アーティスト/俳優 萩谷慧悟さん&長妻怜央さんインタビュー 「まわりの人とのつながりを大事にしていれば、着実に夢へと近づける」
西部開拓時代に21人を殺した悪童、ビリー・ザ・キッドをモチーフにした舞台「Little Fandango」に出演する萩谷慧悟さんと長妻怜央さん。W主演の作品に挑む心境や稽古の手ごたえを聞いたほか、俳優のみならず、アーティストとしても活動する2人がどんな思いをもって仕事に向き合っているのかを伺いました。
佇まいだけで相手を納得させるようなカッコよさを表現することが今回の課題(萩谷)
――ディスグーニープロデュース作品への出演は、萩谷さんは2019年の「PSY・S」以来、長妻さんは2020年の「DECADANCE」以来となりますね。
萩谷:以前から芝居は好きでしたが、「PSY・S」に出演したことで芝居への情熱を改めて再認識したんです。ディスグーニーの魅力は年齢、性別また、演者だろうが、制作陣だろうが関係ない“仲間感”がありました。飲みに行けばくだらないことで笑い合い、僕たちのような新参者をナチュラルに受け入れてくださったことが心からうれしかった。皆さんとの出会いで人を好きになりましたし、一生大切にしたい関係性だなと思いました。
長妻:僕は「DACADANCE」で「お芝居とはこういうものなんだ」と初めて実感したんです。それ以前も僕なりに考えてはいましたが、セリフを詠みあげる、みたいな感じだったんですね。だけど、「DACADANCE」で僕に足りなかったものやコミュニケーションのとり方を、演出の西田(大輔)さんから丁寧に教えていただいて。大変な現場ではありましたが、思い出すのは楽しかったことばかり。そこからお芝居がより好きになりました。
――素敵な出会いと経験をされたんですね。そして、今回の「Little Fandango」は議員の息子・ヘンリーを萩谷さん、その親友・マクスウェルを長妻さんが演じ、ヘンリーたちが入り込んでしまう西部開拓時代では、同名のヘンリー・マカーティ(萩谷)、ピート(長妻)の2役に挑戦します。
萩谷:僕もナガツ(長妻)もかなり個性的なキャラクターを演じるので、見ていて面白いです。ヘンリー・マカーティは孤高な役柄なのですが、ピートたちが酒場で「ウェーイ!」と盛り上がっているところを、僕も一緒にやりたいなと思いながら見つめていました(笑)。今回の役柄は、空気感などセリフじゃない部分を作り上げることが新たな挑戦で、佇まいだけで相手を納得させるようなカッコよさを表現することが課題ですね。
長妻:萩ちゃんがいてくれて本当にありがたいです。僕と考え方も似ていますし、相談しやすいので。
萩谷:大勢でいる時はそんな素振りを見せないのに、みんなでバーッと演じる場面の稽古の後で、めちゃめちゃ心配そうな顔で僕のところに来たんですよ。相当不安だったんでしょうね(苦笑)。
しっかりと役に徹している萩ちゃんはすごい(長妻)
――それだけ萩谷さんを頼りにしているのだと思います。お互いの芝居についてどのようなことを感じましたか?
萩谷:演じるうえでのポイントについて、西田さんがヒントをくださるのですが、ピートは酒場ですごく愛されているんだろうなって。場を盛り上げるために彼はいろいろなことをやっていて、役的に僕はそれを白い目で見なきゃいけないんですけど、気がついたら温かい目で見ていました(笑)。ピートが放つ明るいオーラがその場に伝染していって、すごく素敵に見えたんです。
長妻:萩ちゃんのマカーティは、その場にいる人たちの一挙手一投足を観察するように見ていて、すごく雰囲気が出ているなと感じました。
萩谷:台本には「ふてくされてそこにいる」としか書かれていなかったのですが、彼はふてくされているのではなく、観察しているんだろうなと考えたんです。
――もしこの配役が逆だったらどうなっていたと思いますか?
萩谷:僕がピートをやったとしてもナガツのようにいろいろやるとは思うのですが、小道具として白馬のお面をドンキで買って、持ってくるという発想はなかったですね(笑)。アプローチは全然違うものになったと思います。
――白馬のお面を買ってきたんですね(笑)。
長妻:本当はお面だけじゃなく、手品で使う花なども持ち込みたかったのですが(笑)、買いに行く時間がありませんでした。僕がマカーティを演じるのなら多分、街のワイワイに参加しちゃうと思います(笑)。だから、役に徹している萩ちゃんはすごいなと思いました。
萩谷:相当ガマンしてるよ(笑)。本当は輪に入りたいんだよ。キャラクターにおける核ってあるじゃないですか。稽古序盤の現段階ではまだその核を見つけることができていないので、本番までにはしっかりと役をつくり上げて、素敵な作品にしたいと思います。
僕たちの仕事は元気を届けることだから、ユーモアや楽しさを一番に考えたい(萩谷)
――お二人が所属する7ORDERとしての活動を初めて3周年を迎えましたが、仕事をするうえで大事にしているのはどのようなことですか?
