Room4: 高崎翔太 インタビュー3/3 【僕らの休憩室】
3回に渡ってお届けしてきた高崎翔太さんのインタビュー。最終回の今回はガソリンスタンドで学んだことや今後の俳優人生について語っていただきます。高崎さんが目指す理想の俳優像とは…?
失敗しつつも成長したガソリンスタンドでのバイト
―ガソリンスタンドでの業務は、わりと順調にこなされていたんですか?
失敗も多かったです。
田舎のガソリンスタンドって、大型のトラックが多く来るんですよね。
大型トラックって、満タンだと200リッターくらい入るんです。たいてい、満タンにしてって注文されるんですけど、たまに50リッターって言われることがあるんですよ。でも、いつもの癖でうっかり満タンにしちゃって…。
その時は、ヘコみましたよ…。
150リッター分なので1万5千円ぐらいですね。どんなに頑張っても自分が1日じゃ稼げない金額の損失ですからね。ほんと最悪なことしちゃったなって…(笑)
ほかにも給油口にガンッって、ノズルぶつけてしまったり…失敗はちょこちょこありますね(泣)ハイオク車にレギュラー入れて、怒られそうになったこともありました。
高級車に乗ってるお客さんに「満タンで」って言われて、ハイオクかレギュラーか聞けなくて困ることも多かったです。
「レギュラーでいいですか?」って聞いたら、「ハイオクに決まってんだろ!」って言われそうですし、「ハイオクでいいですか?」って聞いたら、「レギュラーです…」って言われそうじゃないですか? どっちにしても気まずいですよね(笑)
常連さんだとなおさら聞けなくて…。ほんとうは覚えておけばいいんでしょうけど、空気を読み間違えないようにするのが大変でした(笑)
―バイトで、一番つらかったことはなんですか?
働きはじめの頃は、ガソリンの臭いに慣れていなかったので、頭が痛くなりました。あとはやっぱり、暑さと寒さですね。
一度、冬の時期に街中が停電したことがあったんです。
電気を使用する暖房機器が使えなくなって、周辺に住んでいる方がいっせいに灯油ストーブのための灯油を買いに来ちゃったんです。
4時間ぐらい行列ができて大変でした。なんで今日、シフトに入っちゃったんだろうって思いましたよ(笑)
あとは、田舎なのでカミキリムシが飛んでくることに人知れず悩んでいました(笑)周りが真っ暗なので、どんどん集まってくるんです。
一度、手ではらったんですけど、逆に追いかけられました。それ以来、カミキリムシ恐怖症です。今でもこわいですね(笑)
―バイトの楽しさや、喜びはどこで感じました?
やっぱり、給料です。
バイクに使ったり、洋服を買ったりしました。あとは遊びに使いましたね。たまに新潟市内に行ってお買い物をしたり、友達みんなでバイクに乗ってスーパー銭湯に行ったりしました。
大変だった思い出も多いんですけど、休憩中にカレーを食べている時間は幸せでしたね。近くにお店がないんで出前をとるんですけど、その時のカレーはすごくおいしかったです。
ラーメンを食べながら、お金の大切さを噛みしめました
―今の自分に活きている、アルバイトの経験ってありますか?
まずは、今日のインタビューですよね(笑)
それに、役者はなんでも活かせますよね。接客の雰囲気も役で活かせますしね。
アパレルショップで培ったトーク技術も、インタビューや人前で話す時にも役立っています。
お金の大事さもわかりました。
時給って800円ぐらいですよね? でも、ラーメン一杯も800円するじゃないですか?
夏場1時間外に立って、でっかい声で「オーライ! オーライ!」って言いながら、トラックを誘導して、汗まみれになって働くんですよ。その値段とラーメン一杯の値段が一緒って衝撃でしたね。
ラーメンを食べながら、お金の大切さを噛みしめました。ラーメンって、こんな大変な思いをしなきゃ食べれないんだって…。
人に優しくもなりましたね。
バイトをする前って、店員さんをロボットみたいに感じていたんですよ。ラーメン屋さんなら、水を出して、注文を聞いて、ラーメンを持ってきてくれるのが当たり前みたいに思ってたんです。
水をこぼされたら「おーい!」って言いたくなるし、注文したものが来ないと「ラーメン遅くない?」って言いたくなりますよね。でも、自分が働いてみたらロボットみたいだなんて全く思わなくなりました。
やっぱり働いているのも人間です。自分がされて嫌なことはしないようにしよう。怒鳴らないようにしよう。って、バイトをはじめて3日ぐらいで思いました(笑)最初の3日間は、僕も全く仕事ができなかったんで。
―後輩にも優しくなりました?
