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2015年07月27日

活力を呼び込む午前中の過ごし方

活力を呼び込む午前中の話

テレビでおなじみの精神科医・名越康文(@nakoshiyasufumi)が心の悩みにズバッと答える! この記事は公式メルマガ「生きるための対話」よりお届けします。

午前中は「働いて」はいけない!?

朝、昼、晩のうち、どの時間帯がもっとも重要か。

そう聞かれれば、おそらく多くの人が「朝」と答えるでしょう。そう、朝起きてからの数時間、「午前中の時間をいかに過ごすか」ということは、これからのあなたの人生に残された、数十年という時間をより意義あるものにしていくうえで、非常に重要な課題です。

もちろん「朝活」という言葉もあるように、「朝が重要だ」という話自体はそう珍しいものではありません。ただ、午前中という時間がどのように特別で、どう過ごせばいいのかということについては、一筋縄ではいかない問題が潜んでいます。今日はそのことについて、ちょっと僕の考えをお話したいと思います。

僕自身は、この10年ほどの間、対談や打ち合わせ、収録や講座、原稿執筆といった、「仕事らしい仕事」の予定は、必ず午後にいれるようにしてきました。一言で言えば、午前中には「仕事らしい仕事」を入れないようにしてきたのです(もちろんテレビの生放送など、必要があればやらせていただいていますが、どちらかというと例外的です)。

午前中に「仕事らしい仕事」をしないということ。このことは少なくとも僕にとっては、長いスパンで活力を維持していくうえで、非常に重要な生活習慣となっています。

誤解のないように言っておきますが「仕事らしい仕事をしない」というのは、別に怠けているわけではありません。むしろ僕はこの、朝7時から8時の間に起きてから、アポイントや仕事の約束の入る午後13時ぐらいまでの、午前中の約4時間から6時間ぐらいの時間を、一日のうちで何よりも大切にしているんです。

たっぷりと睡眠を取って目覚めた身体は活力に満ち、その感覚は広範囲に、鋭敏に働いています。そんな、ある意味で「ゴールデンタイム」に、僕が「仕事らしい仕事」を入れない理由。それは僕が、この貴重な時間帯を、できるかぎり「新しいもの」を自分の中に招き入れる準備に使いたい、と考えているからです。

午前中に仕事をやれば捗るし、考え事をすればいいアイデアが思いつきます。大事な仕事をやっておけば、すぐに成果が上がってくれるかもしれません。しかし僕は、この「ゴールデンタイム」をそういう目的のはっきりした仕事に使うことが「もったいない」と感じているんです。

というのも、人と話したり、たくさん原稿を書いたり、調べ物をするといった<目的のはっきりした仕事>というのは、実は午後でも、夜でもできなくはないからです。

でも、自分が思いもよらない「新しいもの」を自分の中に招き入れる、その準備
をするのは朝、午前中の数時間でないとなかなか難しいのです。

やるべきことは「心身のパイプ掃除」

パイプ掃除
心身の感受性が解放される「ゴールデンタイム」である朝に、僕がやっていること。それは一言で言えば「心身のパイプ掃除」です。自分の頭や身体だけでは及びもつかないような、さまざまなアイデアや発想といった「新しいもの」を自分の中に取り込む態勢を整えるために、心身を整え「パイプの詰まり」を取り除いておく。

具体的には、朝起きたら体操をして身体をほぐし、水浴びをして全身の細胞を起こす。近所のお寺まで散歩をして、仏様を拝ませてもらう。行きつけの喫茶店に顔を出し、読みかけの本を開いたり、やりかけの原稿に目を通したりする(ただし、根を詰めて作業をしてはいけません)。こういったことすべてを、僕は「心身のパイプ掃除」として毎朝、続けているんです。

この時間帯には、人に会ったり、あまり根を詰めて資料を読んだり、原稿をぐいぐい進める、ということはしない。原稿をやりながらふと頭に浮かんできた言葉をノートに書いたり、ツイッターでつぶやいたり、その言葉を手がかりに空想にふけったりするぐらいが「パイプ掃除」にはちょうどいいからです。

