カレー沢薫の「バイト丸わかり図鑑」パン屋バイト編
私事だが無職になって無事一周年を迎えた。
先日勧誘された「ヤクルトレディ」の仕事を真剣に検討してみたものの、“レディの仕事はかなり営業力が試される”と聞いて早々に断念した。、バイト代で自分のヤクルトを買って数字を稼ぐ未来が容易に想像できるからだ。
腸を良くすることがバイトの目的ではない。
バイトなど仕事を選ぶとき、給料や勤務時間重視で仕事内容はこだわらないという人と、どうせなら少しでも自分の好きな分野で働きたいという人に別れると思う。今回のバイトは、人によっては「好きな物に囲まれた仕事」と言える。
今回紹介するのは「パン屋」のアルバイトだ。
突然だが、諸君、私はパンが好きだ。
ここで怒涛の某漫画パロをやりたいところだが、このコラムは読者層的に、学生に通じないことを書くと普通に完没になるので、それはやめておく。
つまりパンが好きなら「よろしい、ならばパン屋でアルバイトだ」ということだ。
だが、もちろんパン屋の仕事は「パンを食うこと」ではなく「売ること」もしくは「作ること」である。
「俺はパンなら売り物でもお構いなしに食っちまうタイプだぜ」というレベルのパン好きには逆にお勧めできない。
おそらくほとんどのパン好きが、パンを眺めるよりパンを食べる方が好きだと思う。
ならば、食う事の出来ないパンに囲まれるというのは逆に目に毒なだけでは、と思うかもしれないが、パン屋で働くことにより「割引きで買える」・「あまり物をもらえる」・「失敗作をもらえる」・「新作を試せる」など、パンを食うチャンスに恵まれるのは確かなようである。
ただ、面接段階で「パンはもらえますか?」と聞くのは心証的に控えた方が良い。
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パン屋のバイトは主に「販売」と「製造」に別れる。
販売は、レジ、接客、商品陳列、店内清掃、製造は裏でパンを製造する仕事だ。
製造と一言で言っても、手作りのところと、完全に機械化されたところがあるようなので、店舗によっては、パンの作り方を覚えるというより「機械の操作を覚える」と言った感じになるかもしれないが、少なくともパンがどのような材料で作られているかや、メロンパンにメロンは入っていない、という意外な事実は学ぶことは出来る。
ただ製造は機械でも、材料である小麦粉やバターなどを運ぶのが意外と重労働で、厨房はかなり暑いなど、接客がない分、肉体労働があるという。
販売業務の最大の難関は「パンの名前と値段を覚えなければいけない」という点だそうだ。
何故ならパン屋のパンというのは、包装なしのむき身で売られているため、当然バーコードなど貼られていない、よって目でどのパンか判断して、レジを打ち込まなければならない。
ここでも「パン好き」であることは生きる。
物事を覚えるのに、興味のあるなしは、非常に重要だからだ。
AKBのメンバーは全員覚えているが、ブルースウイルスとジェイソンステイサムは同一人物に見える、という人間がいるように、パンも興味がない人だと「全部同じパン」に見えてしまいなかなか覚えられない恐れがある。
その点パン好きなら早くそれを覚えられるだろうし、お客さんに商品説明を求められた時も、ただの説明ではなく魅力まで伝えることができるかもしれない。
ただパンが好きすぎて、パンの話になると、推しについて尋ねられたオタクの如く、饒舌かつ早口になって止まらなくなる、というタイプは逆に「ウザい店員がいる」と敬遠される恐れもある。
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パン屋も接客業には違いないが、比較的客層が良い上に限られた層が来る、という傾向があるらしく、無差別級に人がやって来るコンビニなどに比べたら楽、という意見がある。
ただ、食品を扱う仕事なので、当然売る側にも清潔感は求められる。
そしてパン屋でのバイトの失敗談には「パンを落としてしまった」というのが意外と多い。
中には「メロンパンを30個床に落としてしまった」などというシャレにならないミスもあるし、製造の方でも機械操作を誤って数十個のパンをダメにしたという例がある。
いくらパン好きでも、床に落としたり消し炭になったパンを「全部食います」というわけにはいかないだろうから、注意力は必要だ。
また商品受け渡しの時、トレーに載せられたパンを一つ一つトングでビニールに分けて入れてお客さんに渡すという作業がある。
あれも簡単にやっているように見えるが、かなりの「トング捌き力」がないと、混む時間帯はレジが詰まってしまうし、ここでも「落とす」というミスが起こる可能性がある。
「食い物が生で売られている」というパン屋の特性上、商品を取り扱うスキルは必要となってくる。
ただ、製造で朝が早いことはあっても、夜が遅くなったり、イレギュラーな残業が起こることもあまりないようなので「夜は俺だけの時間」という、私定時で帰ります派にはおすすめの仕事だ。
時給については800円~1000円と、コンビニや地域差はあるもののスーパーなどと大差はない。
時給は高いとは言えないが、パン屋のパンというのはなかなかの高級品なので、それがもらえるチャンスがあるなら、パン好きにとっては「高時給バイト」と言っても過言ではない。
私は学生時代に回転寿司屋でバイトをしていたことがある。忙しいうえになかなか周囲と打ち解けられなかったものの、「余った寿司がもらえる」ことがモチベーションになり、どうにか2年間は頑張れた。
「食べ物が貰えるから楽しい」と言うと、どこの食いしん坊キャラだという感じだが、バカにできない、バイトのモチベーションなのである、好きな食べ物ならなおさらだ。
バイトに迷ったら「好きな食い物を扱っている店」という、シンプルすぎる動機で選ぶのもありである。
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