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2022年06月23日

アーティスト・片岡健太(sumika)インタビュー「たくさんの失敗や、触れたくない過去の出来事――その全てが今に繋がる意味のあるものだったと思える」

片岡健太 sumika インタビュー タウンワークマガジン townwork2013年5月に結成した4人組バンドsumikaのボーカル&ギターとして活躍中の片岡健太さん。6月23日には、自身の半生を綴った初の著書『凡者の合奏』を出版。全編、書き下ろしとなるエッセイを元に、失敗を重ねた過去の受け止め方や、音楽との向き合い方などを伺いました。

 

怪我による劣等感の中で過ごした中学時代。辛い時期を支えたのが音楽だった

片岡健太 sumika インタビュー タウンワークマガジン townwork――著書『凡者の合奏』には、片岡さんの人生の分岐点や、繊細な心の動きが綴られていて読み応えがありました。

ありがとうございます。この書籍を形にすることで、今まで後回しにしていた“過去の振り返り”が出来たことは、僕にとっても大きな気付きになりました。人生を振り返ると、良いことばかりじゃなくて、あまり触れたくない事柄や、黒歴史、失敗がたくさんある。だけど、そのたくさんの失敗こそが、今の自分に繋がっていると思えたんです。

――書籍でも「数え切れないほどの失敗をしてきて、そのすべてに意味があったと確信している」という言葉がありましたね。

はい。そもそも僕にとって音楽を始めた原点が、中学時代に骨折していたという失敗から始まっていますからね(笑)。中学は県内有数の体育学校に行くと決まっていたのに、小学校卒業のタイミングで足を複雑骨折してしまって。みんながスポーツで頑張っているなか、自分は何も出来ずに取り残されていく。劣等感の中で過ごした3年間は辛かったけど、その中で、唯一楽しみとして見つけられたのが音楽でした。

――骨折がなかったら今頃は……。

音楽に没入することもなかったと思います。あの時期は“人生が終わった”と思うほど、しんどかったけど、そのおかげで今がある。他にも「失敗」に関していえば、メンバー各々が過去に人生を賭けた別のバンドを休止・解散してしまった過去があって、全員が1つ目のバンドで成功していたら、今のsumikaはないですからね。

 

「お前この仕事向いてないよ」。その後押しの言葉で音楽の道に進む決心がついた

片岡健太 sumika インタビュー タウンワークマガジン townwork――確かにそうですね。ちなみに、音楽に目覚めてから、すぐにプロを目指したわけではないんですよね?

高校では軽音楽部に入って、卒業後は、音楽(音響)の専門学校に行きました。プロになりたい気持ちはあったけど、そんなに甘い世界ではないと思って躊躇したんです。でも、音響を学ぶために現場実習に行った先で、現場の大先輩に「お前この仕事(音響)向いてないよ」と言われて……。プレイヤーになりたいという僕の思いを見抜いていたんでしょうね。自分でも心のどこかで“それを言われるのを待っていたんだ”と気付いて、その時に音楽でプロの道に進む決心をしました。

――大きな後押しだったんですね。

信頼出来る人の言葉や、後押しに助けてもらうことは多かったと思います。

――後押しという意味では、今はボーカル&ギターを担当されていますが。

学生時代はギター担当でしたね。声変わりの時期で、歌声が上手に出せなかったので“絶対に歌わない”と決めていたのに、当時のバンドメンバーに促されて歌うことになって。あの時は本当に嫌だったんですよ(笑)。

――「下手でも剥き出しの歌がいい」という相手の熱意を受け入れた形でしたね。

まだ自分に何が出来て、何が向いているかも全く分かっていなかったので。今となれば、その言葉に流されて良かったです。

 

声が出なくなった時にメンバーが教えてくれた“自分の本当の武器”

片岡健太 sumika インタビュー タウンワークマガジン townwork――自分の強みや価値を、周囲の人から教えてもらうこともあると。

そうかもしれません。ちなみに、価値という意味では、バンドが軌道に乗り始めた頃に、僕の声が出なくなってバンドの活動が止まってしまった事があるんです。その時は“歌えない自分には価値がない”と思っていたけど、メンバーが「もし音楽がやれなくなったとしても、たとえば本気で農業をやるとか、一緒になにか出来るならそれでいい」と言ってくれて。その時に初めて自分の武器は“メンバーと出会えたことだ”と思いました。これも声が出なくなったという失敗から知れた事柄の1つですし、自分一人では絶対に気付けなかったことですね。

――心強いですね。

だから、気持ち的に整理がつかなかったり、自分の強みが見つけられない時は、身近な仲間や、信頼出来る大人といった第三者の意見を聞くのも1つの大切なプロセスなのかなと思います。

 

