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2017年12月13日

【アノ人の学生時代】milieu編集長・塩谷舞さんインタビュー『今って、私のような人が働きやすい環境になってきていると思う』

塩谷舞 milieu 編集長 Web マガジン 美術 デザイン タウンワーク タウンワークマガジン

あらゆる視点から“今”を読み解き、新たなムーブメントを生み出していく、Web界隈のクリエイター達。その中でも、SNSを中心に活躍し、今の大学生にとって“気になる先輩世代”となる著名人にインタビュー。好きなことを仕事にするために、彼らはどのような道を歩んできたのか? この連載では、彼らの学生時代の話を通して夢を叶えるヒントを探っていきます。

第1回の“気になるアノ人”は、塩谷舞さん。20代で独立してオピニオンメディア『milieu』を立ち上げ、Twitterで話題になっていた南三陸の#buzzcamp(多くのクリエイターを集めて南三陸に赴き、現地の情報を発信したり、課題解決のためのアイデアを出し合う合宿)を主催するなど、精力的に活躍するWeb界注目のクリエイターです。独自の切り口で発信し続ける彼女に、学生時代のバイト経験から今の仕事のやり甲斐まで、じっくりと話を聞きました。

高校時代、絵の上手い友達との出会いが夢への始まり

塩谷舞 milieu 編集長 Web マガジン 美術 デザイン タウンワーク タウンワークマガジン

――美大出身だそうですが、学生時代はどういう勉強をしていたんですか?

“美大に行く”って言うと今でも“画家になるの?”って言われがちなんですが、私が行っていた京都市立芸術大学 美術学部の総合芸術学科というところは、学芸員やキュレーター(博物館・美術館の展覧会において、企画・構成・運営などを司る管理責任者)、美術雑誌の編集者といった、アートを生み出す人を支えたり、広めたり、プロデュースする人になるための勉強をする学科でしたね。

もともと、高校1~2年くらいまでは私もクリエイターとして美大へ入学することに憧れていたんです。演劇もピアノも絵も好きだったので。でも、得意だからこそ、もっと凄い人の才能には敵わないな、と思って……。一度は美大を諦めて、総合大学の商学部を目指しました。

そんな私が今の仕事を志したのは、高3の時。友達の描いた絵の上手さに衝撃を受けたんですよ。私よりも何百倍も上手。でも同時に、大人しい彼の発信力の弱さにもどかしさを感じて。そういう才能はあるけど、発信力の弱い人をサポートできる仕事がしたいなと、高3の11月になって、再び美大を目指すことにしたんです。

――すごくギリギリだったんですね!?

総合大学の商学部とは受験科目もガラッと変わるし、突然数学などの受験科目が増えたので、毎日必死になって勉強しましたね。センター試験が終わってからは、1日16時間くらい実技試験のデッサンを練習していました。ただそれでも、たった数ヶ月の準備で受かるはずがないから、“1年目は記念受験だ!”って感じだったんですけどね。そしたらギリギリ、現役で滑り込み合格することができたんです。

ただ、短い準備期間で入ったので、入学当初はやっぱり大変でした。私が入学した頃の京都芸大は、過半数が浪人生。だから、“(クリエイターの)みんなの才能を活かすにはどうしたらいいんだろう?”っていう想いもありつつ、自分よりも美術やデザインに関する知識量も多くて、努力もしてきた同級生達に劣等感ばかり感じてしまったんですよね。その環境に溺れてしまって、当時はバイトばかりしていました。現実逃避です(笑)。

小論文など、発展的な学習が得意な学生だった

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――どんなバイトをしていたんですか?

