谷水力さん『あんさんぶるスターズ!エクストラ・ステージ』~Night of Blossoming Stars~衣更真緒(いさら・まお)役インタビュー【この役のために僕がしたこと Vol.7】
人気シリーズ『あんステ』最新作でTrickstarの衣更真緒に扮する谷水力さん。生徒会役員でありながら、生徒会に対抗するユニットのメンバーとして板挟みになりつつ、ライブシーンでは独特の魅力を発揮するキャラクターをどんなふうにつくり上げていったのか、キャストの熱気あふれる稽古場でインタビューしてきました。
メンバーの距離がより近くなったと感じた
――稽古も後半に入ったそうですが、どのような手ごたえを感じていますか?
Trickstarとして舞台に立つのは1年半ぶりなので、ユニットの空気感はどうなるんだろうという不安が多少ありました。でも、いざ稽古に入ってみたらまったく変わってなかったというか、むしろ距離が近くなったように感じたんです。今回の登場人物はTrickstarのほか、SwitchとRa*bitsで総勢11名。過去の作品と比べると少ないほうですが、少ないからこそそれぞれが意識し合っている感覚があって、現場はとてもいい空気です。
――ブランクをまったく感じさせなかったんですね。谷水さんが初めて『あんステ』に出演したのが2016年。出演が決まった時のことを覚えていますか?
初舞台で右も左もわからない状態でしたし、お芝居だけでなく、歌もダンスもやったことがなかったのでたくさんの不安を抱えていたことを覚えています。
――歌もダンスも未経験なのに、いきなりアイドルを目指す役柄を演じることはかなりの苦労だったと思います。事前にたくさんの準備もされたんでしょうね。
まずゲームをダウンロードし、ストーリーやボイスをチェックすることから始めました。そして、事務所に協力してもらって、ダンスのレッスンにも通いました。当時は台本の読み方すらわからず、特に同じTrickstarの山本一慶くんや松村泰一郎くんにいろんなことを教わっていましたね。
超大雑把な性格の僕と、しっかり者の衣更は真逆
――そうしてスタート地点に立った衣更真緒というキャラクターに、どんなふうに寄せていったんですか?
ちゃんと真緒になれているのか今でも不安はありますが、初演か2作目の時に脚本家の赤澤ムックさんから「演じてる以上、その人物になることはできないけれど、そのキャラクターの一番の代弁者にならなくてはいけない」と役をつかむヒントのような言葉をいただいたんです。そこから僕なりに、真緒はこの場面で何を考え、どういう心情だったんだろうという台本には書かれていないことを読み解き、少しずつ役に近づけていったという感じです。
――そんな真緒と谷水さん自身の共通点があれば聞かせてください。
全体的に性格は真逆だと思うんですが、あえてあげるなら、バスケットボール部ということでしょうか。僕も中高とバスケをやっていました。あとは、人から頼まれると断れないところですね。
――真逆なんですか!?
僕は超大雑把な性格なんです。整理整頓も苦手ですし、時間にもルーズ。真緒って遅刻とか絶対しなさそうだし、部屋もキレイなんじゃないかと思います。
ステージでのキラキラ感は、実在のアイドルやバンドの映像を見て研究
――真逆の性格の真緒を演じるうえで意識することは?
Trickstarにおける真緒の立ち位置って、一歩ひいて物事をみているようなポジションだと思うんです。完全にボケのスバル(小澤廉さん)と真(松村泰一郎さん)がいて、そこにツッコむ北斗(山本一慶さん)がいる。3人の関係性をうまく中立の立場でみているのが真緒だと思うので、バランスを大事にしています。そして、立ち姿ですね。僕自身は癖でつい脚を開いてしまったり、膝を曲げて立ってしまうんです。そうするとしっかり者には見えないので、そこはかなり意識しています。
――そんな意識があって真緒が完成したと。ライブシーンではいかがですか?
