女優・広瀬すずさんインタビュー『学生じゃなくなったことで仕事への意識も変化』
今、勢いのある若手女優のうちのひとり、広瀬すずさんが主演する「ちはやふる―結びー」がいよいよ公開に。日本アカデミー賞・最優秀助演女優賞を受賞し、日本テレビ系で放送された主演ドラマ「anone」での好演も話題になった広瀬さんに「ちはやふる」シリーズで得たもの、そして、女優というお仕事についての意識を伺ってきました。
役を超えた仲間たちとの出会いは一生ものに
――シリーズ最終章がついに公開ですね。瑞沢かるた部のキラキラした姿が印象的でした。
「ちはやふる―上の句―」と「下の句」の撮影から劇場公開まで、ちょうど自分の高校生活と期間がかぶっていたんです。そして、卒業した直後に今回の「結び」を撮影して。高校時代のほとんどはお仕事との両立で、プライベートでは青春らしい青春がなかったので、「ちはやふる」の中で“ザ・青春”っていうものを体験させていただきました。そして、作品を通して、役を超えた大事な仲間たちと出会えたので、それは私にとってすごく大きな出来事になりました。
――3作品を通して培った絆や友情がスクリーンからダイレクトに伝わってきました。
瑞沢オリジナルメンバーの野村周平くん、上白石萌音ちゃん、矢本悠馬くん、森永悠希くん、そして私と全員がAB型なんですよ。それを知った瞬間に全員が気を遣わなくなったんです(笑)。大切な人たちのために自分ができることをしようって思いあえる人たちだったから、皆の存在には本当に助けられました。
――初めて会ったときから気を遣わない雰囲気だったんですか?
全員でテーブルを囲んでいたときに、スタッフさんが誰かに「AB型だよね?」って言ったんですよ。そしたら、「自分も!自分も!」ってなって、そのことをかるた部顧問の宮内先生役の松田美由紀さんにお話ししたら、なんと美由紀さんまでAB型で、「気持ちワルッ」って言われて(笑)。そこから急激に仲良くなっていきました。
いい意味で「以前の自分」を捨てることができるように
――運命の瑞沢メンバーだったと。この3年間で広瀬さんの顔つきも変わりましたよね。
「上の句」をやっていたときが16歳だったんです。あれから出演作も増えたし、今では主演もやらせていただくようになって、経験としては16歳当時とかなり違っているので、作品に対する構え方が違ったんだと思います。
――その構え方とは、具体的にいうと?
「ちはやふる」の直後に出演した作品でいろんなものが全部変わっていって、スタートラインにやっと立たせてもらったと感じたんです。それまでも作品や役柄に対して、決して疎かにしてたわけじゃないけれど、自分の考えがまだ甘かったなって。そんな作品にわりと早い段階で出合うことができたから、それ以降の作品に対してこれまでの自分にはなかった考え方ができるようになって、心構えみたいなものが変わっていった。経験が増えるごとにいい意味で以前の自分というものが存在しなくなって、そこは気持ちよく、自分の直感を信じてやってみようと思うことが増えていったんです。
「ちはやふる」はどの青春映画にも負けない
――濃密な時間をともに過ごした瑞沢の皆さんきちんとお別れできそうですか?
作品にはトータルで3年間かかわってきましたけど、実際には会っていない時間のほうが長かったので。でも、どこかでずっとつながっているのでそこは心配ありません。わりとみんなご近所さんなので、すぐに集まれるんですよ。真剣佑くんも偶然よく見かけるし(笑)、何かあったらすぐみんなのところへ行こうと思ってます。
――じゃあ、“ちはやふるロス”の心配はありませんね。
まだ(DVD 特典の)コメンタリーの収録が残ってると思うので、そこまでは大丈夫かな(笑)。
――現実的ですね(笑)。
(大事な人と)巡り合う運だけはものすごく強いので、そこは大切にしたいです。
――以前、出演された「チア☆ダン」にしても今作にしても、皆さん本当に仲良しですよね。
一つの作品をつくるために、皆で力を合わせながらゴールに向けて頑張っていくので、痛い思いも悔しい思いも嬉しい思いも共有している人たち。これは、一生ものだなって。「チアダン」と「ちはやふる」は特にその思いが強いです。
――皆さんの熱演は、まるでドキュメンタリーを見ているようでした。
チアダンスにしても競技かるたにしても、私たちが真剣に取り組んでできたものを見て感動してくださる人たちがいるというのは、自分たちの思いが伝わったという証拠でもあると思うんです。「ちはやふる」はどんな青春映画にも負けないという自信があります。
――広瀬さんにとって綾瀬千早という女の子はどんな存在ですか?
