アイドル・大場美奈さん(SKE48)インタビュー 「失敗は誰もが通る道。ひとつでも楽しみが見つかれば、続けるモチベーションになる」
映画「地獄少女」でインディーズアイドル・御厨(みくりや)早苗に扮した大場美奈さん。悲劇に見舞われる難役を演じた作品への思いと、AKB48、SKE48と人気グループで活動し、得たものや学んだことについてお話を伺ってきました。
アイドルとして絶望した経験を早苗にかさねて演じました
――大場さんは今回、御厨早苗という役柄に扮しましたが、現役アイドルが劇中でもアイドルを演じたことが話題です。
アイドル役といっても、キラキラした場面は一瞬だったんですよ。早苗はある人物によって地獄へ突き落されたような絶望感を味わってしまいます。私自身もアイドルとして心が折れそうになったことが何度もありましたが、早苗が感じた絶望はその3倍も4倍も5倍も大きくツラかったと思うので、悲しみをプラスするようなお芝居を心がけました。
――早苗の悲壮感、絶望感は痛いほど伝わってきました。
ある事件さえ起きなければ、早苗にはきっとこの先明るい未来が待っていたと思うんです。自分が一番輝けるステージで、アイドルとして一番大事にしているものを傷つけられてしまった。それは早苗にとっては死んでしまったも同然で、この先、怪我が治って、再び歌って踊ることができたとしてもあの時のことは一生忘れられないと思うんです。事件に遭い、地獄通信を見つけるまでは、まるで死んでいるかのような表情、佇まいを意識しました。
地獄の様子を見ていたら、藁人形の紐を解くことはできないかも
――「地獄通信」にアクセスし、自分を傷つけた相手への復讐を決意した早苗の心情は理解できますか?
復讐をしようと決め、ルポライターの工藤さん(波岡一喜さん)にそのことを告げるシーンは私にとって最後の撮影シーンだったんです。お芝居とはいえ、早苗としてツラい経験をたくさんした後だったので、そこは自然と演技に入り込むことができました。
――藁人形に結ばれた紅い紐を解くことで、復讐をしたい相手が地獄へ落ち、そして、自分自身も地獄へ落ちる契約が成立しますが、大場さん自身、この紅い紐を解く勇気はありますか?
地獄少女こと閻魔あい(玉城ティナさん)に一旦、地獄の様子を見せたうえで「それでも紐を解く?」と選択を迫られますが、早苗が見たような地獄を私も見ていたのなら、紐を解くことはできないと思います。
どん底まで落ちた謹慎期間。復帰を決意できたのは仲間の励ましでした
――先ほど、大場さん自身も早苗のような挫折を味わったとお話されていましたが……。
AKB48に所属していた頃、謹慎を申し出た時期がありました。ファンの方がアイドルのステージを観にくるのは、夢をみるためだと思うんです。私のミスでチームが足を止めてしまったこと、誰かを不快にさせてしまったことに申し訳ない気持ちでいっぱいでした。
――その時期をどう過ごし、どうやって乗り越えましたか?
自宅に籠っていました。もうダメだと思い始めたら、どんどん気が滅入る一方だったんですけど、ふと「どん底まで落ちたら、あとは上がっていくしかない」って思えたんです。そんなふうに気持ちを転換することができたのは「辞めないで、また一緒に頑張ろう」と言ってくれた仲間のおかげです。「辞めなさい」ではなく、「一緒に頑張ろう」と言ってくれる人がいるのなら、戻ったほうが後悔しない、そして、もう一度ファンの皆さんの前で歌って踊りたいという思いがあったので、気持ちを持ち直すことができました。
人づき合いのコツは“無理をしないこと”
――仲間の励ましに助けられたと。今年はデビューからちょうど10年なんですね。
デビューしたばかりの頃は朝起きて学校へ行って、秋葉原へ行ってライブやリハーサルをして、帰って寝てということを365日繰り返していたので、ただ、ただ必死でしたし、時間が過ぎるのがとても早かったです。でも、今は目の前で起きていることを一つ一つしっかり感じることができているので、余裕が出てきたのかなって。アイドルという仕事にやっと慣れてきたんだと思います。
――10代と20代では、同じようなことでも、また感じ方も違うんでしょうね。大人数グループに所属している大場さんだから言える“人とのつき合い方や、距離のとり方”もあるかと思うのですが……。
大事なのは「無理をしないこと」です。人間、誰でも「合う、合わない」ってあるじゃないですか。合わない相手と無理してつき合うことは自分だってキツイし、相手にも気まずい思いをさせてしまうので、自分と同じ趣味をもっている子や話が合う子を探して、関係を深めていくほうがいいと思うんです。
――大場さんが所属する48グループは世代も幅広いですよね。
はい。例えば先輩が何かを教えてくれた時に、理解できないままやり過ごしてしまうと、後日、自分が失敗してしまった時に「あの子は私が教えたことをできなかった」とガッカリされてしまうと思うんです。わからないことはその場で「わかりません。もうちょっと教えてください」と正直に告げることが大事だと思います。また、相手が後輩であるときは、自分の新人時代を思い出して教えてあげたり、気まずそうにしていたら話しかけてあげたり、ちょっとした気配りを大事にしてきました。
仕事が充実していることが今のモチベーションです
――いろんな世代が集まっているグループならでは、ですね。現在、大場さんのパワーの源になっているものは?
今の自分が置かれている環境ですね。歌って踊ることも大好きなんですけど、演じることも大好きで、その現場では多くを学ぶことができる。お仕事って時にはツラいことや苦しいこともあるけれど、それ以上に得る喜びのほうが大きい。お仕事が充実していることが、今の私のモチベーションです。
――今のお仕事が本当に好きなんですね。
仕事って私にとってショッピングや旅行と同じ感覚なんです!というと、語弊があるかもしれませんが、ショッピングや旅行と同じぐらい、特別な楽しみでワクワクするものという意味合い。これを乗り越えればまたステージに立って、歌って踊ることができる。だから、それまでは大変でも頑張ろうって思えるんです。
――お仕事へ思いが存分に伝わってきました。では、日々仕事や勉強に頑張っている大場さんと同世代の皆さんへメッセージをお願いします。
どんな職業でも、新人の頃は“できないことが当たり前”ですよね。どんなに偉い社長や上司、店長さんだって最初からできたわけではなく、経験を重ねてできるようになったはず。最初のうちは失敗をして叱られることもあるかもしれませんが、それは誰しも通る道だと思って頑張ってほしいです。私もそうでしたから。また、何か一つでも仕事の中に楽しみを見つけると、それが続けていくモチベーションにつながると思います。その楽しいと思ったことや、お仕事の中で何か一つ得意なことを極めて自分の自信につなげてほしいですね。
大場美奈(おおば・みな)
1992年4月3日、神奈川県生まれ。2009年「AKB48第9期生」としてデビュー。2013年にSKE48へと移籍。主な出演作に「さすらい温泉 遠藤憲一」(第3話ゲストヒロイン)、舞台「ハケンアニメ!」など。現在「世界ナゼそこに?日本人~知られざる波乱万丈伝~」(テレビ東京)、「潜在能力テスト」(フジテレビ)に出演中。写真集「本当の意味で大人になること」(スクウェア・エニックス)が発売中。
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編集:ぽっくんワールド企画
撮影:河井彩美
ヘア&メイク:佐藤淳
スタイリスト:菊地文子
取材・文:荒垣信子
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