カレー沢薫の「バイト丸わかり図鑑」仕分けバイト編
これを書いているのは12月半ばなのだが、結局、旅行や大勢で集まったりするのは難しいまま年末年始に突入する模様である。
私は「人生のスケール小さい」でお馴染みなので、主要親族がすべて車で30分圏内におり、正月集まれなくてもどうということはないが、中には1年以上親族に会えていないという人もいるかもしれない。
ただ、その中でも、義実家への帰省がなくなってコロンビアポーズの御婦人や、祖父母にお年玉をペイで送らせるため調整中のお孫さんなど、悲喜はこもごもだろう。
どちらにしても、外出しづらいことには変わりないので、未だに通販を生活の要にしていたり、今年は会いにいけない分、何かを送るという人も多いと思う。
つまり「荷物業界」は依然激アツということだ。
荷物を届ける配送員もそうだが、荷物を用意する仕事の需要も高いはずである。
そんなわけで今回紹介するのは「仕分けバイト」である。
仕分けバイトとは荷物を仕分けるバイトなのだが、以前紹介した「ピッキングバイト」と何が違うかというとピッキングは「倉庫内で指定のものをピックアップする仕事」で仕分けは「工場や倉庫などで、指定のものを種類別に仕分ける仕事」だそうだ。
この時点でみんな「そういうことね、完全に理解した」となっているとは思うが、蛇足ながら説明させてもらうと、荷物を配送先やルートごとに仕分けたり、完成した商品を配送先ごとに仕分けたり、届いた商品を種類ごとにわけ、所定の場所に置いたりその名の通り「仕分け」するのが主な仕事である。
机がいっぱいだから届いた荷物を取りあえず床に置こうと思ったら、すでに床も消えていたので荷物の上に荷物を置くなど、個人宅の仕分けなら部屋の中で完結できる。
しかし仕分けバイトの場合、荷物を持って倉庫内を歩き回ったり、トラックへの積み込み作業がある。
よって慣れるまでは大変という意見もあり、体を動かすのが好きな人、もしくはバイトしながら体を動かしたいという人には特にお勧めできる。
ただし「グランドピアノ倉庫」など、最初から重いものを運ぶとわかっている場所に体力づくり目的で入ると続かない恐れがある。
求人には「○キロ以内のものを運ぶ軽作業」など、仕分けるものの重さを書いてくれるものもあるので「金剛力士像倉庫」など、最初から自分に運べなさそうなものを仕分けるバイトには応募しないようにしよう。
しかし、多少歩き回るような仕事でも、チームプレイではなくソロプレイというだけで全然疲れないという人もいるだろう。
そういう人には、1人で黙々と仕分けをする仕分けバイトはかなり向いていると言える。
しかし、気を付けなければいけないのは仕分けバイトには「チーム戦」を行うところもある、という点だ。
3,4人のチームを作り、1人が荷物をコンベアーに乗せ、2人目が宛名シールを貼り、3人目がそれをスキャンし積み込みをする、という説明を聞いただけで何らかのトラウマを思い出す仕分けバイトも存在する。
これはコミュニケーション能力の問題ではなく、行進や手拍子をするといつの間にか回りとズレているタイミング下手タイプというのがいるのだ
そういうタイプがこのような仕事をすると「流れ作業の流れをせき止める」という「第4のポジション」になってしまい、そのせいでコミュニケーションに難が出てくるという悪循環になるので、応募する際、それとなく仕事内容については確認しておいた方が良いだろう。
逆に仕分けバイトはしたいが、1人で黙々と仕事をしていると気が滅入ってしまい、商品の金剛力士像と会話をはじめてしまうというタイプにはチームプレイの方が向いている。
どちらにしても特別なスキルや資格は不要の場合が多いので、デキるだけ自分に向いていそうな求人を選び、あとはどれだけ早く慣れるかである。
ちなみに、空港などでベルトコンベアーで流れて来る荷物を分けるのも仕分けバイトの一つである。
荷物はたくさんあるだろうに、毎回間違わずに荷物を流してきて、空港の仕分けシステムは優秀だなと思っていたが、まさか手作業とは思わなかった。これからはスマホ片手に「おせーな」などとは思わず、直立不動で待ちたいと思う。
ちなみに、我が家の仕分けのように二畳半の部屋から出ずに行える仕分けはない、と言ったが実は、部屋どころか椅子に座って出来る仕分けもある。
年賀状などのはがきの仕分けも、仕分けバイトの一つなのだ。
私も高校生の時、郵便局でバイトをしており、午前中は配達、午後は仕分けの作業をしていたが、ほぼ座ったままであり、おそらく年賀はがきより「軽」な荷物はないと思うのでかなり楽だったと記憶している。
ただし、最近はプリントが多いが手書きの場合、私のように6と0と9の境目がファジーな人もいるので、それなりに注意深くやらないといけない。
だが楽には変わりないので、こういった確変仕分けバイトを見つけるためにも、求人は良く読んだ方が良い。
「職種が3つしかない」でおなじみの我が村だが、仕分けバイトで検索したところ、かなりの件数が見つかった。
我が村にあるということは、現在仕分けバイトは全国どこにでもある、と言っても過言ではない。
私も来年は本当にどうなっているかわからないので、もしまた年賀状の仕分けバイトがあったら応募してみようかと思う。
その日のために「高校生に混じるハートの強さ」もしくは高校生のコスプレの練習をしておこうと思う。
1982年生まれ。漫画家・コラムニスト。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビュー。SNSでは“自虐の神”と崇められる人気作家。
Twitter https://twitter.com/rosia29
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