萩谷:嫌いなものはしたくないということです。もちろん、それをやらなければいけない時もありますが、夢や元気を届ける仕事をしている僕たちが嫌々やっていたら、見てくださる方にも伝わるでしょうし、それは一番やってはいけないことかなって。だから、なるべく自分の好きなものをまわりに置いておけるような努力はします。仕事なので、ある程度の自覚は必要ですが、“対・人”なのでユーモアや楽しさを一番に考えたいです。
長妻:僕の場合は、目の前の仕事にどれだけ時間を費やすかですね。例えば稽古序盤で「これだ」と思って出した芝居が、時間をかけることで違うものに変化していったり、考え方が変わっていったりすることがよくあるんですよ。時間をかけた分、自信をもって届けられるものが完成する。それはお芝居でも音楽活動でも同じです。そして、自分を客観的に見ることにも重要性を感じていて、稽古動画などは繰り返し見て、研究するようにしています。
――いろいろな活動を行う中、心が折れそうになった経験があれば聞かせてください。
萩谷:楽器の演奏でスランプを感じるというか、気持ちに左右されてしまう時間が長く続くことがあって、それが僕にとっての“壁”ですね。直接的な打開策はまだ見つけられていないのですが、不思議なことに日が変わると、フラットな状態に戻れているんです。なので、瞬発的に切り替える能力を身につけたいです。
長妻:先ほど話に出た「DECADANCE」の稽古で、台本が配られた翌日に立ち稽古をやることになっていたのですが、セリフがなかなか覚えられなくて心が折れそうになりました。でも、今年の3月に「アクダマドライブ」という作品に出演した時、時間がまったくなく、現場でセリフを覚えるしかない状況だったにも関わらず、かつての経験が活きたのか、スムーズに立ち稽古へと入ることができたんです。自分でも「成長している」と感じました。
最強キャラになりたい――そんな願望のために僕は頑張っている(長妻)
――多忙な毎日を送っていると思いますが、自分を支えてくれる原動力は何ですか?
萩谷:“好きなこと”ですね。趣味もそう。自分が前向きになれるものがあるから、どんなに忙しくても頑張ることができます。
長妻:僕は“最強になる”という強い願望です。アニメなどに登場する最強キャラに憧れているので、そんな存在になるために頑張っています。
――萩谷さんが現在25歳、長妻さんは24歳になったばかりです。同年代の皆さんへ夢や目標へと近づくために伝えたいメッセージはありますか?
萩谷:あくまで僕の感覚ですが、少し前までは、自分のやりたいことが見つからないという人も多かったと思うのですが、現在の学生さんたちは明確な目標があり、夢を叶える人が僕たちの頃よりも多いのではないかなと感じるんですね。僕の経験をふまえていうならば、何事も上の世代から学ぶことが多いんじゃないかなって。狭い世界で生きていくのではなく、コミュニティを大事にしたほうがいいと伝えたいです。
長妻:僕も萩ちゃんの意見と近いのですが、まわりの人とのつながりを大事にしてほしいです。何かあった時に助けてもらったり、逆に助けてあげたりできる関係は素敵ですし、そんな人間関係があれば、どんな形であれ、夢には着実に近づけると思います。
■Profile
萩谷慧悟(はぎや・けいご)
1996年11月7日、埼玉県生まれ。主な出演作に舞台「『仮面ライダー斬月』-鎧武外伝-」、「PSY・S~PRESENT SECRET YOUNG SHERLOCK~」、「えんとつ町のプペル」、「TXT vol.2『ID』」など。
長妻怜央(ながつま・れお)
1998年6月5日、茨城県生まれ。主な出演作に舞台「SCHOOL STAGE『ここはグリーン・ウッド』」、「『DECADANCE』―太陽の子―」、「DEAR BOYS」、「タンブリング」、「アクダマドライブ」など。「漆黒天‐始の語り‐」(8月5日~21日/東京・サンシャイン劇場、8月31日~9月4日/大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ)に出演する。
◆7ORDER Official Site:https://7orderproject.com/
◆萩谷慧悟 Official Twitter:@hagiya_official
◆萩谷慧悟 Official Instagram:@keigo_hagiya_official
◆長妻怜央 Official Instagram:@leo_minaraiyushya
■作品情報
DisGOONie“Sailing”Vol.11 舞台「Little Fandango」
【東京公演】6月10日(金)~19日(日) EX THEATER ROPPONGI
【大阪公演】7月2日(土)・3日(日) COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール
ニューメキシコ州――かつてはゴールドラッシュに湧きあがり、ならず者たちが活気を作っていたこの街も、今では区画整理され、法の下に秩序が行き届いている。その街で生まれた議員の息子・ヘンリー(萩谷慧悟)は、親友のマクスウェル(長妻怜央)と共に、家の屋根裏で一冊の古ぼけた日記を見つけた。日記を広げながら、少年二人はカウボーイたちの世界に入り込んでしまう。日記は歴史となり、新たな西部劇が幕を開ける。
編集:ぽっくんワールド企画
撮影:草刈雅之
ヘアメイク:白石義人
取材・文:荒垣信子