自分に出せる最大のキラキラ感や明るさを表現して、そして、真緒はブレイクダンスを得意としているのでダンス中のキレを大事にしています。
――アイドルにとって“キラキラ”はかなり大事だと思います。
当たり前ですが、『あんステ』に出演するまでウインクや投げキッスをしたことがなく、そのやり方もわからなかったので(笑)。アイドルグループのライブ映像を見たり、好きなバンドの映像を見てカッコいいと感じた仕草を研究しました。
――これまで出演してきた中で、好きだったシーンやセリフがあれば教えてください。
初舞台だった1作目ですね。裁縫が得意な鬼龍紅郎(上田堪大さん)にTrickstarの衣裳を作ってほしいと頭を下げるシーンがあって、そこはとても印象に残っています。毎日、堪大くんにつき合ってもらいながら「今日はよかったよ」とか「今日はダメだった」って細かくアドバイスをもらいながら演じていました。ときには厳しいダメ出しももらいましたが、それは作品をより良くしようという思いがあってのことですし、なにより僕のお芝居を見てくれていたことが嬉しかったです。
『あんステ』は芝居と向き合うきっかけをくれた作品
――作品同様、皆で切磋琢磨しながらつくり上げていったんですね。谷水さんにとって『あんステ』はどんな存在ですか?
きちんとお芝居と向き合う、この世界でやっていこうというきっかけをくれた作品です。そして、人前でパフォーマンスをすることの楽しさ、お客さんのリアクションをダイレクトに感じながら演じる舞台ならではの楽しさを教わりました。
――役柄を完成させるうえで煮詰まったり、答えが見いだせないこともあるかと思いますが、そんなときの対処の仕方を教えてください。
僕は誰かに相談します。セリフを覚えることを期限ギリギリまでやらず、引き延ばしてしまう悪い癖があるんですけど、今回はそれを辞めようと松村さんと相談して、2人でカラオケボックスに行き、セリフを暗記するまで読み続けるという自主練みたいなことをやりました。セリフがしっくりこない時は、どういう感情なのか理解できるまでとことん掘り下げていきました。
真緒はとても難しい役。彼を掴むことは今後の大きな課題
――正解が見つかるまで、自分だけでなく共演者の力も借りながら乗り越えていくんですね。今年ももうすぐ終わりですが、2019年はどんな年でしたか?
飛躍の1年になったのではないでしょうか。ストレートプレイに初挑戦したり、初座長を経験させてもらったり、新国立劇場のステージに立てたりなど新たな挑戦が多く、役柄もバラエティに富んでいました。自分が苦手とする部分も得意とする部分も明確にみえました。
――その苦手とする部分って?
うまく説明できないんですが、1年半ぶりに真緒を演じて、実はすごく難しい役だったんだと気づいたんです。以前は目の前のことに精いっぱいでそんなこともわからなかったんですが、経験を重ねたうえで今回の台本を読み、稽古する中で悩みぬき、正直、今もまだ正解を出せていないのですが、真緒を掴むことは僕にとって今後の課題です。
――明確な答えがないことが演技の奥深さだと思います。最後に、『あんステ』を通じて谷水さんがメッセージしたいことはどんなことでしょう?
今回の物語は、僕たちTrickstarメンバーが出会うところから描かれるので、どんなふうに4人がユニットを組み、どんなふうに心を通わせ、何をきっかけに仲良くなっていくのか、人と人のつながりの大切さがうまく伝わればいいなと思います。
谷水力(たにみず・りき)
1996年10月16日、福岡県生まれ。2014年「第27回 ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」ファイナリストをきっかけに芸能界デビュー。2015年「セレンディピティ物語~新しい自分に出会う旅~」でテレビドラマに初主演し、2016年『あんさんぶるスターズ!オン・ステージ』で初舞台。主な出演作に、舞台『弱虫ペダル』シリーズ(真波山岳役)、「御茶ノ水ロック」、音楽活劇「SHIRANAMI」、「俺たちマジ校デストロイ」、舞台『刀剣乱舞』慈伝 日日の葉よ散るらむ(南泉一文字役)など。情報番組「猫のひたいほどワイド」(tvk)に月曜レポーターとしてレギュラー出演中。
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編集:ぽっくんワールド企画
撮影:河井彩美
取材・文:荒垣信子