たくさんの失敗を重ねてきたからこそ、ファンと同じ立ち位置で語り合える存在でいたい

片岡健太 sumika インタビュー タウンワークマガジン townwork――書籍内では、「天才でも魔法使いでもない普通の人間(凡者)」である片岡さんが、「失敗があったから出会えた人」たちと奏でた居場所がsumikaだと書かれていますね。

メンバーに限らず、どの出会いも、出来事も、奇跡ではなく最初は全部フラットだったと思うんです。例えば、自分が手にお皿を持っていたとして、いきなりそこに最高のカレーや、パスタは出てこない。一緒に過ごす時間の中で少しずつ具材が足されて、美味しい料理になっていく。だから、まだ出会いがないと思う人も、焦る必要はなくて、過度な期待はせず、かといってお皿が割れるかも知れないという悲観もせず、積み上げていくことで、やっと分かることがあるんじゃないかなと。

――一歩ずつですね。

はい。ただ、僕はせっかく積み上げた関係性を、自分で皿ごと割って壊してしまったり、落として相手を傷つけたりもしてきて……。そんなたくさんの失敗をちゃんと書籍に書くことで自分は特別な人間ではなく「普通の人=凡者」だと伝えたかった。これを読んでくれている人や、応援してくれる人にとって「失敗もあるよね、悪気はなかったのにね」と、一緒に語り合える存在、仲間という居場所であれたらいいなといつも思っています。

 

夢は「経験の数」で決まり、人生は「一瞬の勇気」で変わる

片岡健太 sumika インタビュー タウンワークマガジン townwork――では、まだ将来の夢が見つけられていない人にアドバイスをお願いできますか?

経験の分母を増やすことが大事だと思います。最初は堅苦しく考えずに、気になることを遊び感覚でやってみる。たとえば、友だちとお菓子工場の見学に行くとか、卓球をするとか。それが楽しいかどうかは経験した人だけが分かることだと思うので。

それと、一度経験して苦手だと思ったことも、嫌な記憶としての「バツ」はつけないほうがいい。次に触れた時に、また違う感じ方をするかもしれないので、とりあえず自分の中の「体験しましたスタンプ」を作って、頭の片隅に取っておくことをオススメします(笑)。

――続いて、夢を追いかけている人に向けてもメッセージをお願いします!

好きなことを見つけたら、どこかで勇気を持って自分からアウトプットをすること。言わないと伝わらないことも多いし、その一瞬で人生を変えることも出来ると思っています。

――そう思ったキッカケを教えて下さい。

僕の場合は、中学校の卒業間近に行なわれた全校生徒参加の「お別れ会」でした。各クラスから出し物に参加する代表の2組を決める会議の時に、手を挙げて「ライヴをやります」と言った瞬間ですね。当時、僕はクラスから浮いていて、誰も音楽をやっていることさえ知らなかったと思うんですけど、どうしてもその機会を逃したくなかったんです。

――著書では、その時の情景なども細かく綴られていますが、実際には一瞬の出来事なんですよね。

衝動だけでした。きっと、あの時に少しでも何かを考えていたら、怖くて無理だったと思います。クラスの空気感としても、ダンスの上手な女の子たちになりそうな状況で、誰からも後押しされていない自分が手を挙げるのはリスクしかなかったですからね(笑)。でも、手を挙げたからこそ立てたステージは、劣等感の中で過ごした3年間が払拭された瞬間で、あの感動は忘れられないです。

――自信があるから発言したわけではないと。

違いましたね。僕が意を決して「はい!」って手を挙げたり、何かを発言しようとする時は、だいたい下を向いてるんですよ(笑)。手は挙げるけど、周りの視線が怖いから目をつぶって下を向く。見てしまったら、きっと“手を挙げない理由”を考えてしまうので。だから、「どうしてもやりたい」とか、「必要だ」と思えた瞬間は、人の顔色は見ないほうがいい。自分が本当に好きだと思えるものが見つかったら、その思いを大事にしてほしいなと思います。

 

■Profile
片岡健太
(かたおか・けんた)

神奈川県川崎市出身。
荒井智之(Dr./Cho.)、黒田隼之介(Gt./Cho.)、小川貴之(Key./Cho.)と共に構成される4人組バンドsumikaのボーカル&ギター。すべての楽曲の作詞を担当。2013年5月にsumikaと、sumika[camp session]を結成。sumikaは通常のバンド形態、sumika[camp session]はアコースティックバンド形態でライブを行なう。これまで発売した3枚のフルアルバムは、すべてオリコンチャート入り。7月27日には、New Single「Glitter」のリリースが決定している。

◆sumika Official Site:https://www.sumika-official.com
◆sumika Official Instagram:@sumika_inc
◆sumika Official Twitter:@sumika_inc

◆片岡健太 Official Instagram:@kentakataoka
◆片岡健太 Official Twitter:@sumikaken

企画・編集:ぽっくんワールド企画 撮影・河井彩美 取材・文:原 千夏

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