須田亜香里(SKE48)インタビュー「劣等感は捉え方次第で夢への原動力になります」
SKE48の中心メンバーで個人でのバラエティ出演も多い須田亜香里さん。最初から注目された存在ではなく、握手会での神対応から人気を高め、48グループの選抜総選挙でも選抜入りから神7、そして2位まで上昇。ブスいじりをネタにするなど、コンプレックスを逆手に躍進してきたアイドル人生を語ってもらいました。
総選挙2位でもパンストを被って笑ってもらえるアイドルに(笑)
――亜香里さんはバイトをしたことはありますか?
高校生のとき、社会勉強のためにやりました。最初にやったのが美容院の受付で、私は電話が苦手で、予約のお客さんの名前を聞き忘れて切っちゃったこともあります(笑)。あと、コンビニでレジを打ったり、ホットスナックを作ったりもしました。
――その経験は何かで役立ちました?
私の高校はお嬢様育ちの子が多くて、一緒にお買い物に行くと値札を見ないで買ったりしていたから、バイトをして普通の金銭感覚を培えました。今も活きているのが、CD1枚って普通の時給より高いじゃないですか。ファンの方が握手会で「10枚買って来たよ」と言ってくれるのは10時間以上働いた分で、どれだけの重みか知ったうえでアイドル活動ができています。
――去年11月でデビュー11周年を迎えましたが、アイドル人生の折れ線グラフは、おおむね右肩上がりな感じでしたか?
全然そんなことないです。私は感情の起伏が激しいので、今も折れ線は毎日ギザギザしてます。日々すごく幸せにもなるし、すごく悲しくもなって、上から下まで行きます(笑)。
――その中でも一番高いところまで行ったのは?
やっぱり(2018年の)総選挙で2位になったのは大きかったです。当時は1位の松井珠理奈ちゃんが休業して、「自分がここで崩れたらダメだ」と気を張って過ごしていたので、折れ線グラフとはまた別のところにいた感じ。でも、そこでメンタルや経験値を上げて、大きなきっかけになりました。パンストを被ると「2位になったアイドルなのに」と笑ってもらえるので(笑)。
悪く言われるのは興味を持たれている裏返し
――あの年の総選挙では、政見放送などで「私はブスですか? かわいいですか?」とSNSでの投票を呼び掛けました。
ずっとブスと言われてきて、「人が嫌がることを言わなくてもいいのに」と思ってきましたけど、私に興味を持ってくれている裏返しだと気づいたんです。私のことを自由に品評してもらえる場を作れば、ファン以外の人も楽しんでくれるかなと思って。そしたら、いつもSNSに“いいね”が付く数の比でないくらい、たくさんの人が反応してくれました。自分のネガティブな部分が盛り上がる要素になったので、捉え方次第だなと思いました。
――そう考えられるようになるまでは、時間がかかったでしょうけど。
かかりましたね。芸能界はプラスの要素だけが良しとされるわけでないことは、この3~4年で学びました。見た目をあれこれ言われることを受け入れて、どう返すかで世界はこんなにも変わるんだと。それまではずっと、ブスと言われるたびに泣いていました。今でもコンディションがいいと思った日に「むくんでない?」と言われたり、ちょっとしたことでムッとします(笑)。
――その総選挙に限らず、亜香里さんは昔から、頭を使ってアイドル活動をしている印象がありました。
理屈っぽい性格です。私がSKE48に入って半年で初めての総選挙があって、まだランクインしなくて当然だと思っていたんですね。そしたら、ほぼ同期のAKB48の9期から島崎遥香ちゃんと山内鈴蘭ちゃんがランクインしていて。「私も努力の仕方次第で、あそこに立てていたんだ」と考えたら、めちゃくちゃ悔しくなりました。
同じ境遇で同じ人間なら、同じラインまで行けないのはおかしい。シンプルにそう思ったんです。当時は見た目が関係しているとは考えてなかったんですけど(笑)、どうしたら自分もあの場所に立てるか、目標から逆算して、いろいろ頑張るのは好きでした。
会いに来てくれた嬉しさを五感のすべてで伝えたい
――それで握手会の取り組み方も変えたわけですか?
