デイサービスで1日仕事体験!介護士の仕事は体育会系の部活に似てる!?【突撃!バイト体験レポート】
こんにちは!ライターのノジーマです。
さまざまなお仕事のバイト体験をさせていただいているこちらの企画ですが、今回は介護施設でいわゆるデイサービスと呼ばれる「通所介護」をおこなう施設・グリーンライフ湘南にて介護士の体験をさせていただくことになりました。
介護のお仕事は今まで一度も携わったことがないので、まったくイメージが湧かずドキドキしていますが、実際はどんなお仕事なのでしょうか。
早速、体験してみたいと思います!
介護士の仕事を体験!
午前8時半。
ユニフォームに着替え終わると、スタッフの皆さんが打ち合わせを行っていました。
どうやらこれから送迎が始まるらしいのですが、この日施設に来るのは誰で、誰が誰を迎えに行くのか、などを綿密に話しているそうです。
この打ち合わせから僕みたいなバイト体験者が参加させてもらうのは珍しかったようで、「どんな人かな?」的な視線をちょいちょい感じました。
送迎に出発!車中でインタビューも敢行!
午前8時50分頃。
打ち合わせが終わり、この日僕の面倒を見てくれることになった素敵な29歳のスタッフ・今野(いまの)さんとご挨拶。
これから今野さんも車で送迎に出かけるとのことなので、同行させてもらうことになりました。
移動中の車中では今野さん自身のことについていろいろ聞いてみました。
今野さんは高校を卒業後、介護の資格を取るため専門学校に通い、そのままずっと介護の仕事を続けているとのこと。
でもどうして介護の仕事をやろうと思ったのでしょうか。そのあたりを詳しく聞いてみました。
今野さん「高校生の頃から介護の仕事をやりたかったわけではないんですよ。野球部だったのもあり、スポーツトレーナーなんていいなぁ、とは漠然と思っていたんですけど」
ノジーマ「それでも介護の資格をとるための専門学校に進学を決めたのはなんでですか?」
今野さん「先生から『なんでもいいから資格は取っておいたほうがいい』とアドバイスされて、いろいろ相談しながら決めました。なので実はどうしてもやりたい仕事だったというわけではないんです」
ノジーマ「資格をとってからはずっと介護の仕事なんですよね。大変じゃないですか?」
今野さん「いや、それが結構楽しいんですよ!もちろん、大変なこともありますけどね。今の仕事はデイサービスの介護なので、比較的元気な方がいらっしゃるんです。お話好きな方も多いので、いろいろな方のいろいろな話を聞けますし、ほんとおもしろいです」
まだデイサービスの仕事がどのようなものなのかサッパリなのですが、今野さんは本当に仕事を楽しんでるんだなあというのは伝わってきました。
体験の中でその楽しさを感じられたらいいなあと思いつつ、車は1人目の家に到着しました。
出てきたのは元気すぎるおじいちゃん!
