俳優 栗山 航さんインタビュー『仕事に対して向上心をもったとき、芝居がずっと楽しくなった』
カルト的な人気を誇る伝説的ドラマ、『牙狼』で主役の道外流牙を演じる栗山航さん。この大役をデビュー後すぐに射止めたことで、うれしい反面、戸惑うこともあったそう。そんな栗山さんの葛藤の日々や、それを超えた今の仕事に対する想いなどを聞いてみました。
いつも挑戦せず、世界を狭めていた自分を奮い立たせるため芸能界へ
――栗山さんがこの世界に入ったきっかけはなんだったのでしょうか?
きっかけは紹介なんです。それまで、すごく内気な性格で何かに挑戦する前に「自分には無理そうだ」「これは苦手かも」と思うタイプで、知り合いから「芸能界に興味ない?」と聞かれたときも、いつも通り「無理だよ」と断ろうと思っていました。当時、大学生だった僕は、これまでの自分を振り返り「いつも挑戦することなく、自分の世界を狭めてきたな」と感じ、思い切って一歩を踏み出してみたんです。
――これまでと違い、一歩を踏み出したということは、芸能界に興味があったんですか?
いえ、まったくありませんでした。でも、自分の気持ちが前向きになったタイミングでもあったので、一歩を踏み出そうと思ったんです。そうしたら、予想外に大変で…。
――どんなところが?
事務所に所属してから演技レッスンに通い始めたのですが、人前で声を出すのがとにかく恥ずかしくて。そんな状態なのに「牙狼」のオーディションの話がきたんです。僕としては、「まだ、早すぎでしょ!」という感じでしたが、仕事ですから、断るわけにもいきません。そこで、受けてみたらまさか合格したんです。
演技が苦手だったのに『牙狼』のオーディションに合格!
――すごいですね! きっと栗山さんに何か光るものがあったのでは!
いまだになぜ僕が受かったかわからないままです(笑)。とはいえ、受かってからがレッスン以上に大変で。演技について右も左もわからない状態で「恥ずかしい」と思いながら演技をしていました。「このセリフ、言うの恥ずかしいな」など、自分を偽りながら芝居をしていました。ここだけの話、最初の頃はひどい演技だったと思います。
――そんな状態からスタートした『牙狼』は4年続いています。その理由はなんでしょうか?
撮影が始まって3ヵ月はひたすら“セリフを忘れずに言うこと”に必死で、演技まで頭が回らない状態でした。でも半年ぐらいたった頃、自分は役者を仕事にしているのだから、もっと芝居に対して向上心をもたないと、と思い始めたんです。
アクション部の方の「この世界はすごく楽しい」の一言に背中を押された
――仕事に対して向上心が出たきっかけを教えてください。
当時、大学生だったんですが、この先どうするかを考えていたんです。役者で食べていくか、就職するかを悩んでいたときに、仲良くしていただいていたアクション部の方から「栗ちゃんは、大学卒業後、どうするの?」とズバリ聞かれたんです。そのとき、悩んでいる僕の表情を見たその人は「この世界はすごく楽しいよ」と一言だけいってくれました。その言葉で僕の気持ちが大きく動いたのです。
大変だけど楽しいと思えることも少しずつ増えてきていたころだったので、「楽しいことを仕事にする」のはなかなか出来ないことだから、僕には役者がぴったりなのかなと。このときに、大学卒業後は役者1本にしぼると決めました。
――どんなところが楽しいと思い始めていましたか?
みんなでひとつの作品を一生懸命つくることです。ひとりひとりが作品を良くするために、真剣に悩んで取り組んでいる。その世界が僕にとってとても魅力的にうつりました。
――最新映画『牙狼〈GARO〉神ノ牙-KAMINOKIBA-』では、4年前とくらべて成長した気がしますか。
『牙狼』の新しい作品に携わるたびに毎回、成長してパワーアップしたものを見せたいと思っています。今作も練りに練ったアクションシーンや、感情の起伏などを丁寧に演じました。そして今回は多くのボランティアの方に支えられて迫力のアクションシーンが撮れたのも見どころだと思っています。
――大学生で芸能界に入られた栗山さんですが、アルバイト経験はありますか?
大学時代、塾のチューターをやっていました。高校生の相談をいろいろ聞いていましたよ(笑)。でも、一度ファストフードのアルバイトをしてみたくて。これぞ、バイトって感じがするじゃないですか(笑)。今の仕事にマニュアルがないので、一度、マニュアルのある接客をしてみたいですね。
■Profile
栗山 航(くりやま・わたる)
1991年6月15日生まれ、東京都出身。2013年、ドラマ『牙狼<GARO>~闇を照らす者~』主演、道外流牙にて俳優デビュー。近作に舞台『真田十勇士』、ドラマ『お義父さんとよばせて』など。2017年、男性エンターテイメント集団男劇団 青山表参道Xを結成しリーダーとなる。2018年1月12日よりミュージカル「戯伝写楽」に出演。
公式Twitter:@wataru_kuriyama
取材・文:中屋麻依子 撮影:八木虎造
※文中の社名・所属等は、取材時または更新時のものです。