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2020年12月08日

恐竜から苺大福まで消しゴムに。「おもしろ消しゴム」の裏側を支える職人ワザ

消しゴム 工場 インタビュー タウンワーク townworkかわいい動物、スイーツ、自動車など、ファンシーでリアルな形をした消しゴム。「おもしろ消しゴム」というこの商品は全国の文房具店、100円ショップ、土産物店などで販売されています。その完成度の高さから、子どもだけでなく、海外からの観光客にも大人気。今回は、そんな消しゴムを作るメーカー「イワコー」の工場で働く山崎優基さんに、消しゴム作りの現場について伺いました。

 

同じものをつくるために、毎日微調整を繰り返す

消しゴム 工場 インタビュー タウンワーク townwork――消しゴム工場ってあまり馴染みがないのですが、どういうことをしてるんですか?

おもしろ消しゴムは複数の部品を組み合わせることで完成します。15台の射出形成機(熱で溶かした樹脂を金型に注いで加工する機械)を、僕を含めた工場スタッフの社員5人が動かしています。1台につき、大体2万個の部品を作っていて、消しゴムにすると20万個分ぐらいの量を1日で制作しますね。僕たち工場の仕事はパーツを作るところまで。消しゴムの組み立てや包装は外部の内職さんにお願いしています。

消しゴム 工場 インタビュー タウンワーク townwork

――20万個分も一日で制作するんですね!山崎さんのお仕事の流れはどのようになっていますか?

作る部品に合わせて、材料となる樹脂と塗料を混ぜて着色します。この樹脂は一般的な消しゴムと同じ物です。それを射出成形機に投入して、おもしろ消しゴムの部品を作っていきます。

――部品は機械任せでできてしまうのでしょうか?

いえ、そうもいかないんです。おもしろ消しゴムの部品を作る金型の形によって、樹脂を溶かす温度や、流し込む圧力や、量を変えなくてはいけないんですよ。

材料の樹脂の品質にもばらつきがありますし、その日の気温も気にしなくてはいけません。同じように機械の設定をしていては、同じ物は作れないんです。毎回ちょっとずつ作っては微調整、みたいな感じですね。

 

仕事に慣れてくると「不良品が出そうな雰囲気」が見えてくる

消しゴム 工場 インタビュー タウンワーク townwork――思ったより大変ですね! 山崎さんは、消しゴムを作るお仕事を始めてどれぐらいですか。

まだようやく2年経ったばかりですね。前職はキッチンやスーパーで使うビニール袋などを作る工場にいました。

――無色透明のビニールから一転して、カラフルな消しゴム作りになったのですね。

そうですね(笑)。最初に工場を見たときは不安でした。機械や金型の取り扱いが複雑そうで。ただ、仕事に慣れてくると「このパーツは難しそうだな」というのが、なんとなくわかってくるんです。部品ごとにそれぞれ、樹脂が金型に流れ込みにくい部分などがあって……。機械から出てきたパーツの光沢などをチェックすると、不良が出そうな雰囲気が事前に見えてくる。

――職人みたいで、かっこいいですね。

いえいえ(笑)。どうしても生産数の1~2%程度は不良品が出てしまうんですが、油断するといまだにそれ以上の不良品を量産してしまいますね。

おもしろ消しゴムはラインナップが500種類くらいはあるので、まだ作ったことのないパーツもいっぱいありますし。そういうものは優先して作らせてもらうように、工場長がシフトを組んでくれています。

――ちなみに、いままで作った消しゴムの中で「これは大変だった」というものはありますか?

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「イチゴ大福」のイチゴの部分ですね(画像右)。イチゴだから表面に粒々があるんですが、形が複雑すぎて、冷えすぎると金型からきれいに抜けないし、逆に温かいままだと、型から押し出すときに崩れちゃうんです。いまはベストに近い設定をなんとか見つけたのですが、最初にやったときは本当に大変で、頭を抱えましたよ。

――まさかイチゴが大変というのは、聞くまでわからない話ですね。他になにか失敗したことはありますか。

金型を打ち上げちゃったのは、怖かったです。

――金型を打ち上げる!?

金型ってすごく重いので、機械から外すときは金型をクレーンに取り付けて持ち上げるんですよ。

でも、その時はうっかりしていて、機械に金型がひっかかったままなのを気付かずに巻き上げてしまったんです。「なかなか上がらないな」と思った瞬間に、一気に金型が機械から外れて、勢いよく上がってしまって……。クレーンには固定されているので、落ちてくるようなことはなかったし、もちろん怪我もなかったのですが、あのときは怖かったですね。

それは1年以上前の話ですけど、いまだに金型をクレーンにかけるときは、ものすごく注意するようになりました。

 

量産のための工夫をするのが面白い

消しゴム 工場 インタビュー タウンワーク townwork――この仕事の楽しいところはなんでしょうか?

最近、新製品の試作で色や形を検証する作業をやらせてもらっています。消しゴムの原型は社長が考えるんですが、量産するためには、金型の中での樹脂の流れを良くすることを考えなければいけないんです。それはめちゃくちゃ楽しいです。

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それから、うちで使う金型は1ピースごとに分離できるように作られた、特殊な物なんです。これを分解したり組み立てたりするのも楽しいですね。他の人には面倒な作業なのかもしれませんが、この作業は1日やっていても苦にはならないです(笑)。プライベートでは、車やバイクなども電機部品以外は自分でいろいろといじるタイプですね。

――細かい作業って苦手な人も多いですよね。山崎さんは物事を突き詰めていくのが好きなタイプでしょうか?

うーん、そうかもしれません。あまり感情の上下がない性格なんですが、興味のあることは突き詰めたくなるのかも。先輩の作業を見ながら、設定や金型交換などは、どうすれば時間短縮できるかな、と考えてます。

うちで働くなら、気になったことを自分から素直に聞けるタイプがいいですね。なんでも教えてくれる人が多いので、わからないことをすぐに聞ける人が伸びる会社だと思います。

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――話は変わって、イワコーさんは工場見学ツアーが人気だそうですが、忙しいときは大変じゃないですか?

毎週土曜日や夏休み期間中は工場見学ツアーがありますし、平日もたまに小学校の見学がありますね。確かに仕事の進みはちょっと遅くなってしまいます。

(現在は新型コロナウィルス対策のために工場見学は一時的に中止されています ※公開時点の情報)

でも、見学にきた子どもたちから「この消しゴム、お兄さんが作ったの? すごい!」って言ってもらえるのが本当にうれしいです。イワコーに来るまで、製造の現場でそういう声をかけてもらう機会って、ほとんどありませんでしたから。なにより僕は子どもがすごく好きなので、余計にうれしいですね。

――ちなみに山崎さんはお子さんは……?

長女が今年の春から小学生で、息子が4歳になります。

――じゃあ、そのうち娘さんも小学校の工場見学で来ることになりますね!

イワコーに最初に面接に来たときにも、お土産におもしろ消しゴムをいっぱいもらって帰ったんです。娘はすごく喜んでくれたので、きっと工場見学も面白がってくれるだろうから、楽しみです。でも、身内が来るのは、やっぱりドキドキもしますね。「お父さんすごい」って言ってくれるかな? って。そこは心配です(笑)。

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プロフィール
山崎 優基
(やまざき ゆうき)
株式会社イワコー 製造担当。ビニール袋工場を経てイワコーに入社。発注を除く工場内のほとんどの作業を手がけるなど社内での信頼は厚い。

(取材・文/きだてたく、撮影/安藤”アン”誠起、編集/斎藤充博(プレスラボ))

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