今野さんと一緒に1人目の送迎をしたのですが、なんと出てきたのはメチャクチャ元気なおじいちゃん(※)でびっくりしました。
ひとりで階段をスイスイと降り、歩きながらすれ違う女性を見て「あの姉ちゃん、カワイイな」などとつぶやいたりしています。
正直、おじいちゃんが車に乗るためのサポートが必要だったり結構苦労するのかと想像していましたが、全然そんなことありませんでした。
その後も合計3人のおじいちゃん・おばあちゃんの送迎をしたのですが、やはりみなさんお元気。
最初にお迎えしたおじいちゃんは英語で曜日を言うのがマイブームらしく、「今日はマンデー」などと得意気に何度も英語を披露したり、車中では友達同士のような会話が繰り広げられ、今野さんもまるでおじいちゃんたちのお孫さんのように見えてきます。
そうこうしているうちに車は施設に戻ってきましたが、とりあえず全員が楽しそうなのが印象的でした。
午前中は身の回りのお世話と談笑時間
施設に戻ると、今野さんはまず預かった荷物を確認し、資料との照らし合わせを始めました。
どうやら一人ひとり服用する薬がしっかり管理されているらしく、忘れ物がないか念入りにチェックするそうです。
もちろん薬を間違えてしまったり、あとになって薬がないことに気づいたりしたら大変です。
でもそれ以上に、当たり前なのかもしれませんが、施設に登録されている全員の細かいデータまでちゃんと管理されていてすごいなあと思いました。
ちなみにこの日施設に来るのは50人近くとのこと。
つまり、それだけたくさんの人たちの細かなデータまで気を配らなければいけないのです。
お茶を配るにしても、水分の量が決められていておかわりができない人とかもいるわけですからね。
一人ひとりのデータを覚える記憶力も必要ですし、薬や病気に関する知識も必要になってきます。
フロアでお出迎え&おもてなし
時刻は午前9時20分頃。
いよいよ本格的に施設でのお仕事がスタートとなりました。
今野さんの車は近場を回ったので早く施設に戻れましたが、これからたくさんのおじいちゃん・おばあちゃんが施設にやってくるとのこと。10時までにはほぼみなさんが到着するそうです。
全員が到着するまでは、フロア全体をチェックしながらお出迎えをするような感じになるそうです。
今野さんに教わりながら、いろいろと一人で挑戦させていただくことになりました。
お茶を配ったりしながら交流を深める
フロア全体を見渡せる位置に立ち、困っている人はいないかをしっかりチェックしながら、お茶を配ったり上着を預かったりしていきます。
これって何かに似てるなぁ…と思っていたんですが、レストランのホールスタッフの仕事にすごく似ていることに気がつきました。
ただ、決定的に違うことがあって、レストランだと困っている人や要望がある人がわかりやすいんですけど、介護施設だと誰が困っているのかさっぱりわからないのです。
お茶のおかわりがほしい人も、上着を脱ぎたい人も、こちらから気づいて話しかけてあげなければいけません。
何かあっても手をあげてくれるわけではないのです。
そこで、大切になってくるのが積極的に会話をすることになります。
今野さんがしている会話に混ざってみましたが、「昨日の草野球は勝ったの?」とか、本当になんでもないような会話を純粋にお互い楽しんでいるんですよね。
確かに、自然な会話ができるような関係になれば、困ったことがあっても話しやすいし、気づいてあげやすくもなるんでしょう。
そんな感じで身の回りのお世話をしながら談笑を楽しんでいたのですが、やはり今野さんや他のスタッフの方々は談笑中でも周囲に気を配り、「よくそこに気づいたな!」っていう感じでテキパキと動いていきます。
かなり鋭い観察力と瞬時の判断力、そして慣れが必要だと思いましたね。
お風呂に入るおばあちゃんをサポート
おじいちゃん・おばあちゃんが全員揃うと、午前中の間に順次お風呂に入ることになります。
どうやらこのお風呂の時間を楽しみにしている方も多いようです。
お風呂の中では専門のスタッフが補助をしてくれるのですが、お風呂場までサポートするのは介護スタッフの仕事となります。
一人でスイスイ歩ける人もいれば、歩くのに不安のある人もいるので、しっかり支えながらお風呂場までサポートします。
転んでしまっては大変ですから、基本的には一人で歩ける人でも一緒にお風呂にいく感じですね。
元気そうに見える人が急にふらついたりすることもあるので、一瞬も気が抜けません。
この気の抜けない感じは、取引先との接待や上司とのやり取りの感じにすごく似てますね。
とっさに気を配らなきゃいけなくて、ずっとそれに備えているあの感覚です。
高校や大学で例えるなら、体育会系の部活で先輩から怒られないように気をつかう感じでしょうか。
そしてお風呂から上がってきた人には丁寧にドライヤーで髪を乾かします。
そのタイミングで寝ちゃうの!? イレギュラーな事態も頻発!
