俳優 甲斐翔真さんインタビュー『役者は気が付いたら夢中になっていた』
『仮面ライダーエグゼイド』でブレイクした甲斐翔真さん。実は、芸能界にも芝居にもまったく興味がないままこの世界に足を踏み込んだそう。そんな甲斐さんが、この仕事に夢中になった理由や仕事観、そして最新出演映画の話などを聞いてみました。
ドラマや映画は観るもので、出るなんて考えたこともなかった
――甲斐さんは『仮面ライダーエグゼイド』のパラド役で注目を集めましたが、もともと役者に憧れがあったんですか?
実はまったくなくて、映画やドラマに出演するなんて考えたこともなかったです。ドラマは完全に観る側でしたから。学生時代は小学生1年生から始めたサッカーにずっと夢中で、部活ばかりしていました。だから、高校を卒業してからはなんとなく大学に行って、なんとなく就職するんだろうなと思っていて。
――それがなぜ「出る側」に?
高校1年生のときに原宿でスカウトされたんです。それも人生で2回目の原宿で声をかけられまして(笑)。
――2回目で声をかけられるなんてすごいですね。スカウトされて迷うことなく、この世界に入ろうと思いました?
芸能界は「怖いところ」というイメージが勝手にあって、僕は乗り気ではなかったんです。でも、母親がものすごく前向きで、背中を押される形で事務所に入りました。そうしたら、すぐにオーディションを受けることになりまして。それが『写真甲子園 0.5秒の夏』という映画です。
この映画は全国高校写真部の日本一を決める大会、通称『写真甲子園』をテーマにした映画ですが、僕自身、カメラなんて触ったこともない状態。オーディションに合格できて嬉しいと思っているヒマもなくカメラを渡されて、「クランクインまでにカメラを扱うのに慣れておいて」と監督から言われました。撮影は北海道で1ヵ月間、行われたんですけど、右も左も分からないまま、カメラだけ持って北海道に来た、という感じでした。
――まったく分からない状況で、初めて役者の仕事に挑戦したんですね。
そうです。「役者って具体的に何をするんだろう」というところからのスタートでしたから。でも、1ヵ月間、この作品に携わっているうちに少しずつ理解することができました。
「役を演じる」から「役になる」感覚はこれまで経験したことのない出来事だった
――演じることは甲斐さんにとって楽しいものでしたか?
初めて自分のアイデアが監督に認められたシーンがあったんです。最初は台本を追うだけで必死でしたが、少しずつ自分で考えた動きを入れていくようになっていって。ある時、台本よりも自分の気持ちで動いたシーンがあり、「すごくいい」と監督から言われました。そのとき、自分が何も考えずにただ、ひたすら芝居に夢中になっていたことに気が付いたんです。「役を演じよう」と思っていたのが自然と「役になる」感覚を味わえたというか。もちろん、僕なんてまだまだですが、これまで経験したことのない感覚で、役者の仕事の魅力に触れられた気がしました。
今、「仕事」と言っていますが、まだ役者に関しては「仕事をしている」感覚はあまりありません。サッカーを12年やっていたと言いましたが、サッカーと同じでもっと知りたい、もっと上達したいと思うから夢中になって取り組む。その感覚に近いです。
いつもいる場所から一歩だけ踏み出せば、選択肢が広がってくる
――夢中になるものは、どうすれば見つけられると思いますか?
役者に関しては、見つけてもらった感じですけど、いつもと違う方向に一歩、踏み出してみることだと思います。僕の一歩は普段はあまり行かない原宿に行ったこと。同じ場所にいると、その環境からの景色しか見えないから、選択肢が増えない。でもひとつ殻を破れば新しいものが見えてくるし、選択肢も広がると思います。
殻を破るといえば、僕、学生時代はずっとサッカーをしていたので、高校3年生で部活を引退して卒業までバイトに挑戦したんですよ。
――どんなバイトに挑戦したんですか?
カフェ、カラオケ、コールセンター、親戚の手伝いでペンキ塗り…。興味があるバイトをいろいろ経験してみました。
――業種がバラバラですが選ぶ基準は?
自分が好きなものですね。好きなほうが楽しいですし、続きますから。この中でもカラオケは楽しかったです。もともとカラオケが好きだったし、フロントでインカムつけて仕事をするのも新鮮でしたし。反対にカフェでは注文をとるのがあまり得意ではないなと気が付いたり。一歩、外に出てみたら、これまで知らなかった自分の一面と出会えるのも、楽しいですよね。
■Profile
甲斐翔真(かい・しょうま)
1997年11月14日生まれ、東京都出身。2016年『仮面ライダーエグゼイド』でドラマデビュー。『写真甲子園 0.5秒の夏』が映画デビューとなる。12月9日には出演映画『仮面ライダー平成ジェネレーションズ FINAL ビルド&エグゼイド with レジェンドライダー』の公開が控える。
公式Twitter:@kai_shouma
取材・文:中屋麻依子 撮影:齋藤裕也(t.cube)
※文中の社名・所属等は、取材時または更新時のものです。