Room3: 佐伯大地×荒木宏文 インタビュー5/6 【僕らの休憩室】
ピザを作っていたのが、女子高生だったなんて
荒木:大地は今までどんなアルバイトをしてたの?
佐伯:もうぎりぎりバイトができる高1から色々やってましたね。それこそコンビニ、あとファストフード系とか。
荒木さんも言ってた、バイトをやっていて知れた面白さで言うと…ピザ!バイク乗って宅配する方だったので作ったことはないんですけど、僕の地区のピザ屋は、ピザを女子高生が作ってたんですよ。
荒木:あー、メインは基本女子高生かも…
佐伯:女子高生5人ぐらいが、キャピキャピして作ってたから、それが面白くて。「こんな若い女の子たちが作ってるのをみんな食ベてるんだな」と(笑)。
あとは、有名なチェーン店のステーキハウスでもちょっとやってたんですけど、あそこのキッチンはもう料理人なんですよ、完全に。
最初の面接でホールかキッチンか聞かれた時に、「どっちでもやれるんだったらやります!」みたいなこと言ったら、「いや、キッチンは料理やりてぇ奴がやるから、そんなどっちでもとかいう奴はいらないから」ってめっちゃ怒られて(笑)。
「いや、キッチン志望なんですけど、どうしてもここでバイトしたくって、ホールしかなかったらホールでもいいという気持ちだったんですけど…!」って謝ってやっと、「ほーん。やる気あるんだ」ぐらい!それぐらい、本格的なことを求める。
あとはホントに荒木さんの姿勢の話みたいに、ホールだったらきちんとしたウエイターとしての作法を教わったりとか。逆に焼肉屋だったら、フランクに話して焼いてあげるとか、そういうお客さんの楽しませ方も色々あるっていうことを学べましたね。他に土木もやったし…
荒木:土木!?バイトなの?
佐伯:土木って言っても、機械とかは使わない仕事で。道具を運んだり、交通整理とか。そういうのが日雇いで結構あるんですよ。
荒木:なるほどね。お手伝いみたいな。
佐伯:日雇いで色々やっていた理由は荒木さんと一緒ですよ、急にこの日やりたいなっていう時に便利なんですよね。本当に食えてない時代も長かったので、アルバイトは仕事始めてからもずっと、24歳くらいまでやってました。夜は居酒屋みたいなバーで働いてましたけど、それだけじゃ追いつかない部分がありましたから。
荒木:昼間一日空いてるときは日雇いのやつをやってみたいな感じだね。
自分の存在を必要とされることがやりがい
佐伯:僕そのバーで働いてたときに…ところでこれ、ちょっと話ずれるんですけど、
佐伯:いやもう、時計もいわゆるロレックスのすごいのしてて、日本滞在の10日間中5日ぐらい来てたんですよ。これ、バーって言っても、立ち飲みみたいなカジュアルな庶民のバルなんですけど、僕がベラベラ喋っていたら気に入ってもらえたみたいで、最後帰るときに「多分もう二度と東京には来ないけど、この店いいね」って言ってもらえたんです。それで「この店は安すぎるから」ってその人からチップ10万円渡されて。
荒木:受け取れないじゃんそんなの!
佐伯:欲しかったですけどね、ホントは。「受け取れないです!」って反射的に断っちゃった。店長見てたから(笑)。
荒木:でも10万って石油王にとっては本当にチップだろうね…。
佐伯:向こうにとってはそうでしょうね(笑)。でも当時の僕にとっては相当嬉しいことですよ。
荒木:そういうことも、アルバイトのやりがいの一つだった?
佐伯:どれでもなんですけど、やっぱりお仕事っていうことを通じてね、自分の存在を必要とされるってことが、すごくやりがいになりますよね。そのバーのアルバイトでもそうでしたし。
信頼をされるとか仕事を任されるっていうことを、人生において初めて正式に与えられるのってアルバイトだと思うんですよね。バイトせずに、いきなり社会に出るよりも、アルバイトっていう形を通して責任を学ぶってこともとても大切ですし、若い子は絶対アルバイトやった方がいいと思います。
荒木さんもそうだけど、バイトいっぱい経験してきた人ってわかるんですよ。クセのある店長とか、いろんな大人に付き合ってきてたわけだから「あ、この人やっぱりしっかりしてるな」とか。とにかくそう思って僕はいくつもアルバイトしてましたね。
バイトで、一緒に働く人の表情を見られるようになる
荒木:そういう、バイトでしかできない苦労ってほかにもある?
