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2018年06月11日

【コラム】“ひとりぼっち”のときに感じる寂しさ・不安との付き合い方(名越康文)

夜間飛行 ひとりぼっち 寂しい タウンワーク

ひとりぼっちでいることに寂しさを感じる人がいる一方で、ひとりのほうが気楽と感じる人もいます。ただし、気楽に感じる人のなかにも「一生ひとりぼっちはまずいんじゃないのか」と不安に思う人は少なくありません。この、ひとりでいることの寂しさや不安とどう付き合えばいいのか、TVなどでおなじみの精神科医・名越康文先生(@nakoshiyasufumi)にご意見を伺いました。

 

ひとりでいることへ疑問を持つことはステップアップのチャンス

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取り立ててさびしいとか辛いと感じることなく、ひとりで過ごす時間を持てている、というのは基本的には、素晴らしいことだと思います。それは他人に過度に依存せず、自足できるということですから。

ただその一方で、そういう人がふとした拍子に、「あれ? このまま一生ひとりぼっちじゃまずいんじゃないかな?」と思う。それはそれですごく素敵な「チャンス」なんじゃないか、とも、僕は思うのです。

私たちはみな、基本的にさびしがり屋です。ひとりぼっちで、誰ともつながりを感じることができないと「さびしい」と感じる。そういうふうにデザインされた生き物だと考えるのが、まずは出発点ではないかと思います。

だから私たちは、身近な他人とのつながりを求めます。家族とのつながり、恋人とのつながり、友人とのつながり……しかし、ここで問題が生じます。私たちが「さびしさを埋めたい」と強く願っているうちは、他人とのつながりは、さびしさを埋めるというよりも、むしろ深めてしまう原因になってしまうことが多いのです。

他人とかかわればかかわるほど、「どうしてわかってくれないの?」「誰ともわかりあえない」という思いが募ってくる。これは誰しも、経験のあることでしょう。

それゆえに、「ひとりぼっちの時間」を充実して過ごす、ということは、人が成熟していくうえでの、大きなステップとなります。さびしさを埋めてもらうために他人に依存する習慣を捨てることができると、ずいぶん、生きるのが楽になります。

しかし、このステップをクリアしたからといって、実は心の奥底にあるさびしさというのは、本当の意味で埋まるわけではありません。「あれ? このまま一生ひとりぼっちじゃまずいんじゃないかな?」ということに気付いた人は、他人に依存するのとは違った形で、心の奥底にある「さびしさ」を埋めるという、次のステップに差し掛かっているのです。

 

「つながり」という感覚がさびしさを埋めてきた

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ホモ・サピエンスの登場から、かれこれ数百万年が経ちますが、人類の文化は、ある意味で「心の奥底にあるさびしさをいかにして埋めるか」という問いに対して、さまざまな試行錯誤を繰り返してきました。そのひとつの完成形が「宗教儀礼」だと僕は考えています。

たとえば親族の一人が死んだ。その人の死を悼み、弔う。このとき、その家族、あるいは氏族の心は、「弔い」という儀礼のなかで、つながりを感じることができる。このようにして心の奥底にある根源的なさびしさを埋めることができる、ということは、人類史における大きな発見であったと言えるでしょう。

私自身は、曲がりなりにもここ10年の間、細々と仏教の行をさせていただいてきました。その小さな、個人的な体験の中でも、こうした大きな存在との「つながり」という感覚が、心の奥底にあるさびしさを埋める強い力を持つということは言える、と感じています。
もちろん、宗教という巨大な文化を、こんなふうに機能主義的に読み解くのは一面的すぎると思います。ただ、私たちが「他者とのつながり」を、「宗教」を媒介することで埋め合わせてきた、ということはおそらく間違いないだろうと思うのです。

「他人と心を通じ合うことなんてできっこない」と思っている人は、少なくありません。しかし、そういう人でも、まったく「つながり」を感じることなく生きていくことはできないのだろうと僕は思います。

特定の宗教に帰依していない人であっても、私たちは土地や国家、家族、人種など、何かしらを媒介することによって、他者との間につながりを感じている。そのつながりによって、つなぎとめられているわけです。

