カレー沢薫の「バイト丸わかり図鑑」ドラッグストア・薬局バイト編

私ほど「不要不急の外出を控えろ」という要請を忠実に守っている人間はいないのではないだろうか。
今の状態の中で私の「気づいたら一週間ぐらい外に出ていない」という、全く油断していない姿勢は表彰されていいレベルだと思う。

そんな私でもやむにやまれず外出することがある。
まず「コンビニ」だ。
某有名漫画に「肥満気味な人間は一食抜いただけで餓死する」という名言があるように、私のように家にこもりがちな人間は、コンビニの食品を定期的に摂取しないと健康を害すのである。

二番目はスーパーだ。
正直これはあまり気乗りしないが、私とは真逆で「家で調理したものを食いたい」という生物と同居しているため、生鮮食品を購入するために行かなくてはいけない。
ネットスーパーが利用できればもちろん使うのだが、我が集落は当然のように「配達圏外」なため、冷蔵庫が空になったら安いことで有名な「THE巨大」という名前のスーパーに仕方なく行っている。

そして最後に「ドラッグストア」である。
私はことわざ通り、風邪をひかないのだが、なんかの天罰で頭や腹が猛烈に痛い時はよくある。
そんな時はまず神に慈悲を乞うのだが、高確率でシカトされるので、とりあえず市販の痛み止めをドラッグストアに買いにいくしかない。

今回のテーマはそんな「神の次に頼られている」でおなじみの「ドラッグストア」のアルバイトである。

 
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ドラッグストアの仕事内容は、レジ打ち、品出し、商品管理、店内清掃など、スーパーのバイトと似ている。
実際、最近のドラッグストアは、薬だけではなく、化粧品から日用品、野菜まで売っているところも珍しくない。
最初は商品位置などを覚えるのが大変かもしれないが、スーパーでレジや品出しの経験があれば、感覚が掴みやすいかもしれない。
だが、ドラッグストアに来る客は、名前通り大根よりは「ドラッグ」を買いに来る人が多いし、私のように「神よ…」とつぶやきながら頭を抱えてやってくる、不要不急以外の人が来る場合もよくある。

そういう人に「この痛みを出来るだけ早く止めてくれる薬はどれだ」という質問を受けることもあるだろう。

下痢で来た人に、頭痛薬を勧めるなどしたら、その人の人生を狂わせる恐れがあるし、それ以前に無資格者が医薬品の説明をするのはNGだ。

ドラッグストアで働く者には、有資格者と無資格者がおり、持っている資格によって扱える商品が違うのである。
無資格者は医薬品の説明や販売をすることはできない。

医薬品に関する質問は有資格者にタッチすれば良いが「売場案内」は資格のないアルバイトもしなければいけない。いつまでも酔い止めを所望する客を入れ歯洗浄剤売場に案内しているようではダメだ。
薬の専門知識は不要だが「商品のありか」ぐらいは覚える必要がある。
では、ドラッグストアでのアルバイトはドラッグ知識や資格が必要かというとそうではなく、未経験者OKのところは多い。
しかし、資格があった方が優遇はされる。

ドラッグストアのアルバイトで優遇される資格は「登録販売者」「薬剤師」などである。

私が「我を救いたまえ」と言いながら買いに行く痛み止めは「第一類医薬品」にあたるため「薬剤師」がいるドラッグストアでしか購入できない。

「薬剤師」は公的資格であり、専門の大学に行ったりと、そう簡単にとれるものではない。
「ドラッグストアのバイトになって、一秒でも早く痛み止めが欲しい憐れな子羊に長めの商品説明（義務）をしたい」という動機で薬剤師の資格を取るというのは大変だし、逆にそんな動機で取れるならすごい。

だが「登録販売者」は通信教育などでも取得可能だ。
これがあれば「第二類」「第三類」の医薬品は販売できるようになる、市販薬の9割はこの第二類と第三類と言われているので、これを持っているだけで、ドラッグストアでは重宝がられる。

何となく取得した登録販売者の資格を生かしたい、もしくは今後、登録販売者や薬剤師を目指す人が、スキルアップ目的でドラッグストアで働くというのもありだろう。

また、ドラッグストアで働くと会社によっては社員割引などの恩恵が受けられる場合があるようだが、これは大きい。

何故なら、ドラッグストアは楽しい。

「ドラッグ（ストア）楽しい」と言うと語弊があるようにも感じるが、ドラッグストアには、化粧品やサプリ類など、比較的女性のテンションが上がるものが多く、便秘薬を買いにいっただけなのに、気づいたら両手いっぱいの、飲むだけで痩せるサプリを買っており、思わぬ散財をしていたということも珍しくない。
メイク用品の取り扱いも豊富であり、時には客にアドバイスをすることもあるようだ。
また新商品にもいち早く気づけるし、それらのサンプルをもらえることもあるかもしれないので、美容、健康関係の仕事に興味がある人にもおすすめできる。

どうせドラッグストアで散財するなら、少しでも安くなった方が良いだろう。

ただし「社員割引あり」の場所でバイトをする時の注意点「バイト代以上に溶かす」だけは気をつけないといけない。

 
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