俳優・小関裕太さんインタビュー 「役者にゴールはないけれど、答えのないところを走れることに魅力を感じています」
所属事務所の若手俳優陣が集結した「15th Anniversary SUPER HANDSOME LIVE『JUMP↑with YOU』」のBlu-rayが発売されたばかりの小関裕太さん。ハンサムライブでも披露した歌唱力を活かし、ミュージカルにも活躍の場を広げている最中だったものの、出演予定だったミュージカル「四月は君の嘘」は新型コロナウイルスの影響により全公演中止に。その中で感じたことや、子役から活動する若きベテランにお仕事観をインタビューしました。
ハンサムライブを終えたことで、僕らの代で何ができるかという挑戦が始まった
――ファン感謝祭「15th Anniversary SUPER HANDSOME LIVE『JUMP↑with YOU』」を映像化したものが発売されたばかりですね。2年ぶりの開催だったことで感慨もひとしおだったと思います。
僕が初めてハンサムライブに出演したのが2012年だったんですけど、それから8年が経ち、出演歴も参加メンバーの中で一番長かったので、いつの間にかみんなをまとめるような立場になっていたんです。なので、先輩たちが創り上げたハンサムらしさ、ハンサムライブならではの温かい部分を引き継いでいかないと、という思いで本番に臨みました。
――そういった使命感があったんですね。
でも、いま振り返ると、すごく楽しかったし、終わった後は達成感でいっぱいでした。
――公演を成功させた一方で、次回への課題なども見つかったのではないですか?
今回、レジェンドと呼ばれた多くの先輩が特別参加してくださったことで、先輩たちの背中も見ることができましたし、真似したい部分もたくさん発見できた。じゃあ、今度は僕たちの代で何を作っていくのかっていう問いかけを、本番が終わってからするようになって、終わったことで始まったなという感覚がありました。
大型公演をギリギリで開催できた僕たちにできることを模索していました
――その直後に世界的な問題が起こり、事態が急変しました。
ライブが行われたのが2月半ばで、本番は汗と涙と笑顔と感動にあふれ、まだその余韻も残っている時にコロナが蔓延し始めて、すべてのエンターテインメントがストップしました。ギリギリで公演を開催できた僕たちにできることって何だろう、自宅で寂しさを抱えているみなさんの気持ちに寄り添える何かを作りたいとライブ配信を始め、今も継続しているところです。
――公演を成功させた直後だっただけに、考えることも多かったと思います。中止となった作品の中には、小関さんが主演予定だったミュージカル「四月は君の嘘」も含まれていて……。
普段から自分が携わる作品、役柄に対して精一杯向き合っているんですけど、「四月は君の嘘」に関しては特に準備期間が長かったんですよ。公演の1年半ぐらい前にはベースが出来上がっていて、その数ヶ月後に曲が完成。1年半、役のことをずっと想定しながらお芝居を作っては崩して、作っては崩してとやってきたので、やりきれない思いでいっぱいでした。
大変な時期だけど、今しか作ることのできないものを生み出したい
――自宅で過ごす期間も増えた中、いろんなことを考えたのではないですか?
いつかコロナが収束した時に僕は何を思うんだろうって考えたんです。「あの時期は寂しかったね」とか「悔しかったね、悲しかったね、たくさんのことがなくなっちゃったね」と、思い返すんだろうかと。そして、このまま何もせずに過ごせば「あの時は悲しかったね」で終わってしまうと思ったんです。でも、今なにができるのかを考えて行動すれば「あの期間があってよかったね」と思える日がくるかもしれない。大変な時期だけど、今しか作ることのできない環境があるはずだから、何かを生み出さなきゃと模索していました。
――子役から芸能活動を始めた小関さんにとって、ここまで長い休みは初めてだったのではないでしょうか。
僕は自宅にいながらも忙しくしていましたね。一つはやりきれない気持ちを隠すためですが、同じように落ち込んだり、孤独感に苛まれている人たちに1秒でもいいから笑顔になってもらいたい、面白いと感じてもらいたいと、新たな企画のことばかり考えていました。今だからできることがきっとあるはずだから、誰よりも早くキャッチして面白いものを作りたいと思ったんです。
答えがない職業だからこそ、やりがいを感じています
――多くの作品で活躍する小関さんですが、俳優というお仕事の醍醐味をどんなところに感じていますか?
