里吉うたの(BEYOOOOONDS)インタビュー「練習は正しい知識を勉強してから。悩みも理論的に考えて解決策を見つけます」
ハロー!プロジェクトの異能派グループ・BEYOOOOONDSの中で、ダンススキルと女子力が際立つ里吉うたのさん。メジャーデビュー3周年を経て、2ndアルバム『BEYOOOOO2NDS(ビヨーンズセカンド)』発売を前にインタビュー。話し方はかわいらしくも発言内容は鋭く、クレバーさも感じました。
5歳からストリートダンスにすべてを注いできて
――BEYOOOOONDSに加入したオーディションは、高3のときに「就職試験のつもりで受けた」と発言されていました。他の進路は考えていたんですか?
普通に進学するつもりで、学校見学にも行ってました。5歳からやっているダンスをお仕事にできたら一番良かったんですけど、厳しい世界ですから。将来は公務員になって、余暇でダンスを楽しもうと思っていて。図書館の司書さんとかに興味がありました。
――高校生活は充実してました?
初めて部活に入りました。中学まではダンスひと筋でしたけど、高校生になって少し時間に余裕ができて、茶道部がいいかなと。もともと日本文化に興味があって、和太鼓や和装の着付けもしていて。茶道で礼儀作法や所作を学べば、将来活きるなと思ったんです。
――アイドルも好きだったんですよね?
小学生の頃にハロプロのファンになりました。中学生のとき、牧野真莉愛さんと羽賀朱音さんがモーニング娘。さんに入って、「私たちの世代もアイドルになる時代なんだ」と思いましたけど、私がやっていたストリートダンスとアイドルは全然違うので。その頃は自分の中で結び付きませんでした。
でも、高3になって、自分が本当にやりたい仕事を考えた結果、実は最も近かったのが、ずっと見ていたアイドルだったんです。
――そんな中で「ONLY YOUオーディション」を受けたのは、募集要項に「誰にも負けない特技がある」が謳われていたこともあって?
ハロプロのオーディションは年齢の上限が17歳くらいのことが多いんですけど、そのときは22歳までで、最後のチャンスだと思いました。同時に、すべてを注いできたダンスを見てもらえるのと、お芝居もするグループになる様子だったので。私は演技も勉強していたから、「これしかない!」と直感しました。
驚きの振付も演じる気持ちだとしっくりきました
――ダンスを5歳で始めたのは、ご両親が洋楽好きだった影響だそうですね。
車の中でも常にいろいろな国の音楽が流れている家庭だったのは、大きかったです。小学生の頃からジャネット・ジャクソンさんが大好きで、髪を巻いたり寄せにいってました(笑)。同じ次元に生きているとは思えないカッコ良さ。ブラックミュージックで活躍されている方は憧れでした。
――アイドルダンスはやっぱり違いましたか?
ストリートダンスにもいろいろなジャンルがあるんです。ヒップホップ、ジャズ、ファンクとステップから違っていて。その中で、ヒップホップでは重心は下げても、踵はずっと上げていたり、アイドルダンスに活かせることもありました。踵を浮かしたまま踊れるように、体幹は鍛えてきたので。
ハロプロで視覚的にもリズムを感じられるダンスを習得すると、さらに気持ち良く見てもらえそうだったので、リズムはめちゃくちゃ練習しました。
――BEYOOOOONDSはガニ股とかコミカルな振りが多いですよね。
他のアイドルさんがなかなかやらない動きが多くて、最初はビックリしました(笑)。1曲の中で1人1人が違う動きもするから、頭も使うし集中力も必要。でも、舞台の配役として演じるような気持ちで踊ったら、しっくりきました。
歌うときの体のメカニズムから知りたかったんです
――歌のほうが大変さを感じましたか?
私はハロプロに入るまで、人前で歌ったことがないまま、18年生きてきたんです。それが突然仕事として歌う状況には、恐怖がありました。「大丈夫かな?」と思いながら、最初のステージに立ちましたけど、BEYOOOOONDSで歌のうまい子たちと並んで、アイドルをやっていくと決めてきたので。覚悟を持って、いっぱい練習をしました。
――独自の練習もしましたか?
正しい知識がないことには、始まらないと思っています。歌い方をきちんと勉強したくて、いろいろな先生に教わりに行きました。その中で私に合うことやグループ内でのポジションを考えて、まず知識を頭に詰め込む感じでした。
――『科捜研の女』が好きなだけに(笑)、ただたくさん練習するより、理論的な裏付けから入ったんですね。
確かに理論的なことは好きかもしれません。歌うときの体のメカニズムから知りたかったんです。どこに響くように意識するのか、どこで呼吸をするのか。そのうえで練習することが多かったです。
頭の中で自分と自分を対話させています(笑)
――メジャーデビューから3周年を迎えましたが、アイドル活動の醍醐味はどんなときに感じますか?
今、コンサートでお客さんは歓声を出せませんけど、その分、想いをすべて拍手に変えて届けようとしてくださるのを、すごく愛おしく感じるんです。初めての日本武道館では、お客さんたちもたくさん準備をしてきてくださいました。
――「涙のカスタネット」で叩くカスタネットの練習とか。
センターステージで四方八方から聞こえてくる拍手が嬉しくて、アイドルと応援してくださる方の良い関係性をすごく感じました。
――最近は落ち込むようなことはありませんか?
