テラシマユウカ(PARADISES)インタビュー『仕事を通して“自分のためだけ”では頑張れないことがたくさんあることを知った』
BiSH等が所属する音楽事務所“WACK”から誕生したアイドルグループPARADISES(パラダイセズ)。2020年12月にウタウウタが加入し、新体制としては初の音源となる『PARADISES RETURN』を3月3日にリリースしたばかり。制作エピソードほか、“衝動で音楽の世界に飛び込んだ”というテラシマユウカさんに、現在までの仕事に対する意識の変化について聞きました。
様々な感情表現の中にある輝きを収録したアルバムが完成
——新体制のPARADISESとしては初の音源になりますね。今作はどのようなものになったと感じていますか?
PARADISESの曲は、女の子らしいキラキラしたものが多かったのですが、今までと同じ路線の曲もありつつ、よりエモーショナルな曲や、ちょっとふざけた曲、青春ロックぽいものなど、幅広い楽曲が詰まったアルバムになりました。
——「PARADISES RETURN」は、セリフからの始まりでインパクトがありました。
歌詞もワード1つ1つがすごく強くて《金よりも 大事なことは》なんて、普段は言葉にして言うことはないので衝撃でした(笑)。でも、内容としては、諦めない気持ちを歌っていて気付かされることが多かったです。普段から初心や原点に立ち返るようにしているのですが“本当に妥協せず頑張れているのかな?”と、改めて考えさせられる曲になりました。
——レコーディングはいかがでしたか?
レコーディングでは、全員が1曲を通して歌ったあとに歌割りが決まるのですが、印象的なセリフ部分はキラ・メイが採用されています。残念な気持ちはありますが、グループ内で競い合えることは良いことだと思いますし、通して歌うことで楽曲に対してちゃんと向き合うことが出来るのも醍醐味だと思っています。
——テラシマさん作詞の「アレキシサイミア」は、どこからテーマが生まれたのでしょうか?
歌詞を書く前に、ちょうど同級生と会う機会がありました。中高一貫の女子校に通っていたこともあって、ずっと同じ仲間と学校という限られた世界にいたので、私も含めちょっと感覚がズレている子が多いんです(笑)。それが個性でもあり面白いなと思うんですけど、外の世界に出て、初めての感情や出来事に出会った時に感じる言葉に出来ない違和感を、曲調に合わせて少しふざけた感じで歌詞にしました。
——独特なワードが詰め込まれていますね(笑)。
分かりやすい言葉を使って歌詞を書くのが苦手で、ちょっと回りくどいというか、言葉で遊んでぼかすのが好きなんです。この曲は、言葉がメロディにハマっていったので、パズルみたいな感覚で楽しみながら一気に書けました。
——他メンバーの作詞曲も収録されていますが、どんな印象を受けましたか?
新加入のウタウウタが作詞した「cry wanna」は、言葉を上手に使っていて、字面で見た時のパンチ力がすごかったので“天才だ!”と思いました(笑)。それと、ナルハワールドが作詞した「消えないもの」も含め、気持ちの揺らぎを描いた歌詞が意外と多いんです。思春期や多感な時期の感情を表現するからこそ生まれる輝きもあると思っているので、少しでも共感してもらえる部分があると嬉しいです。
“想像がつかない未来のほうが面白そう”と思って飛び込んだ音楽の世界
——仕事との向き合い方についても伺っていきたいのですが、この世界を目指したきっかけは?
最初はアイドルになりたいとは思っていなくて、学生時代は資格のある仕事を目指していました。でも、流れで決めた部分が大きくて悩んでいた時に、“自分でも未来が分からない仕事をしたい!”と思ったんです。そこで見つけたのがWACKのオーディション。しかも応募締め切り当日だったので、ちょっとした出来心と衝動で飛び込んでしまいました(笑)。
——“未来の分からないものに飛び込みたい”とは、かなりのパワーワードですね(笑)。
あはは、そうですよね。堅実な仕事も魅力的ですが、“想像がつかない未来のほうが面白そう”と思ってしまって。今しか出来ないことをしたいという一心で飛び込みました。でも、この世界に入った時は、分からないことばかりで未来が不安になったり、同級生がバイトや飲み会をしている姿を見て“そういう日常も過ごしてみたかったな”と羨ましかったり……すごく矛盾しているんですけど、欲張りなんだと思います(笑)。
——そこで迷いが生まれたりは?
それはありませんでした。飛び込んでみたら、歌やダンスなど覚えることが多かったのと、上京して一人暮らしをしていたので、不安と向き合っている時間がなかったのが良かったんだと思います。とにかく毎日、目の前のことをガムシャラにやるだけで精一杯でした。
失敗や問題にぶつかっても諦めない先輩たちの姿が衝撃だった
——新しい環境はどのように感じましたか?