介護施設でのお仕事をしていると、イレギュラーなことも頻繁に起こります。
いや、むしろイレギュラーが起こりすぎて普通のことになっちゃってるのかもしれません。
この日何回かあったのは、突然おじいちゃん・おばあちゃんが寝たいとアピールしてきたことでした。
それがお昼ごはんの直前であっても、催し物の最中でも関係ありません。
眠たくなってしまったら休憩室に連れて行き、ベッドで休ませてあげるのです。
自分で横になれる人なら楽ですが、動きが不自由な人はスタッフがサポートして寝かせてあげなければならないので、これはなかなかの力仕事でした。
ほかにも、トイレを済ませて車椅子に戻りたいというおばあちゃんを戻してあげたりとかしました。
困った人がいるとブザーで呼ばれたりするんですが、これがまた全然気づけないのです。
音にもなかなか気づけないし、どこで鳴っているのかもわからない。
それでもスタッフの皆さんは瞬時に気づいてその方向に飛んで行くのですから、本職との差を痛感しました。
でも「ブザーが鳴るかも」と相当気にかけてないと気づかないですよ、これは。
待ちに待ったお昼ごはん!
そして時刻は12時をまわり、いよいよお待ちかねのお昼ごはんの時間となりました!
午前中に配ったお茶でさえも一人ひとり細かな指定があったくらいですから、当然ごはんはもっと細かく作り分けされています。
せっかくなので比較できるように写真を撮ってみました。
こちらがこの日の通常メニュー。なかなかうまそう!
そしてこちらが固いものを食べられない人用のメニューです。
全然違いますね!
このように一人ひとりメニューが全然違いますし、見た目は一緒でも味つけが薄味になっていたり、ご飯の盛り付け量が細かく指示されていたりもするので、間違えて配膳したら大変なことになってしまいます。
なので、一人ひとりしっかり確認し、慎重に配っていきます。
この手の作業は本当に気が抜けませんね!
午前の勤務が終了!ようやくひとやすみ
こうしてようやく午前中の勤務が終了。
ここではじめて一息をつけた感じなので、ドッと疲れが出てきました。
立ちっぱなしだったので当然肉体的な疲れもあるんですが、なにより終始周りに気を配っていたので気疲れしたという感じですね。
できることが少ない中でこれだけ気疲れしたとなると、スタッフの皆さんの疲労はとんでもないものだと容易に想像できます。
それでも、おじいちゃん・おばあちゃんのお世話をしながら交流を楽しめていたので、仕事がキツいというような感覚はあまりありません。
確かに、今野さんが最初に言っていた「結構楽しい」という意味がなんとなくわかるような気がしてきました。
午後は体操やイベントで体を元気に動かす!
午後1時半。
お昼ごはんの時間が終わり、いよいよ午後の部がスタート!
僕も外で食事を済ませて戻ってくると、おじいちゃん・おばあちゃんが座りながらラジオ体操をしていました。
座りながらで効果あるのかな?まあいいか!
地元幼稚園児との交流イベント
そして午後はさまざまなイベントやクラブ活動が行なわれているそうなのですが、この日は敬老の日近くということもあり、地元の幼稚園児が遊びに来てくれました。
まずはスタッフでお神輿を担いで幼稚園児をお出迎えします!
幼稚園児からの歌や踊りのプレゼントがあったり、すごろくゲームが開催されて、開場は笑顔でいっぱいになっていました。
僕はすごろくゲームにも飛び入りさせてもらったのですが、その中で本気のようかい体操を披露したら子どもたちの心をわしづかみすることに成功!
ついついお仕事の体験中ということを忘れて全力で楽しんでしまいました。
どうやら、こうしたイベントもスタッフの皆さんで企画を立てて、頻繁に開催しているそうです。
時にはスタッフで演劇などをやったりすることもあるんだとか。
考えたり、練習したりするのは苦労しそうですが、それでも毎日違うことをできるのはおもしろそうだなあとも思いました。
そしてバイト体験が終了!