人間はみんなさびしがりやで、そのさびしさを、人とのつながりによって埋めたいと思っている。しかし、人類が長い長い歴史の末にたどりついた方法は、身近な人とわかりあい、つながりを確認し合うということではなく、「神」や「国」といった、何か大きな存在を媒介にして得られる「つながり」の感覚だったのです。

現代は、宗教にしても、国家にしても、そういった「つながり」をもたらしてくれる存在の力が弱まっている時代です。宗教や国家に対するつながりの感覚が薄くなれば、必然的に身近な他人に対して、つながりを求めるようになっていきます。

 

「わかってほしい」と思えば思うほどさびしさが広がる

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「さびしさ」とは何か。それは「わかってほしい」という感覚です。自分の思い、気持ち、考えをわかってもらえた、と感じたとき、私たちは相手と自分とがつながったと感じ、寂しさを生めることができます。

しかしながら、「わかってほしい!」という思いでいっぱいになって、心に余裕がなくなってしまうと、残念ながら、他人との関係性の中で、「ああ、わかってもらえた」という充足感を得ることはできなくなってしまいます。

僕がお勧めするのは、「わかってほしい」という思いが沸いてきたら、まず「相手のために何かをしてあげる」ということに気持ちを向け、行動する、ということです。

……勘違いしないでくださいね。やってほしいのは「相手の気持ちをわかってあげる」ことではありません。「相手のために、何かをしてあげる」ことが大事なのです。

もちろん「何かをしてあげる」ためには、相手がいま何を欲しているのかを、感じ取らなければいけません。頭が痛いかもしれない、のどが渇いているかもしれない、早く帰りたいけれど、遠慮して言い出せないのかもしれない……そうやって、相手が困っていることを察して、それに対して貢献してあげる。

もちろん、うまくいくこともあれば、いかないこともあります。「こういうことで困っているんじゃないか」と思っても、空回りしてしまうこともあるかもしれない。

いや、もっと大きな障壁は「やってあげたのに」ですね。あんなに配慮してあげたのに、気づいてくれない、何もお返しをくれない。それでつい怒りがこみ上げる。これはなかなか厄介な感情です。私たちの心はすぐに人と取り引きをし出すのです。

しかし、それでも、「ああさびしい」「わかってほしい」という焦燥感にかられているときに比べれば、「相手のために、何かしてあげよう」というモードで人と接していると、それまでの何倍も安心して、その場に居合わせ、行動することができるようになるはずです。

 

貢献することで得られる安心感こそがさびしさを埋めてくれる

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人に貢献することによって、私たちは安心感を得ることができます。そして、その安心感によって、私たちの奥底にあるさびしさは、自然と埋まっていくのです。

男性と出会い、付き合うこと
誰かと出会い、親友になること
趣味を共有する仲間を見つけること

いずれも素晴らしいことです。しかし、いずれの場合でも大事なのは、「わかりあう」ことよりも、「貢献する」ということなんです。どんなささやかで、小さな貢献であっても、それは「この場にいていい」という安心感をもたらします。

実はお釈迦様の教えでも、他者の困りごとを察知し、自分のできる範囲で貢献すること(これを方便といいます)こそが、最も大切な生き方だとされています。余談ですが、自分から貢献するのではなく、相手から貢献してもらうことによって、安心感を得るということが、いつの間にか癖になってしまう人もいます。困っている様子や、しんどそうなアピールをして、周囲の人を動かし、コントロールするわけです。

言うまでもないことかも知れませんが、これでは「他人に貢献すること」によって得られる安定した「安心感」を得ることはできません。一時的には、「自分は愛されている」という充足感は得られますが、次の瞬間には猜疑心に変質してしまいます。つまりそれは、決して吸ってはいけない「甘い蜜」なのです。

 
※この記事は公式メルマガ「生きるための対話」よりお届けします。

企画:プレタポルテby夜間飛行

<関連書籍情報>
名越康文 「ひとりぼっち」こそが生存戦略である
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精神科医・名越康文名越康文(なこしやすふみ)
1960年、奈良県生まれ。精神科医。臨床に携わる一方で、テレビ・ラジオでコメンテーター、映画評論、漫画分析など様々な分野で活躍中。著書に『毎日トクしている人の秘密』(PHP、2012)、『自分を支える心の技法 対人関係を変える9つのレッスン』(医学書院、2012)、『驚く力 さえない毎日から抜け出す64のヒント』(夜間飛行、2013)などがある。