そうです。最初は普通にニコニコして「ありがとうございます」と言うだけで、握り方も特に意識しませんでした。むしろ遠慮して、ソフトタッチな握手でした。それが、指の圧が心地良く感じられる部分はどこかまで考えるようになって。会話も、どう感情表現すれば相手は安心するか、また来たいと思ってもらえるか、分析しました。
ファンの方は何ヵ月も前からスケジュールを押さえて、交通費もかけて会いに来てくれるじゃないですか。愛がなきゃできないことなので、私はめちゃめちゃ嬉しいんです。それを目とか声とか五感のすべてを使って伝えることは、すごく意識しています。
――その積み重ねで“釣り師”と呼ばれるくらい、握手会でファンを増やしました。
他のメンバーと違うと思われたかったし、ドキッとされたかったんです。みんなが直立で握手していたら、私は前かがみでグイッと来る感じにしたり。グイグイ来られるのが苦手な人も「悪くないか」と思ってくれると信じて、遠慮しないで行ってました。
――逆に、アイドル人生の折れ線グラフが一番下がったのは、いつでした?
(2015年に)総選挙で18位になったときかな。その2年前に16位で選抜に入ったとき、「ここが自分の絶頂」と思い込みすぎたんですね。それまでは上るためにはどうしたらいいか考えて楽しんでいたのが、落ちないためにはどうするかと、ネガティブな頑張り方をするようになってしまって。次の年は10位でランクアップしましたけど、結果って遅れて出るんです。心から笑顔でいられなくなった積み重ねで、2年後にガンと下がってしまいました。
――その翌年から、また7位、6位、2位と上げていくわけですが、今はアイドルにとって大事なことは何だと思っていますか?
心から笑うことです。ステージでも写真を撮られるときも、楽しんで笑ってないと伝わらなくて。ウソっぽい笑顔に見えると、ファンの方も息苦しくなるんですよね。見た目からファンになる人はかわいければいいでしょうけど、「この子と一緒にいると楽しい」と思われるには、お互い心から笑えないと長続きしなさそう。
今、応援してくださってるファンの方たちとは、将来みんなで普通にごはんを食べていそうな気がするんです。一生続く縁じゃないかと、勝手に思っています。
悲しいことも忘れたくなくてノートに書きます
――最初に出たように、今でも日々、感情の起伏はあるわけですか?
めちゃめちゃあります。カメラが回っていたら何を言われても許せるんですけど、仕事でないと笑って返せなくて、全部を真に受けて落ち込みます。ただ、悲しくても嬉しくても、寝て起きたら半分以下になるじゃないですか。あれが私はイヤなんです。悲しいことも、寝て忘れたくないんです。
――悲しいことは忘れたい、ではなくて?
落ち込み切らずに寝てしまえば忘れられても、あとでもっと大きな毒になって、自分に悪さをしてくることがあるんです。だから、ちゃんと落ち込んで、自分がどう感じているのか、全部ノートに書いています。
あとから読み返すと笑えます。「ポエマーだな」と思って(笑)。そのノートは人様には絶対見せられないので、墓場まで持っていきます。でも、客観的になれたら、ちょっと落ち着くときもあります。
――バラエティで活躍するために、努力していることもありますか?
正直な感覚を大事にしています。台本はあっても、話の振り方はMCの方によって違うし、場の空気も違う。「こう聞かれたら、こう話す」と決めて練習まですると、違う振りが来たときに噛み合わないのが怖くて。だから、なりゆきに任せて、空気に合わせて頭がちゃんと働く準備だけをします。それと、SKE48を背負って出ていることは自覚しています。
新曲では柔軟性を活かして踊っています
――SKE48でリリースする「恋落ちフラグ」は、松井珠理奈さんの卒業シングルながら明るい曲ですね。
アップテンポで寂しい感じが全然なくて、卒業メンバーを見送る曲としては珍しいと思いました。たとえば(松井)玲奈さんを見送った「前のめり」だと、センターに立つことに重みがありすぎますけど、「恋落ちフラグ」は全員参加曲で、みんなが当事者になれます。劇場公演やコンサートで、また違う気持ちで歌い継いでいけると思います。
ダンスではカッコ良さとか、かわいさとか、セクシーさとか全部備わっていて、メンバーの個性が出る見せ方も楽しいです。
――MVでは6チームに分かれて踊って、亜香里さんは柔軟性のあるチームに。
私たちはフォーメーションはほぼ動かず、手先の動きや目線で見せています。私や惣田(紗莉渚)はバレエの経験を活かして、ターンして脚を上げたりするのが見せ場になっていて。あと、柔軟性チームは背が高い子が多いので、私が小柄で華奢に見えたらいいなと思っています(笑)。
――今年10月には30歳になりますが、意識しますか?