例えば、スポーツ選手だったら勝つか負けるかが評価されるなど、ある意味わかりやすい世界じゃないですか。だけど、僕たちの職業には答えがないんですよね。言葉に表せない感覚的な部分が個性となり、みなさんに「何かいい」と評価していただける。だからこそ無限大で、その「何かいい」を探究していきたいんです。ゴールがないのは怖いですけど、その分やりがいはあるなって。答えのないところを走れるランナーとして、“わからない”を突き進むことに魅力を感じています。
――子どもの頃から芸能活動をされていて、他の道に進む選択肢もあったかと思うのですが……。
子どもの頃から空手や水泳、サックス、ダンスでもタップ、ジャズ、バレエ、ヒップホップ、ストリート、ロックとたくさんの習い事をやっていて、お芝居をすることも最初は習い事の一つでしかありませんでした。その中で、どんな職業でもプロフェッショナルとして信念を持ってる人ってカッコいいなと感じ、自分の将来について考えた時に役者さんをベースにやりたいと思ったんです。
大嫌いが大好きに変わる快感を知ったことで、芝居が好きになった
――はっきりと決意をした時期や具体的なエピソードについて聞かせてください。
高3の時に岸谷五朗さん演出の「FROGS」という舞台に主演させていただいたんですが、そこでかなり悔しい思いをしたんです。五朗さんは人生の先輩であり、役者の先輩でもあって、さらに演出家として3つの視点で課題を出してくださる。その課題に対して自分なりの答えを見つけて「五朗さん、できました!」と翌日に提示しても、「じゃあ、次はこれをやってみて」と新たな課題を設定される。連日その繰り返しで、走っても走っても全然ゴールにたどり着けず、ずっと息切れした状態でした。
――そこからどのような心境の変化があったのでしょう。
そんな時に中2の時に出会った先生のことを思い出したんです。授業がとても面白く、それまで大嫌いだった社会科を大好きに変えてくれた先生でした。大嫌いなものが大好きに変わる快感が蘇ってきて、「もうやりたくない」とすら思ったお芝居を好きなものに変えてやろう、堂々と「俺は役者だ」と言えるようになりたいと決意したんです。それからは、目の前の課題や壁をクリアしていくことがどんどん楽しくなり、気が付いたら芝居が大好きになっていました。
――大嫌いが大好きに変わるってすごいことだと思います。そんな小関さんは25歳にして、デビュー17年というキャリアの持ち主。好きなことを長く続けるコツを最後に聞かせてください。
役者にしても教師にしても、今、注目されているYouTuberにしても、その道のプロフェッショナルがいるということは、その仕事に必ず面白味が隠れていると思うんです。「この仕事は自分に向いてるのかな? 向いてないのかな?」っていう入り口だけじゃなく、その道のプロが見つけた楽しさって何だろう、自分も早く見つけたいと思えば何でも楽しめると思うんですよ。何事においてもそのジャンルならではのワクワクがあるはずなので、そこを追い求めたら長く続けられるのではないでしょうか。
小関裕太(こせき・ゆうた)
1995年6月8日、東京都生まれ。2006年、NHK「天才てれびくんMAX」のテレビ戦士としてデビュー。主な出演作に、ミュージカル「テニスの王子様」、舞台「FROGS」、ドラマ「ごめんね青春!」、「半分、青い。」、映画「ちょっとまて野球部!」、「わたしに××しなさい!」、「春待つ僕ら」、「シグナル100」など。現在、NHK「旅するイタリア語」にレギュラー出演中のほか、10月16日(金)公開の映画「みをつくし料理帖」に出演。2021年上演のミュージカル「『モンティ・パイソンのSPAMALOT』featuring SPAM」に出演する。
◆OFFICIAL SITE:https://artist.amuse.co.jp/artist/koseki_yuta/
◆OFFICIAL Twitter:@yutakoseki
◆OFFICIAL Instagram:@yuta_koseki_68
編集:ぽっくんワールド企画 撮影:河井彩美 取材・文:荒垣信子
※文中の社名・所属等は、取材時または更新時のものです。