パイプ掃除というのは、つまり「ちょっとしたインプット」と「ちょっとしたアウトプット」の間を行き来するように、身体と頭を使う、ということですね。そうすることによって、身体や心の内側と、外側の世界の間で少しずつ何かをやりとりする。

「インプット」「アウトプット」というと、たいていは何か成果につなげることを考えがちです。役立つ、お金になる、人々に影響を与える、評価が上がる……しかし、「パイプ掃除」のためのインプット、アウトプットのポイントは、そういった「確たる目的」を求めない、ということです。なぜなら、「何かいいことを言ってやろう」「斬新なアイデアを考えよう」という欲が出た瞬間、かえって「パイプ」が詰まってしまうからです。

ですから、午前中はとにかく下手に成果や結果を求めることなく、自分の身体と心の中に「流れ」が生じるように、インプットとアウトプットの間を循環することに集中する。そうすると、だんだんと心身に、力強い「流れ」が生じてくるんです。

午前中のパイプ掃除が、新鮮な「やる気」を呼び込む

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午前中の僕は、はたからみるとぼやーっとしている時間も長く、怠けているようにも見えるかもしれない。でも、この時間帯にしっかり「パイプ掃除」をやっているからこそ、午後からの時間にがんばって仕事ができるのはもちろん、数か月、数年単位で見たときには、アイデアや発想、あるいは新しいことに取り組んでいこうというモチベーションが枯渇せずに済んでいます。少なくとも、僕自身はその効果を確信しています。

クリエイティブなアイデアや斬新な発想、あるいは身体の奥底から湧いてくるやる気やモチベーションといったものは、実は自分の中から生み出すことができないものです。それは感覚的にいうと必ず、私たちの身体の「外側」からやってくる。自分の外側にある「泉」にアクセスできないかぎり、僕らのアイデアも、発想力も、活力も、すべてはいつか、枯渇してしまうのです。

僕らの外側で渾々と沸き続ける泉の水は枯れることはありません。しかし、パイプが詰まってしまえば、僕らはせっかくの泉にアクセスできなくなってしまう。感受性が最大限に解放される午前中に、時間をかけてパイプ掃除をしておくこと。それは、僕らが「泉」にアクセスし続けるために必要な、ひとつの儀式のようなものだといっていいでしょう。

大げさではなく、僕にとっては朝の時間をこのように過ごすことができていることによって、どれほど忙しくなっても、どれほど毎日のように講演や講義をやっていても、話すネタが尽きる、ということがないんです。

もしもこれが、「朝10時から打ち合わせや収録が入る」ということが当たり前の状態で仕事を続けていたら、とっくの昔に、僕の頭から新たなアイデアや、新鮮なモチベーションは消え去ってしまっていたことでしょう。

しっかりと深い睡眠を取って目覚めた午前中の心身は、最高のコンディションにあります。その最高のコンディションのときにやるべきことは、目の前の雑務を片付けることではありません。自分の身体の外側にある想像の泉にアクセスするという、もっとも大切なミッションに、最高の状態の心身を使って欲しいのです。

午後、あるいは夜の心身は、多くの場合疲れ果てています。疲れがたまった心身でいくら考えても、その思考は同じところをぐるぐると循環するだけで、決して新たな考えが降りてくることはありません。

午前中はできるかぎり一人で過ごし、インプットとアウトプットの循環を促すような活動に時間を使う。一見無駄なように見えて、そのことは長期的に見たときに、あなたの人生の時間をより充実したものにしてくれるはずです。

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精神科医・名越康文名越康文(なこしやすふみ)
1960年、奈良県生まれ。精神科医。臨床に携わる一方で、テレビ・ラジオでコメンテーター、映画評論、漫画分析など様々な分野で活躍中。著書に『毎日トクしている人の秘密』(PHP、2012)、『自分を支える心の技法 対人関係を変える9つのレッスン』(医学書院、2012)、『驚く力 さえない毎日から抜け出す64のヒント』(夜間飛行、2013)などがある。