しますね。いつか親に孫の顔を見せることができるのか、リアルに心配。でも、アイドルとして30歳になることに心配はありません。「気が済むまでやらせていただきます」とファンの方にも言っているので。
センターも一度やらせていただけて、アイドルでやりたいことはもう全部できたので、グループにいさせてもらえるなら、どんな形でもいいんです。SKE48の中で役に立てる存在になれたら、ありがたい感じです。
今の自分の原点になった深夜ラジオをやってみたい
――初主演映画『打姫オバカミーコ』も公開されますが、女優方面にも進出していくんですか?
演技ができると思ってなかったし、女優顔でもないし(笑)、透明感もないですけど、この1年で発表前の作品にもいくつか出させていただきました。どれも他のお仕事でのご縁がきっかけ。もともと芸能界に憧れたのは、「女優さんはいろいろな人生を経験できて素敵だな」と思ったのが始まりだったので、ちょっとでも叶って幸せです。
――どんな女優さんが憧れだったんですか?
素敵だなと思ったのは綾瀬はるかさんです。『ホタルノヒカリ』の「ぶちょお!」とか縁側のシーンとか、「こんなに自然体でかわいいなんて」と思いました。目標と言うのは無理ですけど(笑)、私はいつもの須田亜香里でない「こんな顔をするんだ」というようなお芝居ができたらと思います。
――亜香里さんはお父さんに言われた「夢は明日変わってもいい」という言葉を大事にしているそうですが、今の時点での夢は何ですか?
夢というとプレッシャーになっちゃいますけど、深夜のラジオの生番組をやってみたいです。6年前に『アッパレやってまーす!』という番組の月曜に1年間出させていただいて、深夜に集まって話して、リスナーさんも1人の時間の楽しみにしてくれて。リアルタイムで繋がって話が広がっていくのが、すごく思い出になっています。
ちょうど総選挙18位で折れ線グラフが一番下がった年で、それまではトークがヘタで、マネージャーさんに「生放送に出したくない」と言われていたくらいでした。
――今はトーク力が武器なのに。
あの番組で喋ることが好きになって、生きることも楽しくなりました。今の自分の原点です。深夜ラジオをやれたら、私は1人でも永遠に喋れると思います(笑)。
――今までもたくさんの夢を叶えてきたと思いますが、原動力だったものは何ですか?
劣等感です(笑)。「あの人はできるのに、私にできないのはなぜだろう?」というところから、夢を叶えるにはどうしたらいいか考えるので。
須田亜香里(すだ・あかり)
1991年10月31日生まれ。愛知県出身。
2009年にSKE48の3期生オーディションに合格。2010年11月発売の4thシングル「1!2!3!4! ヨロシク!」から選抜メンバー入りを続けて、2020年1月発売の26thシングル「ソーユートコあるよね?」で初のセンターを務めた。『ドデスカ!』(メ~テレ)、『スイッチ』(東海テレビ)、『バイキングMORE』(フジテレビ)などのバラエティ番組に出演。初主演映画『打姫オバカミーコ』が2月5日より公開。
◆須田亜香里 OFFICIAL Twitter:@dasuwaikaa
◆須田亜香里 OFFICIAL Instagram:@akarisuda
◆SKE48 OFFICIAL SITE:http://www.ske48.co.jp/
企画・編集:ぽっくんワールド企画 撮影:河野英喜 取材・文:斉藤貴志
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