佐伯:大変だなと思ったのは、教えた人が辞めちゃうことですよね。
僕こう物事をキッパリ言うじゃないですか。誰にでも。お前そこはダメだぞとか、下手だよとかもすぐ言っちゃうし…良くも悪くも言ってしまうんですけど。
高校生の頃に働いていたファミレスでは、ちょっと問題になっている人がいて。僕本当はディナーの時間帯だったんですけど、お昼に入っているおばちゃんたちだとその人に上手く言えないから「ちょっとこの日に入って」って、8つも上の25歳の人の教育を任されたことがあったんですよ。
例えば賞味期限のシールとか食材に貼らなきゃダメなんですけど、その人は「すみません、貼り忘れました」って何回も貼り忘れるんですよ。だから「…もう!」みたいな。あと野菜の切り方とか、冷蔵庫の並べ方も決まりがあるんですけど、おばちゃんが言えないから、僕がなぜか教えるっていう。
荒木:なんで年下に言わせたんだろうね?
佐伯:他の人がハッキリ言えないっていうか、その人はちょっと大柄で男性だったからなんかあったら怖いなって思ってたのかもしれないですね。全然怖くないんですよ?気弱なくらいで、僕から見たら優しく見えるんですけど。
荒木:若い子は何するかわかんないから怖い、みたいな。
佐伯:そうなんですよ。でも僕はもう関係なく「検品に来られたらね、これダメって言われて使えなくなっちゃうから、だからこれは絶対シール貼ってください!」って。で、帰り際には「ちょっと今日怒ったけど辞めないでね!」って(笑)。「もうちょっと頑張ったら絶対楽しくなるから頑張ろう!」って。
荒木:なかなか励ましてる(笑)。
佐伯:そうなんですよ。辞めそうな雰囲気というか、「この人、現実と向き合ってない顔してるな」っていう時があるんですよ。
荒木:そういう表情を見られるからね。人を育てるっていう点でも、確かにいい経験できてるかも。
佐伯:でもね、やっぱり辞めちゃいましたね。僕がそんなに一緒にシフト入れなかったので、いつの間にか辞めてしまったんですよ。
荒木:でもまぁいろんな経験したからね。
佐伯:何の仕事でもありますよね、せっかくちょっと教えてあげたのに辞めちゃった悲しさ。
荒木:色んなことを感じるよね。
佐伯:あんなに僕怒ったのになぁって悲しかったですね。自分のせいかなってのはちょっと思いますしね。でも、逆もしかりですよ。僕も違うバイトですごい怒られて辞めちゃったこともありますし。そのまぁね、いろいろありますよね。
荒木:色々経験したよね。色んな種類のバイトもしたから。
アルバイトなら色んなことにチャレンジできる
荒木:これからバイトしようと思う人にアドバイスは?
佐伯:いやアルバイト絶対した方がいいですよ!アルバイトは絶対にあなたのためになる。お金じゃないものも与えてくれますから。僕もお金欲しいからやっていた面ももちろんありますけど、でもお金ではない何かを必ず見つけられるはず!それに、バイトのいいところは星の数ほど種類があるっていうことですね。だから色んなことにチャレンジできますし、意外とね、本格的なことするバイトもあるじゃないですか。
荒木:あるね。急にそんなん出してくる?みたいな。
佐伯:そうなんですよ。料理もね、「意外とこんなにちゃんと調理するんだ!」とか。しかも「この期間だけだよ!」ということを言いたいですね。やっぱりね、一般的には学生の間の短い期間ですもんね。バイトに打ち込めるのって。
−ここまでのお話を聞いて、荒木さんに質問です。
荒木:人とのコミュニケーションを大切にしながら、それを面白いなーって思いながらアルバイトしてた人だったのかな、って思って。人付き合いをすごく大切にしてるアルバイターだったのかなと感じたので。だから、人脈がある、バイター。
佐伯:…ダジャレ!?
佐伯:寂しがり屋なので、あんまり一人で何かするとかがなくて。だから一人でどっか旅行行くのもいいのかなって。行きます?一人で。
荒木:行きます。
佐伯:行きそうですねぇ(笑)
荒木:行きますねぇ。
−もし一人旅に行くなら、どこに行きたいですか?
佐伯:でも結局アメリカになっちゃうんですよねー。好きなんですよ。
男3人で、ロサンゼルスからニューヨークまで車で横断したことがあるんです。それをやって良かったなと思うことは、ほんとにベタだけど「世界ってこんなに広いんだな」ってことを感じたんですよ、ほんとに!あのー、グランドキャニオン見て、ほんとに…って行ったことあります?