後輩にはあまり優しくないです、基本はいじってますから(笑)
でも、人にはできないこともあるって思うと、優しくできますよね。
誰だって、覚えられないことあるよな。レギュラーとハイオク覚えられないよなって(笑)
もちろん、何回も失敗しちゃダメですけど。「まだできないよな」とか「自分の言っていることが感覚的すぎるんだな」って後輩の失敗に寛容になれました。
でも、そもそも今の若手って、基本的に頑張らないやつはいないんですよ。
今は、2.5次元の舞台作品に憧れてこの世界に入ってくる方も増えていますけど、ちゃんとやらないと生き残れないって、みんなわかってるんです。
何本も舞台に出てる先輩も、2、3本しか出たことない役者も、同じステージに立つので、経験のない役者は努力するしかない。
でも、どれだけ努力してもできないことってありますよね。それがわかるようになったので、そういう子を見かけた時は、温かい目で見守るようにしています。
自分がやりたいことが需要になる役者になりたい
―今後、やってみたい役などはありますか?
現実だけど、非現実の要素が混ざっているような、ファンタジーに挑戦したいですね。
死神に死の宣告をされてしまった主人公の役なんていいですよね。死期が迫っているのを知りつつ演じる役って深みがあると思うんです。
例えば、佐藤健さんが主人公と悪魔の両方を演じた『世界から猫が消えたなら』では、脳腫瘍になった主人公のもとに悪魔が現れて「世界から何かひとつものを消すことで、1日の命をあげよう」って言うんです。それを聞いた主人公が、身の回りのものを一つずつ消していく話なんですけど、そういう作品って、通常の感情よりも一回り大きな感情が生まれると思うんです。
今、舞台でキラキラした役をやらせてもらっている分、映像作品ではドロッとした役をやりたいなと思ってます。
―役者としての夢はなんですか?
需要のある役者になりたいです。
理想を言えば、自分のやりたいことが需要になればいいですよね。
なんでもいいんですよ。例えば、僕が今「映画撮りたいな」って言ったら、「じゃあ、高崎翔太を主役に映画を撮ろう!」って需要があればいいですし、僕が「絵を描きたい」って言ったら「じゃあ、高崎翔太の個展を開こう!」って需要があったらうれしいです。
自分がその時にやりたいものを、みなさんに求められながらできるのは一番の理想ですね。
―最後に、アルバイトしている10代20代に一言メッセージをお願いします。
目先の誘惑に流されないでほしいですね。
バイトにはあまり責任がないと思ってる人もいると思うんです。遊ぶために「すみません。今日風邪です」とか平気で嘘ついて休む人っていますよね。僕の仲間にもいたんですけどね…。
でも、それじゃあダメだと思うんです。つらくて辞めたい時もあると思うんですけど、頑張って稼いだお金をほんとうに使うべき大事なタイミングで使う。
そういったことをきちんとやっていれば社会に出た時も、責任感のある大人になれると思います。
高崎翔太(たかさき・しょうた)
1988年9月21日、新潟県生まれ。
2008年『ミュージカル テニスの王子様』でデビュー。約2年に渡り、青学5代目・菊丸英二役として活動。以降、舞台・映画・ドラマなどを中心に活動中。
主な出演作品は『おそ松さん on STAGE ~SIX MEN’S SHOW TIME~』、『あんさんぶるスターズ!オン・ステージ』、ミュージカル『薄桜鬼』シリーズなど。
今後の出演作品は、『あんさんぶるスターズ!エクストラ・ステージ~Judge of Knights~』、映画『サムライせんせい』など。
【公式チャンネル】 http://ch.nicovideo.jp/tokientertainment
【公式twiiter】 @takasaki_shota
撮影:田形千紘 ヘアメイク:佐茂朱美 取材:舟崎泉美