そういうとき、私は頭の中で、自分と自分を会話させます(笑)。「どうして悩んでいるんですか?」「こういうことができないんです」「できたら何をしたいんですか?」「今後こうなりたいんです」みたいな。
そうして順序立てて考えを組み立てていくと、解決策が出てきたり、解決が難しいとわかって、折り合いが付く場所が見えたり。自分の中でピースがハマる瞬間があります。
――やっぱり理論派ですね。
納得できないことをしたくないんです。アイドルをやっていると時間は有限と感じるので、楽しいことをより多くやるためにはどうしたらいいか、考えています。
自分の裏側をちょっとずつ見せて共感してもらえれば
――グループ内での自分の立ち位置は見えてきましたか?
私は「こういうことを頑張りました」とか言うのが、すごく苦手だったんです。発展途上の姿を見られるのが、恥ずかしい気持ちがあって。でも、そういうものを出したほうがいいことに気づきました。
歌が苦手だったからこそ、成長を見て喜んでもらえる。突然オーディションで入った大人として、そうした部分を応援してくださる方が多いとわかったんです。だったら、出そうと。自分の裏側をちょっとずつ見ていただいて、共感してもらうポジションかなと思っています。
――ブログでメイクのことを書いたりもしていますね。
外見にコンプレックスがあって、メイクで改善を重ねているので、アイドルとして完璧を見せたい気持ちはあります。でも、その過程を時々出しています。
――女子力の高さも持ち味ですし。
そこで覚えてもらうことも増えました。男女関係なく参考にしてもらえる部分があると思うので、メイクやお洋服に関する発信は大事にしています。
絶対やりたかった台詞に6パターン用意しました
――2ndアルバムには多彩な新曲が収録されましたが、お気に入りはどの辺ですか?
わかりやすいことに、「虎視タンタ・ターン」と「Hey!ビヨンダ」です(笑)。ファンクやニュージャックスウィングが好きで、まさかアイドルになって、このタイプの曲が歌えると思ってなかったので、ワクワクしました。
――「虎視タンタ・ターン」では「仔猫ちゃんって思ってた?」という台詞を担当しています。
デモを聴いたときから、「絶対ここは私がやる」と勝手に決めて(笑)、6パターンくらい携帯に録音して練習しました。甘々、セクシー、嘲笑、強め…。レコーディングで全部やってみて、“甘め×嘲笑”みたいなテイクが採用されて。歌割りに“里吉”と書いてあるのを見て、ガッツポーズをしました(笑)。
――「GOGO大臣」では秘書役をやっています。
そこは最初から私がやるということで、大人っぽくいこうと思ったんです。でも、それより私らしくヨイショでいいかなと。メンバーを「かわいいね」「それイイね」と誉めるタイプなので、その方向性で大臣の江口紗耶ちゃんをヨイショしました(笑)。
――歌で頑張ったことはありました?
「虎視タンタ・ターン」は私のフンワリした声質をどう落とし込むか、すごく考えながらレコーディングしました。逆に「Never Never Know~コメ派とパン派のラブウォーズ~」はBEYOOOOONDS史上、最もやさしい曲調で、私の頑張りどころかなと。フンワリした中にリズムを立たせるのは苦労しました。
目標を明確にして過程をちゃんと組み立てます
――「虎視タンタ・ターン」には<あれしたい これしたい>という歌詞もありますが、うたのさんもしたいことは多いですか?
すごくあるほうだと思います。お芝居も好きだし、ラジオや雑誌もやりたくて。アクセサリーも自分でパーツから作るところまで手を出し始めました。メンバーの衣装に活かしたりグッズにできたらと、夢は膨らんでいます。
――浴衣を反物から作ったこともあるとか。
作りました。手縫いも好きですけど、ミシンも家と学校で別々に覚えて、今もやっています。私は準備を完璧にしておきたいんです。親に「これから始めるのに道具はこんなに揃っているの?」とビックリされます(笑)。
――そうした夢を叶えるために、大事だと思うことはありますか?
私は最終的な目標を明確にしてから、取り掛かることが多いです。「こうなるために今こう動いている」とわかっていると楽しくなりますし、そこがモヤッとしていると、「何のためにこれをしているの?」と道を見失いそうになるので。きっかけは直感でも、そこに行くまでの過程はちゃんと組み立てることを大事にしています。
心掛けとしては、悲観しないことですかね。私も人と自分を比べがちですけど、そういうときは自信がないから、人のほうがよく見えるんです。それで落ち込むより、自分自身をどれだけ高められるか、常に希望を持つことが一番だと思います。
里吉うたの(さとよし・うたの)
2000年9月22日生まれ。東京都出身。2018年に「ハロー!プロジェクト“ONLY YOU”オーディション」に合格して、BEYOOOOONDSに加入。グループ内ユニットSeasoningSに所属。2019年にシングル「眼鏡の男の子/ニッポンノD・N・A!/Go Waist」でメジャーデビュー。同年の日本レコード大賞で最優秀新人賞。舞台『演劇女子部「ビヨサイユ宮殿」』(11月11~20日/こくみん共済 coop ホール スペース・ゼロ)に出演。
◆里吉うたの OFFICIAL Blog:https://ameblo.jp/beyooooonds/theme-10108019359.html
◆BEYOOOOONDS OFFICIAL Twitter:@BEYOOOOONDS_
◆BEYOOOOONDS OFFICIAL Instagram:@beyooooonds_official
◆BEYOOOOONDS OFFICIAL SITE:http://www.helloproject.com/beyooooonds/
企画・編集:ぽっくんワールド企画 撮影:河野英喜 取材・文:斉藤貴志
※文中の社名・所属等は、取材時または更新時のものです。