何かを表現するうえで、常に土台にある役柄です。みんなから愛されて、元気をもらえる存在。ずっと応援したくなるような女の子ですね。
お芝居では直感を大事にしたい
――千早が成長したように、広瀬さんもこの世界に入って6年が経ったわけですが、昨年高校を卒業し、お仕事一本になったことでお仕事への意識の変化などはありましたか?
学園モノを多くやっていたときやデビュー当時などは上下関係がなく、みんな一緒みたいな感じでまわりの方と仲良くさせてもらっていたんですが、私も社会人になったことで、年齢に関係なく、長くこのお仕事をしている方のほうが先輩なんだって最近感じるようになってきたんです。いろんな方のお話を聞くようになりましたし、一時期お仕事をやりたくないなと思っていた時期もあったけど、辞めたところで私には何も残ってないなって。結局、このお仕事が好きだと思う瞬間はたくさんあるので、仕事への姿勢はこの6年でかなり変化したと思います。
――もう学生じゃないという自覚もあるんでしょうね。そんな広瀬さんがお仕事で大事にしていることは?
直感かな。しかも、私の直感って結構当たるんですよ。例えばお芝居で監督から指示されたことを一度やってはみるんですけど、やってみて直感で違うと思ったものは結局違っていて、監督さんから「やっぱり違ったね。元に戻していいよ」と言われることもあったりして。それは信頼し合ってる関係性じゃないとできないと思うんですけど、そこはちゃんとしたいなって思うようになってきました。
――19歳とは思えないぐらい頼もしい!もし、今学生だったとしたら、やってみたいアルバイトはありますか?
小さい頃、スーパーなどお店のレジが大好きで、オモチャのレジを買ってもらってよく遊んでいたんです。将来の夢は「レジの人」って言っていたぐらいなので、今でもちょっと憧れがあります。あとは、グチャグチャになりながら何かに打ち込むことが好きだから、人のためになること……お掃除をする人なんかもいいですね。
なんとかなると思ってから気持ちがラクになった
――広瀬さんのレジを打つ姿、見てみたいです(笑)。プライベートでこの春、やってみたいことは?
お料理。これは一昨年の夏からずっと言ってることなんですけど、人前で「やる!」って宣言したにもかかわらず、結局一度もやってないんですよ。実は外食にちょっと飽きてきたという理由もあるんですけど(笑)、そろそろちゃんとやろうと思って。
――今度は自炊のお話も聞かせてくださいね。最後に新生活や新学期を迎える皆さんへメッセージをお願いします。
知らない土地での新生活って不安なことも多いと思うんですよね。私も高校入学と同時に上京したので、友達ゼロの状態だったんですが、仲良くしようと声をかけてくれる人もいて。だから、自分から声をかける勇気がない人は、待っててもいいと思います。新生活では素敵なことがたくさん待ってると思うので、皆さんには今しかない瞬間を楽しんでほしいですね。
広瀬すず(ひろせ・すず)
1998年6月19日、静岡県生まれの19歳。2012年「Seventeen」専属モデルオーディションで「ミスセブンティーン2012」に選ばれ、デビュー。是枝裕和監督作「海街diary」での演技が高く評価され、多くの新人賞を受賞したほか、2016年公開の「ちはやふる―上の句―」で日本アカデミー賞・優秀主演女優賞、「怒り」で優秀助演女優賞をW受賞。2019年度前期放送のNHK連続テレビ小説「夏空―なつぞら―」でヒロインを務めることになっている。
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編集:ぽっくんワールド企画/撮影:河井彩美/ヘアメイク:菅野綾香/スタイリスト:梶原浩敬(Stie-lo)/取材・文:荒垣信子
※文中の社名・所属等は、取材時または更新時のものです。