コミュ力養成講座 第6回「損得勘定で動く人」（企画：トキオ・ナレッジ　漫画：カマタミワ）

第6回：損得勘定で動く人

 

①少しでも見返りがないと動かない

②なんでも元を取ろうとする

③要領がいい

④借りを作るのが嫌い

 

「損より得が多い人」と感じてもらえれば親切で面倒見のよい一面を見せてくれる

 
多くの人は損得勘定で動く人は「あんまり好きじゃない」「めんどい」「できれば関わりたくない」と思ってしまいがちです。
プライベートではそれでよいかもしれませんが、職場にいられるとそうも言ってられません。
とはいえイヤイヤ付き合うのは、それこそ「MAXしんどい」となりかねません。そんなときは、彼ら彼女らの長所に目を向けてみるとよいでしょう。まずは、彼ら彼女らの生態を探っていきます。

彼ら彼女らの行動のベースにあるのは「ギブ＆テイク」、あるいは「ギブ＆テイク＆テイク」――少しでも損を察したら、テコでも動きません。逆に「得」を感じさせたらそよ風でも動くという、至ってシンプルな思考です。
あまり見上げた行動指針には見えませんが、ポイントは「得をさせる」ではなく、「得を“感じさせる”」でもOKだというところ。「得」という理由さえ見つけてあげれば、親切で面倒見のよい一面を見せてくれるはずです。

彼ら彼女らの最大の特徴にして、「好きになれないな…」と思わせてしまう点が、特に金銭面での損得勘定でしょう。「俺は得をするのだ！」という目標に向かって前進あるのみ。「得をすること」あるいは「損をしないこと」には、実にストイックです。
これを「セコい」と切り捨ててしまうのは簡単ですが、彼ら彼女らの計算の早さや正確さは学ぶべきものがあるだけでなく、もしあなたが損得勘定にうとく、損することが多いようなら、アドバイスしてもらえるシーンは多いはずです。

要領のよさも、ぜひ見習いたい特徴のひとつです。
「誰と仲よくすればメリットがあるか？」――こういった人間関係の作り方はプライベートではほとんど嫌われます。けれどもビジネス視点なら、この見極めは必須のスキルだと言えます。「プライベートは別！」という心構えを持てば、その立ち振る舞いも素直に尊敬できるようになるでしょう。

というわけで条件付きとはいえ、「仲よくしてみるか…」とこちらが思っても、一筋縄ではいかないのが「損得勘定で動く人」です。仲よくするハードルが高い理由は、「彼ら彼女らが人をあまり信用していない」という点に尽きます。

自分がそうであるがゆえに、誰かに親切にしてもらっても「何か裏があるのでは？」と疑ってしまうのはデフォルト。本当にただの親切だとわかったとしても、彼ら彼女らは「相応のお返しをしなくてはいけない」という無用のプレッシャーを感じてしまうのです。
はてさて、亜里ちゃんは「損得勘定で動く人」と仲よくなれるのでしょうか？

 

 

1歩目：普通に親切に接する

2歩目：自分は損得勘定で動かない人をアピールする

3歩目：コスパの相談をする

4歩目：「頼み事は形だけでも報酬とセットで

 

【解説】

メリットをエサに、長所を引き出して仲間になる

 
「損得勘定で動く人」と仲よくなるには、メリット第一主義の暗黒面を共有するか、長所を引き出して仲間になるか、まずは大きな二択に迫られます。あなたも「損得勘定で動く人」なら前者でも構いませんが、そうでないない場合は、話が合わなすぎるでしょう。たとえ話が合ったとしても、最終的には裏の読み合いになってギスギスします。
というわけで、亜里ちゃんは後者を選択したようです。

彼ら彼女らの長所を引き出す前に、まずは聞く耳を持ってもらう必要があります。「こいつと話してもメリットない」と思われてしまったら、そこでジ・エンド。まずは、先に貸しを作ってしまいましょう。彼ら彼女らが好むと好まざるにかかわらず、「話を聞かざるを得ない関係」になってしまうのです。

とはいえ、彼ら彼女らに貸しを作ろうとして、「〜しましょうか？」と聞いても、うまくいきません。十中八九、「大丈夫」と断られてしまうことでしょう。「お返しをしなきゃいけない…」というシチュエーションは、彼ら彼女らにとっては大きな負担になるからです。
なので、親切は断られないように事後報告が基本。聞く前にやってしまって、強制的に貸しをひとつ作りましょう。
ここで大切なのが、貸しを作った直後に頼みごとしない、ということ。これをやってしまうと、「なんだ、このための手助けだったのか。小ズルいやつめ…」と思われてしまいます。
あくまでもフラットな状態で、貸しを作るチャンスを見つけたら積極的に動きましょう。

貸しさえ作ってしまえば、彼ら彼女らは自動的に「お返しをしなければ…」と思ってくれるので、あなたをスルーすることはなくなります。それに対して、「お返しなど求めていない」ということをやんわり伝えるのが次のステップになります。
真正面から「自分は損得勘定で動く人ではない」と言ってしまうと、「自分のことディスってる？」となってしまうので、さりげなく耳に入るようにアピールしましょう。アピールを重ねることで、「あなたにしている行動に裏はありませんよ」と思わせるのです。そうすることで徐々に警戒心は解かれて、あなたとの距離も自然と近づきます。
ちなみに、相手があなたを「お人よしのザコ」認定して、「ラッキー、得した！」と思うだけのクズだった場合は、その時点でフェイドアウトすることをおすすめします。

ふんわりとでも仲間になったら、いよいよ長所を発揮してもらいましょう。
彼ら彼女らは「損をしたくない」界のプロフェッショナルなのですから、コスパ関係の相談にはうってつけ。相談への対価は、「ひたすら褒めまくる！」でOKです。あとは小さいお菓子でも渡せば満足してくれます。「存在価値を認めてあげる」ことで、関係の質を高めるのです。
さらに、相談した結果は必ずフィードバックしてあげましょう。「教えてもらった」という行為だけでなく、結果も評価するることで、彼ら彼女らの承認欲求をこれでもかと満たしてあげてください。

ここまでくれば、頼み事も抵抗なく引き受けてくれるはず。
数値化できない「感謝してもらう」という「得」の味を、彼ら彼女らはもう知っています。なんなら、貸しもあります。
とはいえ、無報酬では反射的に難色を示されるでしょう。損得勘定の呪縛を解くのは容易ではありません。損得勘定な人の気持ち的には、「お返し」＋「感謝」で十分だと思ってはいるのですが、物理的に「無報酬」であることに脳が拒否反応を示しているのです。
だから、明らかに見合わなくてもOKなので、何らかの報酬をセットで提示してみてください。脳を説得する手助けをしてあげるのです。
普通の関係を築くのはなかなか骨が折れますが、仲間は多いに越したことはありません。「損得勘定な人」にも、輝くステージはあるんです。それを信じて、お近づきになるのも悪くはないでしょう。