「学生でも社会人でも、好きなことを思い切りやってほしい」│ ご近所お手伝いコミュニティサービス「ANYTIMES」代表取締役 角田千佳さん【若手女性起業家の学生時代】
インターネットを利用した新しいお手伝いコミュニティサービス

ANYTIMES − ご近所お手伝いコミュニティとは
――角田さんは28歳のときに株式会社エニタイムズを起業しましたが、どのような事業を行っているか教えてください。
「個人間で依頼をしたい人と仕事をしたい人をマッチングするお手伝いコミュニティサービスを運営しています。例えば、掃除や犬の散歩など日常の家事や家具の組み立てなど“誰かに手伝ってほしいこと”をインターネットを通じて依頼し、それを見たサポーターが仕事として請け負います。価格や作業時間は依頼者とサポーターが直接交渉して決めるので便利屋さんよりも手軽でリーズナブルに利用できるし、サポーターも空いた時間で稼げるという仕組みです。また、依頼者・サポーターのどちらにもなることができます」
――具体的にどんな依頼があるんですか?
「一番多いのは掃除や料理を作るなど家事周りの依頼ですね。他にもコンサルタントにお願いするほどではないけれどキャリア相談をしたいという依頼や、花火大会の席取りの依頼があるなど本当に様々です。花火大会の件では依頼した側は席が取れないと諦めていた花火大会に行けて良かったという声があがり、サポーターの方からは場所取りをしている間、本を読んでいるだけで依頼料の5000円がもらえて嬉しいという声をいただきました」
――お互いがつながることでメリットが生まれる仕組みなんですね!
「昔だったら隣近所の人に手伝ってもらったり、地域内での助け合いがあったと思いますが、それが希薄になった現代では、気軽にお手伝いをしてもらうことはなかなか難しいですよね。そこで、インターネットを使った新しい形としてお手伝いコミュニティサービスを普及させたいと思っています」
大学4年間は勉強よりもチアダンスに打ち込む毎日
――角田さんは学生時代からサービスを生み出して起業したいと思っていたんですか?
「いえ、学生時代は国連で働きたいと思っていたんです」
――国連ですか!?
「小学生の頃から、緒方貞子さんの活動に影響を受けて、発展途上国の持続可能な街づくりや開発援助の仕事をしたいと考えていました。ですから、大学も国際社会学を学べる学校を選んだんです」
――それで、大学時代は国際社会学をしっかり学んだわけですね。
「それが…勉強よりもチアダンスに夢中で(笑)。大学4年間はチアダンスに全力を注いでいました。小学生からダンスが大好きだったので、勉強したい学部があったことと、ダンスができるということもあったので入学した経緯があるんですが、いつしか勉強よりもダンスの方に比重が大きくなりまして…。だから大学時代の友達はほぼダンスの仲間ですね」
チアダンスの経験から学んだのはコミュニケーションを大切にすること
――チアダンスをはじめ、大学時代の経験が今に生きていることってありますか?
「ほぼ、チアダンスの経験になるんですけど、チーム競技ですから周りとのコミュニケーションをしっかり取ることの大切さは学んだと思います。私、もともとは人見知りですし、大勢とコミュニケーションをとるのも得意ではないんですよ」
――えっ!?社長なのにですか?
「はい。学生時代からみんなの輪の中に入ってワイワイするより、ひとりで黙々とダンスの技術を磨く方が好きなタイプ。それはいまでも同じで、正直、ひとりでいるほうが気楽です(笑)。
でも、チア時代に学んだのは“最低限”のコミュニケーションは大事だということ。最低限とは相手がどう考えているのか話を聞いて、自分の意見を伝えること。学生時代、私は自分の意見を伝えることをあまりしなかったんです。でも、言わないと絶対に伝わらないし、伝えないと、どこかしらにほころびが出てきてしまうと気が付いて、自分の意見を言うように心がけました。でも、最低限でいいと思います。人見知りも個性ですし、過度に人と付き合うこともないと思うので」
一度、企業に勤めたからこそ、新たな目標が生まれた
――大学卒業後は夢であった国連関連の仕事に就いたんですか?