これが初バイトだったんですけど、最初から2つ掛け持ちしていて。1つめは、地元(大阪)の個別指導の塾で、自分が得意とする小論文などの先生。大学受験を控える高校生に向けて、こういうふうに書いたらいいよっていうのを教えていました。

もう1つは、今はもう閉店してしまったんですけど、河原町(京都)の阪急百貨店の中でアパレルのバイトですね。アパレル業界に興味はあったけど、就職したい業界とは違ったので、学生時代に1度は経験してみたいなと思って(笑)。京都の真ん中にある店だったので、観光客の方も多くて、外国の方や観光客の方相手に毎日接客をしていました。

――じゃあ、今の仕事に活きるようなバイトをあえて選んだわけではないんですね。

そうですね。ただ、すっごくお恥ずかしい話なのですが、私、基本的な仕事の能力がかなり低いんですよ……。朝ちゃんと起きて出社するとか、レジを間違わずに打つとか、みんなが当たり前にできることができないんです。ちゃんとやらなきゃ、頑張らなきゃ、って何度も反省しても、信じられないようなミスを毎日のようにやらかしてしまう。小論文を教えるっていう発展的な学習はできるけど、それを毎日日報に書くのもすごく苦手で……。

――なるほど。ルールに基づいたことをするよりも、自分で何かを生み出すことに興味があったということでしょうか。

良く言えばそういう感じで、悪く言えばちゃんとした仕事が苦手すぎて、社会のルールから逃げちゃったんですよね。だから大学の3年生以降は、いろんな美大に通う仲間とアートマガジン『SHAKE ART!』を創刊したり、百貨店で展覧会の企画をさせてもらったり。ゼロから資料を作って、営業活動をして、社会に参加できることにやっと楽しさを感じられました。多分、一般的なアルバイトだけをやっていたら、劣等感が募って、職場に行くのが怖い……という感じだったかもしれません。

でも今って、私のような大学生も働きやすい環境になってきていると思うんです。バイトとは少し違うかもしれないけど、私が学生だった10年前と違って、スタートアップ(新たなビジネスモデルを提案し、急成長を狙う若い会社)が増えているし、インターンにしても、時給950円で時間内で働くっていうんじゃなく、家でも自ら考えて仕事してねっていうのが当たり前になってきていると思うし……羨ましいなって思いますね。

“インターネット、なんて良い世界なんだ!”と思いました(笑)

塩谷舞 milieu 編集長 Web マガジン 美術 デザイン タウンワーク タウンワークマガジン

――たしかに、10年前とは働き方がかなり多様化しましたよね。いろんな意味で、1人1人の影響力が強まっているというか。

10年前はTwitterもそんなに普及していなかったし、クラウドファンディングもほぼありませんでした。営業するにも自らビラ配りや、訪問営業をしていたので、今は可能性が広がっているなと思います。

――ただ、今のお話の流れだと、そのまま『milieu』の立ち上げに繋がりそうですが、2012年に東京にあるカルチャーニュースサイトを運営する会社に入社されますよね。もともと雑誌を作っていた塩谷さんが、Webに移行し、就職という道を選んだのはなぜなんでしょうか?

『SHAKE ART!』を作っていた時は、キャリーバックに雑誌を詰めて夜行バスで東京に行って、表参道とかでも配っていたんですけど、“紙、重いな!”と思ったんです(笑)。“紙よりも、インターネットのほうが軽い!軽いのは正義だ!”と。まぁ、愛着のある記事が物として残らないというのが、インターネットの悲しいところなんですけどね。それでも、費用対効果を考えると魅力的だなって。

私が美大生だった2009年頃には、Twitterでの活動も頑張り始めていて、自らギャラリーや美術館に足を運んで営業すると門前払いされていたのに、Twitterで“広告1枠空いてます!”ってツイートすると、名乗りを挙げてくださる会社の方が何人もいらっしゃったんですよ。そうやって反応してくださる方は、もともと『SHAKE ART!』の読者だったりもするから、一から説明する必要もないし、“インターネット、なんて良い世界なんだ!”と思いました(笑)。

でも、美大時代の経験だけだと、知識も、人脈も足りないところが多くて。ビジネスのことも全然わかっていなかったから、“志を近くしていけるちゃんとした組織はないかな?”と探した結果、前職の会社と出会いました。

話題性を求めて書き始めたブログが7万PVを獲得

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――この会社への就職を決めたキッカケはなんだったんですか?