幼稚園児たちとの交流イベントが終わり、その後は引き続きフロアをチェックしながらおじいちゃん・おばあちゃんたちとの会話を楽しんでいると、いよいよバイト体験の時間も終わりが近づいてきました。
その会話の中で、とあるおばあちゃんが言っていた「ここのスタッフはみんな働かされてない。仕事を楽しんでいる」という一言が印象的でした。
すごく納得です。
あと「また遊びに来てよ!若い人少ないんだから!」と寂しそうにしていただいたのも嬉しかったんですが、確かにスタッフはみなさんずっとバタバタと動いていて、人はもっとたくさんいたほうがいいんだろうなあとも思いました。
介護士・今野さんにインタビュー
体験をひと通り終え、最後は今野さんに少しインタビューをさせていただくことにしました。
ノジーマ「今日はありがとうございました!最初に今野さんが言っていた、仕事は大変だけど楽しいっていう意味がなんとなくわかった気がします。常に周囲を気にしていないといけないのはすごいなと思いましたが…。」
今野さん「本当ですか?それなら良かったです!確かにずっと気を張っていなければいけないのは大変ですが、野球部時代にも先輩に対してそんな感じになりますし、慣れているようなところもありますね」
ノジーマ「ああ、確かにそうですね…!僕も野球部だったんですが、テキパキと動いて先輩に気を使う感じとか、年上の人にかわいがってもらう感じとかは似てるところあるかもですね。ランニング終わったあとにはこの先輩にはジュース買わなきゃ!みたいな」
今野さん「そうなんですよ!あと環境的にも、デイサービスだと泊まりの仕事もないし、日曜が定休なので趣味の野球をやったり、メリハリをつけられてるので助かってます。泊まり込みになる施設や定休日がない施設だとかなり大変になると思いますが…」
ノジーマ「今野さんは大変な中にも楽しみがあると言っていましたが、このお仕事のやりがいってどんなところにあると思いますか?」
今野さん「僕が楽しさを感じている部分にすごく近いのですが、楽しんでもらえてるなあとか、役に立てているなあとか、そう感じられる瞬間が多いのがやりがいになりますね。人と接することや、お世話をすることが好きな人なら大変な中にも楽しみややりがいを見つけられると思いますし、挑戦する方が増えたらいいなと思いますね!」
というわけで、介護士のバイト体験が無事に終わりました。
体験してみた感想ですが、肉体的なことよりも、つまりホスピタリティがなにより大切なんだなあと思いましたね。
そして体育会系の部活で、先輩後輩とのやり取りで身につくスキルがすごく役立ちそうだなと感じました。
もちろん部活ではなく仕事という場で、常に気配りをしなければならないのは相当なプレッシャーになります。
それに、接する相手はおじいちゃん・おばあちゃん。
毎日体調や機嫌が変わるでしょうから、その日の状況によって対応する必要があります。
常に正解が出せるわけではないので、それがハマったときの快感はたまらないはずです。
人と接するのが好き、喜ばれるのが好きな人ならなおさらでしょう。
介護士になるには資格が必要ですが、資格がなくてもできるパートやアルバイトもあるかと思いますので、「興味あるけど大変そうだよな…」なんて思っている方は、ぜひ一度チャレンジしてみてください!
※この記事はタウンワークマガジンとガジェット通信で共同制作しました。
取材・文:ノジーマ
■介護男子スタディーズプロジェクト
「介護」は、とてもクリエイティブな仕事です。向き合う相手との関係性は、つねにその時、その場の一回限り。クリエイティブであるがゆえに、「遊び」と「本気」が混じり合う不思議な仕事と言えるかもしれません。「介護男子スタディーズ」はそんな介護の現場で働く男性に焦点を当てたプロジェクト。全国の20の社会福祉法人が介護の仕事の理解を促すために共同で実施しています。
■書籍
写真と論考――書籍『介護男子スタディーズ』
介護男子スタディーズプロジェクト 刊
2,160円(税込み)
写真家・高木康行が切りとる彼らの日常をグラビア写真で紹介。同時に、気鋭の論客が「介護」の現状をひもとき、未来を語ります。介護をわくわくさせる。そんな一冊です。※今回登場の今野さんも紹介されています。