「国連の仕事は長期的なものだったので、まずは社会を知るために一般企業で働いてから大学院に行き、国際公務員の試験を受けようと思ったんです。新卒で証券会社の営業をしましたが、2年半ほど働いたときにIT企業に勤める知人が子会社を立ち上げており、『新しい分野に挑戦してみないか』と声をかけて頂いたんです。その頃からビジネスを作っていくことにも興味を持っていたので、転職を。ここでビジネスがどう立ち上がって、成長していくかを身をもって学びました。
同時に国連に行くための大学院の勉強も始めていたんですが、知れば知るほど自分がやりたいことに近づくまでに時間がかかりそうだなと分かってきたんです。当たり前ではありますが、いきなり自分が希望する機関や仕事に就けるとは限りません。ならば、起業して自分がやりたいことをやったほうが柔軟にできて早いかもしれないと考えがシフトしていったんです」
――角田さんがやりたいこととはなんだったのでしょうか?
「小学生の頃から変わらず、街づくりに携わることです。そして、発展途上国の前にまずは身近な日本でも街づくりの課題は多くあると考え始め、エニタイムズのサービスを発案しました。エニタイムズのサービスを通して人や地域がつながって、新たな助け合いコミュティが生まれるきっかけになればと思ったんです。そして、きっとそこで生まれた街づくりのセオリーは、日本だけでなく発展途上国でも共通するものがあるのではないかと考えています」
自分が好きなことをやっているときが、人は一番、能力を発揮できる
――初志貫徹ですね。角田さんのようにやりたいことを仕事にするには、ブレずに強い意志を持つことが大切なんでしょうね。
「いえいえ、そんなに難しく考えることはないですよ。ただ、好きなことをやればいいんです」
――それだけですか!?
「人って自分が好きなことをやっているときが一番能力が発揮されると思うんです。私の場合は人の役にたっていることに喜びを感じるので、人や社会に役立つサービスを考えました。ここまでにくるのに様々な失敗をしましたけど、好きだったから失敗をしても“嫌”にはならなかったんです。きっと好きじゃないことなら嫌になって辞めているハズなので」
――確かに! 例えば、チアダンスでケガをしても、好きだったら、ケガが治ったらまた踊りますよね。
「そういうことです(笑)。だから、今、学生のみなさんが“やりたい仕事に就きたい”と思うなら、自分が本当に好きなことは何かを探してほしいですね。これから働き方はどんどん変わっていきます。いままでは会社に守られて働くことが当たり前でしたが、これからは一人ひとりが自立して働けるようなインフラやテクノロジーがどんどんできていますから。個々が好きなことで稼げる環境がより広がると思いますので」
学生だろうが社会人だろうが自分は自分。社会の枠に惑わされないで!
――好きなことを仕事にするために大事なことってなんだと思いますか?
「学生から社会人になるとき、まったく違う世界に飛び込むようで肩に力が入る人が多いと思うんです。そうすると、社会人の常識とか社会の枠に振り回されて、自分が本当は何がしたいかを忘れてしまいがち。学生だろうが社会人だろうが自分は自分。社会人になったからといって自分が変わるわけではないですから、社会の枠に惑わされずに自分がやりたことをやってほしいですね」
――最後に学生時代にやっておいたほうがいいことがあれば教えて下さい!
「う~ん、ないですね」
――えっ!!!ないんですか?
「“学生時代にこれをやっておかないと”なんて思わなくていいと思いますよ。学生時代にやったことがプラスになるかマイナスになるかは将来の自分が決めることなんで、今はわかりませんから。ひとつ言えるとしたら、学生だろうが社会人だろうが生きているなら好きなことをやればいい。これだけですね」
■プロフィール
角田千佳(つのだ ちか)さん
株式会社エニタイムズ 代表取締役 Founder,CEO
https://www.any-times.com/
取材・文:中屋麻依子
※文中の社名・所属等は、取材時または更新時のものです。