社長のブログが熱かったからですね。人柄が滲み出ているというか。志が自分と近くて、近いんだけど、ずっと先を行っている方だったから、“こういう人と仕事をしたら、私にとってすごくいいだろうな”って。その時はまだ小さなベンチャー企業だったので、新卒を募集していなかったんですけど、インターンをしつつ、入れてもらえるようにアピールしたんです。

入社してからは、この会社が、舞台や音楽といったカルチャーを取り扱うサイトの運営だけでなく、制作会社として大企業のWebサイトやパンフレット制作も担っていたので。正確性が重要視される職種なので、正直、おそるおそるではあったのですが……2年間はずっと、Webディレクターという仕事をしていました。

――具体的にはどういう仕事内容なんですか?

大企業に行ってプレゼンして、受注したら案件が円滑に進むように進行管理をして……という。大学時代の私だったら、一瞬で逃げ出しそうな仕事内容です(笑)。でも、この時ばかりは逃げ出せないから、必死で勉強して、ガムシャラに仕事をしていました。しかもそれまではエンドユーザーとしてインターネットを楽しんでいたのが、この2年間で、インターネットの裏側の部分を、お給料をいただきながら勉強させていただいたようなもの。それは今の自分の強みでもありますね。

ただね、当時は、どれだけ時間をかけて頑張ってWebサイトを作っても世の中的にはあまり話題にならないんですよ。バズらないんです。もちろん、企業のコーポレートサイトって、バズるために作っているわけではないから、当然のことですよね。だけど、インターネットは双方向にやり取りできることが醍醐味だから、やっぱり私はタイムラインで話題になるようなことを手がけてみたかった。そう思って、個人のサイトでブログを書き始めるようになって。ある時、『面白法人カヤックの、1社だけの合同説明会はやはり面白かった。』っていうブログがものすごくバズって、ひと晩で7万PVくらいいったんです。

――7万……!

そう、それが転機でしたね。Twitterのフォロワーも突然増えたのですが、現実世界でも、私のことを知ってくれる人がどんどん増えていったんです。そうすると、会社の広報としても自社の魅力を伝えやすくなってきて。会社にいた最後の1年間は、PRとして働いていました。そして入社して3年経った頃に退職して、フリーランスになりました。その後『milieu』を立ち上げて、ちょうど1年経ったところです。

自分が信じるものを、自分の言葉で広められることは幸せ

塩谷舞 milieu 編集長 Web マガジン 美術 デザイン タウンワーク タウンワークマガジン

―― では、ネットで顔出しをして仕事するリスク、やり甲斐はどういったところでしょうか?

もちろん、インターネットで顔を出して発信していると、記事とは関係のないところで中傷されることもあります。だから“この仕事は楽しいから、みんなにオススメだよ!”とは言えません。ですが、これまで“この雑誌を買おう”っていうふうに雑誌側にファンがいたと思うのですが、これからはより“このライターだから読もう”と、コンテンツ側から入ってくる人が増えていいくはず。そう考えると、私が書いた記事だと示すことや、ライターとして覚えてもらうのはすごく大事なことだし、顔もその1つの手段、といった感じですね。

その上でやり甲斐を感じるのは、やっぱり、自分が紹介したイベントに人がたくさん集まるのを、目の当たりにした時や、紹介したアーティストの作品が多くの方に知れ渡っていく時。高校時代に感じていた“なんでこの子は絵が上手いのに、注目してもらえないんだろう”っていうジレンマを今解消できているのかな。自分が“これがいい!”って思ったものをみんなにも注目してもらえるっていうのは、10年前の環境、10年前の自分だったらできなかったこと。自分が信じるものを、自分の言葉で広められることは本当に幸せだし、楽しくやっています(笑)。

■Profile
塩谷舞

アート、デザイン、音楽、映画、ファッション、文学、映像、舞台、デジタルアート、伝統芸能など、あらゆるジャンルを取り扱うカルチャーWebマガジン『milieu』の編集長。1988年、大阪・千里生まれ。京都市立芸術大学 美術学部 総合芸術学科卒業。大学時代にアートマガジン『SHAKE ART!』を創刊、展覧会のキュレーションやメディア運営を行う。2012年にCINRA入社、Webディレクター・PRを経て、2015年からはフリーランスとして執筆・司会業などを行っている。

Twitter:@ciotan
Blog:http://ciotan.com/
Milieu:http://milieu.ink/

編集:ぽっくんワールド企画 撮影:河井彩美 取材・文:斉藤碧

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※文中の社名・所属等は、取材時または更新時のものです。

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