うために、アルバイトで何十万円も貯めて、オランダの美術館を訪れる人もいます。大好きな音楽に出会うために、なかなかビザが下りないような危険な国にまで足を運ぶ人もいる。

なぜ、好きになるということが大事なのかと言えば、それこそが、人を行動に駆り立てる起動力となるからです。

説明できないからこそ、好きになる

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「人がいつ、どんなものを好きになるか」ということには、明確な基準や条件は存在しません。確かに「私はこういう人が好みなんです」とか「メインストリームから外れたものが好みです」といった志向性はあるかもしれない。でも、そういう条件が満たされたからといって好きになるとは限らない。

もっと踏み込めば、「こういう理由で好きになる」と明確に理由を説明できるような「好き」というのは、往々にして、大したことがないのです。

「この人は男前だから好きだ」とか「この仕事のここが面白いんだ」とはっきり言語化できるようなら、そういう「好き」はたいしたことがない。

なぜこの人のことを好きなのかわからない、どうしてこの音楽が最高だと思うのか説明できない。言葉にならない、説明できない……。だからこそ「最高に好き」なんです。本気に好きになるって、たぶんそういうことですよね。

異性との恋愛はもちろん、音楽や洋服の好みも同じです。心底愛していればいるほど、「なぜ好きか」「どこが好きか」ということを説明するのが難しい。なぜならそ「好き」というのは、ほとんど言葉にならない、微妙な差異や違いに根ざした感覚によって生じるものだからです。

微妙な違いが「好き」を生む

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世の中には、行動できる人と、行動できない人がいます。その違いは多くの場合「何かを好きになっているかどうか」で決まります。好きなものがあれば、人は10万キロ向こうまで、空を飛んで移動することを厭いません。人を行動に駆り立てる圧倒的な起動力は、「好き」の中に眠っているのです。

しかし、肝心かなめのその「好き」は、どこから生み出されるのか、判然としません。逆にいえば「どこから生み出されたものか」がはっきりした途端、僕らの情熱は、あっという間に消費され、起動力は失われてしまうのです。

例えば、世の中にはたくさんの音楽があふれているけれど、構造だけ取り出せば、それほど大きな違いはありません。それなのに、ある音楽は誰かの心を打ちます。ある人がまったく素通りしてしまう絵画の前で、何時間も足を止めてしまう人がいます。

つまり、好き嫌いを分けるのは、突き詰めれば「微妙な違い」なのです。僕は石ノ森章太郎のマンガが好きなんですが、どうして好きになったかということを突き詰めれば「ブーツのしわ」の描き方がたまらなく好きだったんですね。

それは対象が音楽であっても、映画であっても、異性であっても同じです。大きな違いは、魅力を生みません。微妙な違いこそが、その人の「好き」を生み出し、それが人生をごろっと動かす、起動力を生むのです。

 
※この記事は公式メルマガ「生きるための対話」よりお届けします。

企画:プレタポルテby夜間飛行

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精神科医・名越康文名越康文(なこしやすふみ)
1960年、奈良県生まれ。精神科医。臨床に携わる一方で、テレビ・ラジオでコメンテーター、映画評論、漫画分析など様々な分野で活躍中。著書に『毎日トクしている人の秘密』(PHP、2012)、『自分を支える心の技法 対人関係を変える9つのレッスン』(医学書院、2012)、『Solo Time 「ひとりぼっち」こそが最強の生存戦略である』(夜間飛行、2017)などがある。 2019年より会員制ネットTV「シークレットトーク」を配信中。
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