歌やダンス以外にも何もかもが分からないことだらけで、最初は自分にファンの方がいてくださるという状況にも理解が追いつきませんでした(笑)。自分は応援していただいたりお金を払ってまで会いに来ていただけるような人間だと思っていなかったので“私はその気持ちにどうやって返していけばいいんだろう”と悩みました。
――どのように答えを見つけたのでしょうか?
先輩たちがファンの方たちに接する姿を見て感じたことを、自分なりに噛み砕いて消化していきました。ほかにも、練習方法や自分との向き合い方など、相談をするというよりは、先輩たちの取り組む姿勢を見て感化されたところは大きかったです。
――特に感化されたのはどういった点でしたか?
全員が必死で取り組んでいて何かにぶつかることがあっても諦めないんです。今まで自分から進んで何かをするという経験がなかった私にとっては、すごく衝撃的でした。毎日その中で刺激を受けて、自然とこの仕事への思いが強くなっていったので、先輩たちに出会えていなかったら、どこかで妥協してすぐに辞めてしまっていたかもしれないなと思います。
歌への苦手意識が強く、表現者として“歌いたい”と思えるまでが一番辛かった
――ライバルばかりの中で、誰かを羨ましく感じたりはしませんか?
人と比べてしまうところがあるので、毎日誰かが羨ましいです(笑)。でも、そこで悔しいと思えることを反骨精神にして頑張ろうと思えるので、きっと一生この思いは払拭されないと思います。
——向上心になっていると。では、この仕事を始めて苦手なことを克服した経験はあれば教えて下さい。
歌が下手なことがコンプレックスでした。ライブはしたいけど、歌のパートはいらないと思うくらい苦手で、ボイトレに通うのも憂鬱でした。先生と1対1で自分の声を聞いてもらうことも辛かったですし、練習をしてもなかなか上手くならないのがもどかしくて、ボイトレの1時間を泣いて過ごしたこともあります。
――どうやって乗り越えたのでしょうか?
先生に「あなたはどうなりたいの?」と聞かれました。その時、私は何も答えられなくて…。そこで、改めて“何が好きなのか”“どうしていきたいのか”を考えるようになりました。
――その結果“何が好きか”を見つけられたと。
はい! まずは作詞が好きで、歌詞に込めた思いを表現するには、やっぱり自分で歌いたいと思いました。それと、何よりライブが特別な時間で、その中で重要な歌というものを諦めるわけにはいかないとも思えたので、そこから少しずつ歌に対して向き合えるようになりました。
応援してくれる方たちの背景も感じられるような接し方をしていきたい
——この仕事を通して、テラシマさん自身もどんどん変化しているんですね。
そうですね。もっと言うと、昔は自分のことだけで必死でしたが、経験が増えて少し視野が広がった時に、ファンの方たちがいてくれて、たくさんのスタッフさんが関わってくれて、仲間や、応援してくれる家族がいる。その有り難さも改めて感じるようになり、周囲の人たちのためにも頑張りたいと思えるようになったことも大きな変化です。
――1人では、今のテラシマさんは存在しなかったと。
そう思います。それもあって、昨年は思うようにライブ活動が出来なかったことで、初めてこの仕事を諦める選択も頭をよぎりました。なんのために練習しているのかが分からなくて怖くなってしまったんです。最初は“自分の人生を変えたくて”始めたことなのに、気づけば、自分のためだけでは頑張れないことがたくさんあることを知りました。
――受け止めてくれる人の存在は大きいですね。
はい。ライブは2時間弱だとしても、チケット代や、会場に来るまでの移動時間、あとはCDを買って下さったり、私たちのことを考えてくれている時間もあって。これからも、そういったファンの方たちの背景にある思いも忘れずに活動していきたいと思っています。
テラシマユウカ(PARADISES)
テラシマユウカ、ナルハワールド、キラ・メイ、ウタウウタからなるアイドルグループ・PARADISES(パラダイセズ)。所属する音楽事務所WACKが2020年3月に主催したオーディション合宿最終日に、GANG PARADEが分裂され、“GO TO THE BEDS”“PARADISES”にわけた新グループが結成されることが発表される。同年7月にフルアルバム『PARADISES』をリリース。9月に横浜・関内ホールにてグループ初のホールワンマンライブを開催。さらに、12月にウタウウタが加入し新体制で活動中。
◆PARADISES Official Site:https://paradises.jp/
◆テラシマユウカ Official Twitter:@YUYU_PARADISES
企画・編集:ぽっくんワールド企画 撮影・河井彩美 取材・文:原 千夏
※文中の社名・所属等は、取材時または更新時のものです。