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2016年10月05日

自分のやりたいことを仕事に。今、注目の働き方「一人メーカー」の魅力に迫ってみた

一人メーカー阿部ダイキさん_1
商品企画から製作、量産、販売までをたったひとりで行う「一人メーカー」。企業に属さず、個人でモノづくりを行い利益を生む新しい働き方が注目されています。その先駆けでもある「一人文具メーカー」を立ち上げてテレビやメディアで話題になっているのが阿部ダイキさん。そんな阿部さんに「一人メーカー」という働き方の魅力を伺ってみました。

自分が欲しい文房具を考えて販売までをすべてひとりで行う

一人メーカー阿部ダイキさん_2
――まず、「一人文具メーカー」とはどんな仕事をするんですか?

「“こんな文房具が欲しい”と思ったら、文房具の企画・開発、デザインを考えます。その後、工場を選んで製作し検査。商品が完成したら営業やホームページを作成してPRを行い、売れたら出荷や納品の手配。請求書の発行など経理周りのことも仕事です」

――企業だと何部署にも分かれて行う仕事をひとりでやっているわけですね! でも、正直なところひとりでやっていて生活できるものですか?

「僕が一番最初に作ったオリジナル文具が『Free size Bookcover』という、一枚で文庫からA5サイズまでの本に対応するブックカバーです。これは月に6~7000枚は売れている人気商品。実はこのブックカバーは僕が会社員時代に副業として売っていたんですが、1年もしないうちに会社の給料より、副業の収入が超えてしまったんです」

――ものすごい売れ行きじゃないですか! と、いうか阿部さんは、最初からひとりではなく、会社員だったんですね。

「大学を卒業して9年間、カバン関連のメーカーに勤めていました。ただ、僕の時代は就職氷河期でまったく希望の会社に受からず、就職を諦めていたんですけど、バス停に貼ってあった求人広告を見てダメ元で応募したんですよ。そうしたらあっさり合格になりまして」

――結構、成り行きで就職を決めたんですね(笑)。

「その通りです(笑)。一応、営業職で入ったんですけど、社員が10名ぐらいしかいなかったので、必然的にいろんな仕事をこなさないと回らなくて。だから、営業だけでなく商品開発や、工場への視察、経理関係のことなどいろんなことをやっていました。小さいながらもメーカー企業だったので、モノづくりから販売、利益の出し方などはここで学びました。」

最初に作ったブックカバーはわずか1ヵ月で完売!!

どんな大きさの本にも対応できる『Free size Bookcover』はありそうでなかったアイテム!

どんな大きさの本にも対応できる『Free size Bookcover』はありそうでなかったアイテム!

――会社員時代の経験が一人メーカーへの第一歩だったんですね! でも、そこから独立しようと思ったのはなぜですか?

「やはり企業ですから、企画を出しても通らないことが多く、僕が作りたいものが作れない。それで結構、悶々としていたんですよ。だからその悶々とした気持ちを副業にしたんですよね。自分が欲しいものを、なんのしがらみもなく作りたいという思いで生まれたのが『Free size Bookcover』。もともと本が大好きだったので、便利なブックカバーはないかなと思い2年かけて製作し販売できるまでに至りました。」

――そうしたら予想以上に売れてしまった…ということですね。

「はい。このときは独立しようと思ってモノづくりをしたのではなく、ただ、自分が欲しいものを作っただけだったんです。元手は6万円ぐらいでしたね。生地を買ってインターネットで工場を探して90枚作ってもらって、ネットで販売したら1ヵ月で完売したんです。僕が欲しいと思ったものを、他の人も欲しいと思っていたんだと嬉しくなりました」

ただ、モノづくりに専念したかったから「一人メーカー」になった

一人メーカー阿部ダイキさん_3

――それで会社を辞めて「一人文具メーカー」になったんですね。独立して、まずどんなことに力を入れましたか?

「展示会に積極的に出店したり、営業をかけたりと商品を自らPRすることを始めました。それまではメールなどが多かったので、実際に自分で足を運んで顔を見ながらのPRを強化しましたね」

――PRも自分でしないといけないんですね!「一人メーカー」で大変なことってなんでしょうか?

「当たり前ですけど、全部ひとりでやらないといけないですから、忙しいときは大変です。あとは僕の考えたオリジナル商品をマネされることもあって。企業だとそこは会社が守ってくれますが、ひとりだと自分で戦わないといけません。知的財産やブランドを守っていくことも大切な仕事のひとつです」

――それでも「一人メーカー」でいるメリットを教えてください。

「僕が仕事で一番大切にしている「欲しいものを作る」ということをとことん追求できることですね。この仕事をしていて一番うれしい瞬間はお客さまから『これが欲しかった!』と言われること。そのためのアイデアを出しや製作、工場への視察、PRなどプロダクトを作り上げるまですべての時間を自分のペースでできますから。確かにひとりですべてを行うことは大変ですが、その分、自由に自分の時間を使ってモノづくりに専念できることが大きなメリットですね」

アイデアの基本は「不便さを解決に導くための気づき」

ボックスとロールトレーに分かれて筆記用具が散らばらずペンが選びやすい『どや文具ペンケース』

ボックスとロールトレーに分かれて筆記用具が散らばらずペンが選びやすい『どや文具ペンケース』

――「一人メーカー」はアイデアが勝負なところがあると思いますけど、阿部さんはどうやってアイデアを生み出していますか?

「僕は基本的に自分が欲しいと思うものしか作りません。売れるものを作りたいなら、今、巷で売れているものをマネすればいいだけです。でも、僕は売れるものでなく、自分が欲しいものが作りたい。だから自分が何が欲しいと思っているかに気づくことがアイデアの中で一番大切だと思っています。

アイデアというとみんなものすごいヒラメキをイメージすると思いますが、実はたいしたことじゃなくて、ちょっとした気づきなんですよ。僕が気づくために心掛けているのは“不便をそのままにしない”こと。たとえば、ブックカバーの場合“カバーってどんどん増えて邪魔だよな、一枚でいろんな本に使えないかな”と不便さを解決に導くように考えることですね」

最初のお客さんは自分。納得するまでは決して販売しない

Full to Keydell

『Full to Keydell』(写真上)、『読書記録しおり』(写真下)

『Full to Keydell』(写真上)、『読書記録しおり』(写真下)

――不便があるから便利で欲しいものが生まれるわけですね! ひとつの商品が生まれて販売に至るまでどれくらいの期間がかかるものなんでしょう。

「モノによりますが、ブックカバーは2年でしたし『読書記録しおり』は1ヵ月半ぐらい、お金やカード、鍵など、大切なモノを一つにまとめられる財布『Full to Keydell』は試作品として50以上は作りました。でも、どの商品も一番最初に使うお客さんは僕なので、僕が納得しない限り、販売はしません。でもそれができるのが一人メーカーのいいところ。企業にいたら予算も納期も決まっていますから」

――この記事を読んで「一人メーカー」という働き方に興味をもった読者に、ぜひ心得やアドバイスをお願いします!

「いきなり「一人メーカー」として働くことは難しいと思います。僕のように一度は企業に入ったり、やりたいことに近いことを経験したうえで一人メーカーになることをおすすめします。何事も経験することは自分の知識になりますし、視野が広がりますから。そのためにも自分からどんどん動いてほしいですね

いかがでしたか?
枠にとらわれない阿部さんの「一人メーカー」という働き方は、今後、ますます増えてくるかもしれませんね。

阿部ダイキさん■Profile
阿部ダイキ
文房具クリエイター

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取材・文:中屋麻依子 撮影:八木虎造

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