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2016年12月09日

目的意識を持たないことの心理学的メリット│名越康文

名越康文

どんな仕事が自分に向いているのか、そんな“理想の仕事”はどうやって見つけることができるのか。有効な方法は? そんな疑問にテレビでもおなじみの精神科医・名越康文先生(@nakoshiyasufumi)にお話しを伺いました。

Q.理想の仕事にに出逢う方法が知りたい!

今の仕事が自分にあっているのか、時折疑問を覚えながらも、仕事を変える勇気もありません。先生はよく散歩や瞑想を勧められますが、散歩や瞑想をやることで、天職に出会う、ということもあるのでしょうか。
 

A.「行」をするときは、目的意識を持たないほうがいい

散歩や瞑想をすることで、天職に出会えるか。この質問への答えはイエスでもあり、同時にノーでもあります。

毎日、瞑想をしているうちに、あれよあれよという間に仕事を変わることになり、それが結果的に天職だった、という方はいらっしゃるんじゃないかと思います。あるいは、それまで会社と家との往復だけの生活だった人が、1日に30分ほどの散歩の習慣を取り入れたことで、生活のリズムが変わり、また体調も良くなったことで仕事に成果が出始め、新たな出会いに恵まれるというケースもあるでしょう。

でも、これはあくまで結果論、とお考えになった方がいいんじゃ無いかと僕は思います。というのも、「天職に出会うために瞑想する/散歩する」ということでは、おそらくそういう望ましい結果はもたらされないと思うからです。そうやって何か社会的な成果を目的に瞑想したり、散歩したりするのは、むしろ「天職」に出会う確率を下げてしまう可能性もあるんじゃないかというのが、僕の考えです。

瞑想
瞑想や散歩で何か「良いこと」がもたらされるのはあくまで「結果」であり、「目的」ではありません。ここを間違えて、目的意識を持ち始めると、瞑想を始めとした心理学的な「行」というのは、効果をもたらさなくなってしまうんです。

この点は、一般的な勉強やスポーツなどにおける「努力と結果」との関係とは随分違う話になってしまうので、混乱してしまう方もおられるかもしれませんね。少し、順を追ってご説明しておきましょう。

目的意識を持つと、瞑想の「ご利益」は得られない

普通、「目的意識を持つ」ということは、良いこととされています。筋トレでも、「こんな身体になりたい」という強烈な目的意識を持っている人の方が、漠然とトレーニングをしている人よりも、おそらく効果が上がる。勉強でも、なんとなく英会話教室に通っている人よりも「TOEICで800点取るぞ!」と決意して勉強している人の方が、きっと成績は伸びるはずです。

でも、僕が提案している心理学的なアプローチ、特に瞑想に限っては、話は逆なんです。目的意識というのは、なるべく取り払ったほうがいい。なぜなら、瞑想の第一歩というのは「妄想を払う」ことだからです。目をつむって「これを毎日やっていれば、きっといいことが起きるはず!」と頭の中でずうっと考えていたら、どう考えたって妄想だらけになってしまうでしょう?(笑) それでは、せっかくの瞑想の「ご利益」は得られない。

ただ、このご質問をされた方は、おそらく漠然とではあっても、すでに瞑想なり、散歩なりを「やってみようかな?」と考えておられるんだと思います。だとすれば、アドバイスすることは「これをやれば何かいいことがあるのかな?」という結果をあれこれ考えるのをやめる、ということだけです。そしてとにかく実際にやってみて、それ自体を「楽しむ」ということを心がけてみてください。

散歩
瞑想にしても、散歩にしても、それをやっている時間そのものが楽しくなければ続きません。「ああ、心が落ち着くってこういうことなのかな?」ということがわかってくるのって、楽しいことなんです。あるいは夜に散歩をして、普段歩いていた道がちょっと違う表情を見せてくれることを発見するのって、それ自体がすごくワクワクすることなんです。

ただ、僕らは油断しているとどうしても目的意識にとらわれてしまう。例えば、「散歩自体を楽しもう」ということを意識しすぎると、「散歩の楽しさを感じよう!」ということで頭がいっぱいになってしまいますよね。「楽しむ」ってそういうことじゃなくて、時間を忘れて没頭する、ということです。散歩をしている時にフゥっと「あ、今日はもうちょっと先まで歩いてみようかな?」ということがよぎるような感じ。そういう時って、心のそこから物事に没頭している、ということですよね。

目的論にとらわれずに、今この瞬間を楽しむ。口で言うのは簡単ですが、意外と落とし穴になりがちなポイントかもしれません。ちょっとこのことを頭に置いてもらいながら、是非、瞑想や散歩を楽しんでみてください。

 
※この記事は公式メルマガ「生きるための対話」よりお届けします。

企画:プレタポルテby夜間飛行

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精神科医・名越康文名越康文(なこしやすふみ)
1960年、奈良県生まれ。精神科医。臨床に携わる一方で、テレビ・ラジオでコメンテーター、映画評論、漫画分析など様々な分野で活躍中。著書に『毎日トクしている人の秘密』(PHP、2012)、『自分を支える心の技法 対人関係を変える9つのレッスン』(医学書院、2012)、『驚く力 さえない毎日から抜け出す64のヒント』(夜間飛行、2013)などがある。