荒木:ない。
佐伯:びっくりするぐらい、めっちゃ広いんですよ。思ってる20倍ぐらい広いんですよ。グランドキャニオンって、かつて海の底だったところが干上がって渓谷になってる場所なんですけど、いざ立ってみると、嘘!?っていうぐらい広いんです。向こう側までが。
荒木:視力良くなりそうだよね。
佐伯:そのグランドキャニオンって国立公園には、車で3時間ぐらいかな、めちゃくちゃ上がっていくんですけど、途中でね「うわグランドキャニオンや~!」っていうところがあるんですよ。そこでみんな「うわすげぇなあ!」「広いな~!」って言ってはしゃいで。でもまだ時間もあるし、もうちょっと行ってみようってそこからあと1時間ぐらい上がっていったら、本物のグランドキャニオンがあって。
最初に俺らが騒いでたのはそのへんの“ただのキャニオン”でした(笑)。僕人生で一番感動したのがグランドキャニオンなんですけど、男3人が感動して涙出ちゃったぐらいめっちゃすごいんです。そういう自然もあれば、ラスベガスみたいな欲望の街もあるし、ニューヨークまで行ったらマイナス2度とかで、ブリザード来て、雪、雪でもう大変だったりとか。すごいなぁって思って。
荒木:だよねぇ。広い土地だとそうだよね。
佐伯:日本だと3時間ドライブすると結構進んだ感じありますよね。例えば東京から3時間あれば福島ぐらいは行けちゃうじゃないですか。そうすると地図上で見ると結構進んでるんですよ。でもアメリカで8時間ブッ通しで運転して「これは相当進んだでしょ」って地図見たら全然進んでないんですよ、2センチくらいなの!
これ今は笑って話してますけど、ほんとに苦しかったんだから!(笑)僕ら1か月半ぐらいしか猶予がなくて。最初ゆっくりはしゃいじゃってたから全然進めてなくて。ヒューストンとかNASAのあたりも見たかったんだけど全部飛ばそうってなって…。でも、その長さだけでも日本縦断3回分?ぐらいあるんですよ。
もう必死に運転したし、もうブッ続けで気持ち良く寝れるかな、もう相当来た、もうゴールじゃない?ってぐらいのテンションで運転終わって地図見たら、まだ全然進んでなくて「まーじか!」ってなってた(笑)。
荒木:1回の横断で車1台潰れそうだね。
佐伯:ホントに何もない道を進むんですよ!ホントに引くぐらい!こんなに何もないの!?って。…「こんなに」ばっかり言ってますけど、とにかくアメリカのスケールのデカさみたいなところが好きなんです。最近テレビで放送していた、アメリカかぶれ芸人。僕、完全にそれですね(笑)。
アルバイトは絶対した方がいいと語る佐伯さん。教えた人が辞めてしまう悲しさも、自分が必要とされるやりがいも、様々な経験をされたからこその説得力のあるお話でしたね。さて、次回はいよいよ最終回。お二人が目指す未来についての対談です。どうぞお見逃しなく!
佐伯 大地 Daichi Saeki
映画やテレビドラマ、舞台など幅広いフィールドで活躍中。主な出演作は、ミュージカル『刀剣乱舞』、舞台『ALL OUT!! THE STAGE』、映画『少女椿』、テレビ『街活ABC』(NTV系毎週木曜21:54~放送)、SMART USEN“俳優日和”「佐伯大地のわりと元気の出るラジオ!」(毎週金曜正午更新)など。今後の出演作として7月16日より放送予定のテレビドラマ『愛してたって、秘密はある。』(NTV系)井上大吾役、10月7日より公開予定の映画『アヤメくんののんびり肉食日誌』鈴木仁英役などがある。
【佐伯大地OFFICIAL SITE】https://saeki-daichi.com
【公式twiiter】@AND_swgD
荒木 宏文 Hirofumi Araki
俳優として活躍する一方でミュージシャンとしても活動中。主な出演作は、映画『20世紀少年-第2章-最後の希望』、ミュージカル『黒執事~地に燃えるリコリス~』、EX『獣拳戦隊ゲキレンジャー』など。今後の出演作として8月には舞台『幽劇』、9月からはOFFICE SHIKA PRODUCE VOL.M『不届者』への出演が控えている。
【荒木宏文OFFICIAL SITE】http://www.watanabepro.co.jp/mypage/10000022/
【公式ブログ】https://ameblo.jp/hirofumi-araki-we/
撮影:田形千紘 ヘアメイク:佐茂朱美 取材:恩田貴行、寺本涼馬